第22話 俺、安定のトレンド1位
メタル系のモンスターというのはとにかくすばしっこい。
が、正直いうと
「では、
<がんばれ〜!>
<期待!>
<楽しみ!>
視聴者のコメントに俺のやる気はグイグイ上がっていく。
そして鋭い爪と牙を持ち、その素早さと硬さを武器にするSS級のモンスターだ。
対峙した瞬間、やつは俺に斬撃を繰り広げつつ逃げの体制に入る。
飛んでくる爪斬撃を避けながらすばしっこく走り回るやつに俺は狙いを定める。
メタル系の急所はどれもこれも「脳天」だというのは周知の事実。というか脳天をぶち壊さない限りメタル系は倒すことができない。
急所に当てられないと持久戦になって冒険者は絶対に敵わない。
俺が弓を弾き絞り、狙いを定めるとやつは殺気を感じたのか身を翻す。俺はそれでも後頭部に向かって矢を放った。
俺が放った矢は
「キュイイイイイン」
と機械音のような鳴き声をあげ、大きくのけ反るとどさっとやつは倒れた。急所を狙撃されないように後ろを向いたんだろうが無駄だ。
俺の弓はメタル系も貫通するし。貫通すれば入射口は脳天だろうが後頭部だろうがケツだろうが一緒だ。
「無事、
<うぉぉぉぉぉぉぉぉ!>
<これはやばい>
<こんな倒し方するやつ初めて見た>
<メタル貫通芸w>
<死ぬw>
<みさきさんが5万円を投げ銭しました>
<ゆきなんさんが5万円を投げ銭しました>
コメント共に舞い散る投げ銭。それも読みきれないほどに……。
「みんな、投げ銭ありがとうございます! このままこの燻煙機をつかって透明蜂蜜を採取します」
と言っても俺の蜂蜜採取にはみんな興味はなさそうだったのでサクッと終わらせて、
これが一端の冒険者ってもんだ。
「みんな、ほんとうにありがとう。では、次の配信か動画で!」
シバと一緒に手を振ってから配信を切ると俺はどっと疲れて座り込んだ。
「英介、疲れた?」
「うーん、ちょっと集中し過ぎたかも」
というか完全に怠けすぎである。会社にいってピリッとしていた時間が今は座って動画編集をしたりごろごろしたりだもんなぁ。もうちょっと頑張らないと。
「英介疲れたなら乗れ」
「サンキュー」
俺はもふもふのシバの背中にまたがり、うつ伏せになって抱きつくようにして寝転がる。あぁ、ワンコのいい匂いだ。
***
キャンプ地に戻って、俺は焼きとうもろこしとビールで一杯やりながらスマホを眺める。
シバは座ってトウモロコシをガリガリしている。
ツエッタートレンド
1位 岡本英介
2位 ワンパン
3位 本体かわいい
4位 岡本くん
5位
トップ5は俺関連になっていた。結構話題になっているみたいだ。ちなみに投げ銭もこの配信だけで50万円以上……。たった1時間で軽く前の月収を超えてしまった!
配信者万歳……。
「まーたニヤニヤして、いいことあったか?」
「まぁな」
「そうだ、音奏は?」
「今日はソロキャンプって言ったろ?」
「でも、心配するぞ? オレ、音奏好きだし」
シバにそういう言われると俺の中に少し罪悪感が湧いて、なんだか連絡をとった方が良い気がしてきた。
「そう、だな」
俺はスマホのメッセージ通話アプリを開くと音奏に通話をかけた。
「もしもし」
「あっ、岡本くん。ひどいじゃんひどいじゃん、抜け駆けするなんてさっ」
「ごめんって、ちょっと1人でゆっくりしたくってさ」
「うん、なら言ってくれればいいのに」
「お前ついてくるだろ」
「そりゃ、一緒にいたいけど、岡本くんが1人がいいっていうなら我慢するよ? 何も言わずに連絡が取れなくなるほうが嫌だな」
「すまんって」
「いつごろ戻ってくるの?」
「今日の夕方かな」
「じゃあ、合わせて行ってもいい?」
「だから、たまには」
——ツーッ、ツーッ……
自分勝手なギャルめ。
「英介、ニヤニヤだな」
「んなっ、ちがっ」
シバがふんっと鼻を鳴らすと俺にケツを向けて丸くなった。
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