第5章 俺、迷惑系に凸られる
第21話 俺、久々のソロキャンプ
「最近、毎日来るんだよな……」
俺は満腹でご機嫌なシバの背中を撫でながらちょっとした悩みを吐露した。
というのも、ほとんど毎日音奏がやってくるのだ。まぁ、別に若くて可愛い女の子が部屋に来るなんて幸せなことだが……なんというかありがたみがすり減ったきたような。
「手、出さないからだろ?」
シバ様の言う通りである。
「いや、出したところでよ。なんというか、俺って結婚とかそういうの向いてないような気がするんだよなぁ」
なんというか、くっつかれすぎると離れたくなるというかなんというか。確かに彼女は可愛いし俺なんかにはもったいないくらい上等な子だ。年も20歳、世の中の男のほとんどが好きだろう。
「シバ、キャンプ行くか」
「おっ、音奏は?」
「今回は俺1人だ。そうだなぁ、最高のハチミツでも採りに行くか?」
シバは立ち上がるとプルプルと尻尾を振った。
「オレ、それ好き」
「よし、決まりだな」
早朝7時。まだ音奏はすやすや眠っているであろう時間に俺は車に乗り込んだ。
***
群馬県嬬恋村にあるダンジョンに俺たちが辿り着いたのはお昼を過ぎた頃だった。名産のトウモロコシを犬用に茹でてもらい、車の中でシバが食っている。俺もキャンプ中に食べるために何本か購入したっけ。
「さて、今回のキャンプ地は中層にしますか」
俺はいつも通りダンジョンに入ると、さっさとキャンプできそうな平面を探してテントを設営する。
「よし、1人の時間を楽しむぞ!」
俺はテントの中で読書をしたり、コーヒーを飲んだり思う存分デジタルデトックスをする。
バズって、配信者を始めてからこういう時間ってなかなかとらなかったもんな。やっぱり、ソロキャンはいい。
今回のお目当ては「透明蜂のハチミツ」である。読んで字のごとく、透明化できる特殊な蜂(モンスター)が集めたハチミツで、このダンジョンに生えている特殊な花の蜜から作られている。
まぁ、これが死ぬほどうまい。
「そんでもって、そのハチミツを狙っているのは俺だけじゃないと」
このダンジョンはSS級。ハチミツがあるフロアには「
この
体力は少ないが素早く凶暴で非常に倒しにくいモンスターだ。
——まぁ、防御力を上回る攻撃力とスピードがあれば問題はないんだがな。
「シバ〜、配信始めるぞ」
「おうよ」
俺は賠償金で買った透明飛行型カメラを起動する。
「どうも、岡本英介です」
俺は少しずつなれてきた挨拶をしつつシバを抱き上げて絵面が持つように努力した。シバは舌をだし犬版の笑顔でカメラにサービス。
<収益化おめでとうございます! まるこさんが1万円の投げ銭をしました>
<がんば! ほめさんが520円の投げ銭をしました>
<おっ、どこのダンジョンだ?>
<いいね、本体かわいいな>
<ワンパン待ってます!>
「えっと、投げ銭ありがとうございます。まるこさん、ほめさん」
そうそう、こうやって名前を読んでみると……。
俺の予想通り投げ銭がじゃんじゃんと入ってくる。
やばい……もう数万円超えたんじゃないか? 会社員の何日か分を数秒で稼げるなんて……やっぱ配信者ってすげ〜!
「今日は
<メタル系キタ〜〜!>
<ハチミツ目当てなの最高>
<ホットミルク作ってください>
<いいな>
<殺戮目的じゃないのほんと平和ですこ>
<まさか蜂と熊だらけのダンジョンでキャンプしてるの……か?>
<岡本くん強過ぎてモンスター寄ってこないから大丈夫>
<生態系の頂点で草 ウェイさんが520円の投げ銭をしました>
<がんばえ! nekonekoさんが650円の投げ銭をしました>
<コラボお願いします! ケント配信垢が110円の投げ銭をしました>
<ケント消えろ>
<うっざ>
反応も上々だな。
ケント配信垢ってなんだ? まぁ、いいか。
「では、最深部に潜っていきたいと思います!」
久々のソロキャンプ! 収益化初の配信! しかもみんな大好きメタル系! これで俺も一人前の配信者だな。
俺はチラッとスマホを見た。
音奏から着信があったがそっと閉じる。
(悪いな、今日は1人でいたい気分なんだ)
俺は久々のソロキャンプを満喫しようとスマホをポッケに押し込むと大きくなったシバにまたがった。
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