33話 着実に

ひとまず、やりたいことリストは溜まった。


そうなると、あとは順番と材料集めだ。


話し合いが終わったというガルフさんと合流する。


まず最初に、レナちゃんを労う。


「レナちゃん、色々とありがとね」


「いえ、私にできることはこれくらいですので。ほとんど、マイルさんがやってくれましたし」


「いえ、私も助けられました。さすがは財務大臣の娘さんです」


「ほら、マイルさんだって言ってるし、そんなことないよ。それにいてくれるだけで、みんなが笑顔になるし」


「えへへ……ありがとうございますの」


いやぁー、可愛い。

俺は末っ子だから、こういう弟か妹が欲しかったなー。

……兄さんや姉さんは、俺に対してどういう気持ちなんだろう?

そもそも、関わってこなかったからわからない。


「随分と私と対応が違うわね」


「はい? そんなの当たり前じゃん。レナちゃんだよ?」


「むぅ……私だって頭なでなでされたい」


「なんて言った?」


「う、うるさいわね!」


……相変わらず理不尽である。

幼馴染とは、みなこういうものなのだろうか?

前世も含めて、アスナ以外にいないからわかんないや。


「あぁー、話してるところ悪いが……」


「ああ、すみませんでした。それで、どうなりましたか?」


「ひとまず、金の心配はせんでいい。どうやら、お主が素晴らしいものを用意してくれたからのう」


「ああ、氷魔法が入った魔石ですね」


森で手に入った三体には、俺の氷魔法を最大限込めておいた。

あれなら、あちらに渡す土産物として上等だろう。


「うむ、アレを見せれば兄……国王や重鎮も納得するであろう。わしらのも他にも、何人か応援が来るはずじゃ。さて、早速だが仕事を始めるとしよう。まずは、最優先はなんじゃ?」


「やっぱり、お風呂かな。暑いから汗をかくし、男女別のお風呂とかあると良いね」


「わかった。それくらいなら持ってきた鉱石を使えば問題ない。しかし、それで鉱石は使い切ってしまうぞ? それとも、木の風呂にするかのう?」


そこは迷いところだ。

どっちも捨てがたいけど……なんか、木の風呂って憧れがあるよね。


「うーん、個人的には木の風呂がいいんですけど……それだと、すぐにダメになります?」


「いや、物によってはそんなことはない。この近くに森はあるか?」


「ええ、例の魔石もそこで手に入れました。奥に行くと、中堅クラスの魔物がいるので」


「ふむ、ならば一度見る必要があるな」


「木なら必要かと思って、獣人の人達に頼んでますけど……風通しのいい家も作って欲しかったので」


「では、早速行くぞ! それをしないとビール作りもできん!」


「わわっ!? 引っ張らないでぇぇ〜!」


この小さい体のどこにそんな力があるのか、俺を引っ張って外に出ていく。

クオンだけが後を追ってきて、三人でタイガさんのところに向かう。


「タイガさん、こんにちは。こちら、改めてましてガルフさんです」


「タイガだ、よろしく頼む」


「虎の獣人か! こいつは心強い! ガルフという、よろしく頼むわい」


気があったのか、二人が自然と握手を交わした。

ドワーフの国には獣人はいないって話だけど、とりあえず一安心だ。

そのまま、近くにある建物に入っていく。

そこには伐採された木々が横たわっている。


「ふむふむ……ほほう、こいつは悪くない。水に強く腐りにくい木だわい。これなら、風呂を作っても問題あるまい。うちが船に使ってる物と一緒だしな」


「おおっ! ではお風呂が! あとプールとかも!」


「お風呂はわかるがプール? 」


「あっ、説明してなかったですね」


簡単にプールの説明をする。

俺が欲しいのは普通のプールと、流れるプールだ。

幸い海に近いので、泳ぐということはわかってくれた。


「人工的な海を作るということか……面白い。わしらには浮かばない発想じゃな。それもこの木で十分だろう。この木はクッション性も高いからのう」


「おおぉー! やったぁ! では、その二つをお願いできます?」


「うむ、任せろ。その代わり……」


「ぐへへ、わかってますぜ、旦那。氷はあっしに任せてください……これで念願のお風呂とプールが手に入る」


「ククク、わかっておるな……これで念願のラガービールが手に入るというわけじゃ」


俺達が悪い顔をしながらヒソヒソ話していると、クオンにため息をつかれた。


「全く、何をやってるのですか……」


「悪代官ごっこだよ」


「人族はよくやるんじゃろ?」


「なんという偏見……!」


「ほら、主人殿のせいで変な印象を与えてしまうでないですか。主人殿は、人族の代表なのですから」


……そうだった。

ドワーフは人族との関わりを極力もたない。

俺の迂闊な行動が、人族全体として見られるってことか。


「クオン、ごめんなさい。ガルフさんもすみません」


「いや、気にせんで良い。何より、今のやりとりだけでわかる……お主が良き人族だということが。種族関係なく接してくれるということか」


「はい? 俺、何かしました?」


「ふんっ、相変わらず自覚なしか」


「ふふ、それが主人殿の良いところですね」


「なるほどのう。正直言ってラガー以外は期待しておらんかったが……こいつは楽しくなりそうだわい」


何故か、三人から暖かい目で見られてる。


……よくわからないけど、上手くいったならいっか。

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