31話 ドワーフとの話し合い

その後、ドワーフ達を連れて館に向かう。


ついでに、話を聞くことにする。


ちなみに、敬語はやめてくれと言われたのでお互いにやめることになった。


俺自身も堅苦しいのは嫌いなので、もしかしたらドワーフ族とは気があうかもしれない。


「えっと、君達はどうしてこんなに早く? さっき、俺のところに手紙が来たばかりなんだけど……」


「がははっ! 手紙が届いたと同時に行動を起こしたわい! そして手紙を送った後、すぐに国を出てきた!」


……手紙の意味とは? いらなくない?

いや、それくらい待ちきれないってことか。

今は笑ってるけど……俺、期待に応えないと酷い目に合うね。


「なるほど、そういうことですか。ただ、びっくりするので今後は勘弁してくださいね」


「それについてはすまん。今後か……それはお主次第じゃな。しかし、こちらも大変だったんじゃぞ? いきたいメンバーで揉めに揉め、乱闘騒ぎじゃわい。その中でも鍛治の腕が高いものを連れてきた。何やら、作りたいものがあるのだろ?」


「そんなにですか!? 確かドワーフは鍛治の旨さで序列が聞いた事があるけど……」


「うむ、今回は若手だが選りすぐりの者を揃えた。それくらい我らにとっては悲願ということじゃ……さて」


「まあ、詳しい話は館についてからにしましょう」


その鋭い目つきに怯えつつ、館に到着する。

そして人数が多いので、マイルさんに一階の会議室に案内される。

ちなみに、使うのは初めてだ。

そこは長いテーブルがあり、その奥には黒板が置いてあった。

ひとまず皆が椅子に座り、黒板の前にマイルだけが立つ。


「で、では、私が司会を務めさせていただきます。領主補佐官のマイルと申します。失礼ですが、お話は代表者であるクレス殿下とガルフ殿で進めていただきます。意見がある方は、挙手をお願いいたします」


「うむ、それでも良い。基本的にワシ以外は黙っておる。人族にはドワーフの判別はつかんだろうしな」


「確かに、みんな同じに見えるね。年齢とかもわからないや。まずは、相互理解をしたほうがいいかな? 俺はクレス-シュバルツ、年齢は十五歳になるかな。 一応、第二王子だけど気にしなくていいから」


「そうじゃな。我々は人族を知っておるが、人族はすぐに忘れおる。ドワーフは三十歳を超えると、大体六十歳くらいまでは見た目が変わらん。そこからゆっくり老いていき、百二十歳前後で土に帰る。ちなみにワシは三十歳で、ほかの奴らも似たようなものだ。 一応、王弟になるが気にせんでいい」


「ふんふん、そうなんだ。寿命は人族より長いと……女性とかも?」


「おなごは寿命以外は男共とは似ておらず、細っこくて身長もさらに小さい。容姿は人族に近いかもしれんな」


人族や獣人は六十歳前後が寿命ってことは、ドワーフ族は倍くらい長生きって事か。

つまり彼の見た目はともかく、人の寿命でいうと年齢は俺と変わらないと。


「大体わかったかな。それじゃ、本題に入りますか」


「おおっ! 氷魔法じゃな! まさか、わしらの代で使い手が現れるとは! ……コホン、いかんいかん。さて……お主が使えるのは、さっき見たからわかる。あとは、ラガーについてじゃな」


「はは……そうだね。一応、俺も古書を調べて知ってるけど温度が低くないとダメなんだよね? エールはそうでもないけど。確かラガービールは下面発酵という製法で造られるすっきりした味わいのビールで、下面発酵ビールとも呼ばれるとか」


「ほほう、人族なのに博識じゃな。下面発酵は、低温下で時間をかけてゆっくりと発酵させる製法で、熟成を促すために一週間ほどの貯蔵期間を設けるらしい」


「そうですね。確かエールとかは熟成が早く、三日くらいらしいけど。気温も二十から二十五度なので、この大陸では作りやすいですよね。ただ、ラガーはゼロ度から七度……まあ、この今の大陸では作れないわけです」


「そこまでわかっておるなら話は早い。故に、お主の氷魔法が必要じゃ。そのための設備はわしらに任せるがいい」


「そうですね。そのために、俺の氷を使ってもいいですよ……無論、俺の頼みを聞いてくれることが条件ですが」


「ここにきて氷魔法を確認した時点で、わしらの心は決まってる。お主の要求であるドワーフ数名の移住と、物の作成を引き受けよう」


「っ〜!! ありがとう!」


プールが! クーラーが! ふぅー! これで寝苦しさから解放される!


「礼を言うのはこちらの方じゃ。ドワーフ族の悲願であるラガー制作を叶えてくれるのだから。氷さえ用意してくれれば、後はわしらが作ろう。その生産方法と使用する権利だが……」


「そういうのは俺はよくわからないので。マイルさん、後はお願いしてもいい?」


「はいっ! 後はお任せください! いやぁー! クレス殿下は博識ですな! 私などはさっぱりわかりませんでしたよ」


「はは……それはどうも」


そりゃ、そうだろう。


実際には古書なんて見てないし、前世の記憶頼りだし。


なので詳しい製法がわかってるドワーフ族がいて良かった。


これで、俺の快適スローライフに一歩近づくね!







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