そうだ、テロ組織潰そう
逃げたやつどこに行ったんだ?目的を探すのにはこのスキルが役に立つ
探知スキル。これは周りにどんな人やものがあるのか分かる
使う人によって範囲が限られる。鍛錬すれば街1つは探知出来るようになる
1年の修行のおかげで街よりも遥かに広い範囲を探知出来る
「結構遠いな。逃げが上手い」
探知すると敵はルースを抜け北上していた
敵の向かっている先が本部か。ルースのずっと北にあるんだな
「
「うお!!お前、さっきの!!どうしてここに!?」
「邪魔して悪いね。先にはいかせない」
「なら殺すまでだ!」
俺が
めちゃくちゃ驚いてる顔してる。目の前に人が現れるなんて想像も出来ないだろう
こいつを本部に行かせるわけにはいかない。ここで捕まえる
ここは辺りが木々で覆われていて火魔法の加減さえ気をつければ思いっきり戦えそうだ
さっきみたいに瀕死にはしない。絶対、いや多分
「
男が右腕を前に出し魔法を唱えるとパチパチと小さな破裂音を立てて火の粉が広がってモゼを襲う
火の範囲攻撃。木を燃やす気か、こいつ
一日で2回も火事に遭うのはごめんだ
「
モゼが魔法を唱えると右腕から水玉が現れ、火の粉とぶつかり火の粉と共に消えていく
こいつら火魔法しか使わないな。その分、火魔法の練度は高い
そう考えていいだろう
「
「いない……?」
「よそ見してんじゃねぇよ!
男が魔法を唱えるとモゼのいる地面からゴーという音を立てて火柱がたった
モゼは火柱を避け、反撃しようと男の方を見たがそこには誰もいなかった
男はモゼが視線をずらした間に急接近し炎を纏った腕で殴りかかろうとしていた
「バレバレだよ。
「何!?うおぁぁ!!!」
モゼは男の拳が当たるよりも早く男の胴に向け魔法を唱えた
魔法を唱えた瞬間突風が男を襲った。男は風に運ばれ木にぶつかり、衝撃が大きかったのか膝をついたままだった
「近づきたそうな表情してたもんね。それじゃ気づかれるよ」
「ウッ……!クソっ……!!」
「大人しく投降したら?立てないんでしょ?」
「黙れ!まだだ。まだ負けたわけじゃない」
「はぁ……めんどくさ」
モゼは男の返答を聞き面倒くさそうな表情を浮かべ頭をポリポリとかいた
大人しくしとけよ。面倒くさいな
時間の無駄だろうがよ
「分かった。その気なら容赦しない……!!」
「……!!う、うるせぇ!!」
モゼが威圧感のある視線を向けると男はひるんで冷や汗を流した
殺さない程度に。心に刻んでおこう
「
「うわぁぁぁ!!!」
モゼが魔法を唱えると右手から水で形づくられた龍が現れ、男を丸呑みにした
男は迫りくる龍に絶叫するしかなかった
「このままギルドに行こうか」
モゼは龍の背中に乗り目的地を指定した
龍は目的地を聞くとそのまま浮上しルースにあるギルドへ向かって行った
ああ、風が心地よい。空は日が落ちて真っ暗だけど星が輝いている
体にあたるそよ風も昼間より涼しく感じる
こういう日を作るのもありだな。考えておこう
――――――
「ハァ……重い、でもすぐそこ……モゼさんは大丈夫でしょうか?」
パレードが赤いフードを被った男を背中に担ぎギルドへ向かっていた
パレードの視線の先にはギルドがあり、まぁまぁの距離を男性一人を担いできた
相当な力の持ち主だ
「パレード!」
「モゼさん!無事良かったです!それにその龍は?」
「これは魔法だよ。実在するものじゃない」
「大変だったでしょ。ギルドすぐそこだけど持つよ」
モゼはそう言うとパレードが担いでいた男を背中に担いだ
同時に指を鳴らした。音を聞いた龍が口から先程の男を吐き出す
「この人って……」
「逃げたやつ。多分死んでない……はず」
「多分って……」
「死んじゃってるかもしれない。移動してる間、水の中だったから」
男はギルドから遠く離れた道で龍に飲みこまれ、ギルドに到着する間水中で保管されていた
長い間水中にいたせいで男はぐったりしており、呼吸をしているのかすら怪しい
蘇生魔法があるけど魔力の消費が激しいからあんまり使いたくないんだよな
回復魔法で何とかならないかな
「
「…………」
「ビクともしてないですよ」
「
「……」
「ダメみたいですね」
モゼが2回、回復魔法を唱えるが男はぐったりしたままだ
これは蘇生魔法を使うしかないな。でも、人が集まり過ぎてる
蘇生魔法を一般人が使うのは世界中で禁止されている
人を殺めてしまっても蘇生魔法を使えば、犯罪がなかったことになるからだ
医療でしか使えないことになっている
だが、今の世界で蘇生魔法が使えるのはごくわずか。蘇生魔法はとても高度な技術が必要かつポテンシャルも必要になるため使えるものがほとんどいない
だから禁止にはなっているものの、使い物になっていない禁止令の1つであると書物で読んだ
「おい……なんだあの龍?」
「龍なんて見たことないわ」
「あそこで寝てる人何してんだ?」
「もしかして死んでるのか?」
夜だというのにギャラリーが大勢集まってしまっている
この状況で蘇生魔法を使うのは目撃者が多すぎる
龍消すの忘れてた……龍の集客能力がこんな高いのは知らなかった
「早くギルドに入ろう」
「二人も大丈夫ですか?」
「大丈夫。すぐそこだから」
モゼは右腕にぐったりした男を抱えギルドに向けて歩き出した
15の青年が背中と右腕に大人の男性を抱えて歩いている様はギャラリーを驚愕させた
ギャラリーはモゼとパレードを囲うように集まっていたが二人が迫ってくると道を開けた
「なんか騒ぎになってるな」
「ファルマンさん!」
「ん?モゼとパレードか。それに……その男たちは!?お前らがやったのか」
「話は中で!」
「分かった!入れ!」
二人がギルドの入り口まで来るとガヤガヤしている外の様子を確かめにファルマンが出てきた
ファルマンはモゼの抱える男のフードに刻まれている奇妙な紋章を見ると表情を変えた
ファルマンさんはこの二人の男を知ってるのか。それに奇妙な紋章を見てから表情が変わった
この紋章にどんな意味があるんだ?
――――――
「まず、こいつを蘇生していいですか?」
「お前、蘇生魔法なんて使えるのか?」
「少し噛んでます。完全復活は無理ですけど、息を取り戻すくらいなら。
ファルマンさんの部屋に入り、男二人をソファーに寝かせる
ぐったりしている男の近くに行き、手を男の心臓辺りに置く
モゼが手に魔力を集中させると、手の先に魔法陣が構築されキュイーンと甲高い音を発生させる
甲高い音が発生した後、優しい光が男に流れ込んでいき男が息をし始める
ファルマンは口を半開きにしたまま目の前で起こったことを見ていた
パレードも驚いていたものの、見慣れた表情で見ていた
「これは……!」
「ここで見たことは胸にしまっておいてくれませんか?公になると僕の居場所無くなっちゃうので」
「お、おう……」
「この男たちについて教えて下さい」
ファルマンは蘇生魔法を使っても平然としているモゼに懐疑的な視線を向ける
内心、動揺しながらも椅子に座り口を開き始める
「こいつらのフードに刻まれている紋章だが、これはルベウス旅団の紋章だ。ルベウス旅団の構成員はこの紋章ふが刻まれたフードを身に纏っている」
「じゃあこいつらはルベウス旅団の人間ってことですか?」
「ああ。こいつらは何をしようとしていたんだ?」
ファルマンさんにこの男たちが街でやろうとしていた事を事細かに話した
ルベウス旅団も街に火をつけようなんてとんでもないことを考える
「何だと!?チッ……ふざけやがって‼」
ファルマンはモゼの言葉を聞き腕をワナワナと震わせ、机に思いっきり拳を叩きつける
ドン!という衝撃音が空気を震わせる
「本部に作戦の失敗が伝わればどんなことをやってくるか分かりません」
「だが、本部へ乗り込む日をずらすことは容易に出来ることじゃない。軍や他のギルドも関わっていることだ。1つでも狂えば全てが狂う」
「なら、僕がやってきます」
「モゼさん!?」
「自分の言ってる意味が分かってるのか?」
ファルマンの脳内はルベウス旅団からの攻撃にどう備えるか、本部への襲撃の日をどうにかずらせないかということでいっぱいだった。そのためモゼが唐突に言うのでファルマンは一瞬ポカンとした顔を浮かべた
俺がルベウス旅団の本部に乗り込んで潰してこよう。それで事は収まる
「分かってます。僕ならでき……」
「死にたいのか!?お前は!!」
ファルマンがモゼの胸ぐらを両手で掴み、そのまま壁まで押していく
モゼはファルマンに怒号を飛ばされても平然とした表情を浮かべていた
「死にたくないですよ」
「じゃあなんでそんなことを言うんだ!?
「じゃあ尚更ですよ」
「そういうことじゃねぇ!お前はまだ若いだろ。命を捨てるような真似をするな!」
「なら、なんであの話をしたんですか?」
モゼはそういうと胸ぐらを掴んでいる手を掴んだ
モゼの表情は平然としているが目は真剣そのものだ
「それは……」
「上から言われたんでしょう?犠牲は覚悟の上だと。だから、冒険者のランク関係なく志願者を募った。話をしている時のあなたの顔が歪んでましたから。あなたは冒険者たちを行かせたくないんでしょう?だから最後によく考えてくれと頭を下げた。そうですよね?」
「……ここの冒険者たちは皆若く、未来溢れる者ばかりだ。だからこそ、若くして死なないで欲しい。みすみす命を捨てるような真似はしてほしくないんだ」
「ファルマンさんの気持ち分かりますよ。だから僕がその気持ちに応えます」
「気持ちを分かってくれたならなんでそんなことが言える?本当に分かってるのか?」
「僕はこのギルドにいる冒険者たちよりも強いと思います。僕が行けば犠牲者を誰も出さずに本部を潰せる」
モゼの表情が真剣そのものに変わり、ファルマンも本気で言っているのだと理解した
俺の強さがどんなものなのか測ったことはない。でも、自分でも強いことは自覚してる
「お前がすごいのは認める。でもな、だからといってお前を行かせるわけにはいかない」
「でも、僕たちを冒険者の世界に誘ったのは
「……お前本当に行くのか?」
「僕は行きますよ。
「死ぬなよ。絶対に」
「はい!」
ファルマンはモゼの笑顔を見て、胸ぐらを掴んでいた手を離した
モゼは服のくしゃくしゃになった部分を直して整える
「パレードはどうする?」
「……私も行きます。幸せに暮らしてる人たちに危害を加えるのは許せないです」
「パレードも行っていいですよね?ファルマンさん」
「好きにしろ……二人とも、死ぬなよ」
「「はい‼」」
パレードとモゼは元気よく返事をするとファルマンの部屋を勢いよく飛び出していった
ファルマンは二人が無事に帰ってくるのを祈るしかなかった
「行こうか!ルベウス旅団の本部」
「はい!行きましょう!」
俺たちはギルドを出てルベウス旅団の本部へと向かった
夜も遅くなり外には誰もいない。敵も夜襲は想定外のことだろう
朝から火事の消火活動に参加していたけど疲れはない
逆にアドレナリンで体がみなぎっている
アドナイ様。力の使い方は
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