柴犬珍道中
柴まめじろ
島根旅行編 ︎︎〜1日目~
︎︎柴犬。
︎︎日本原産の日本犬の一種で天然記念物に登録されている由緒正しいワンちゃん。
「犬は人間の最良の友達」という言葉は、あまりにも有名である。
︎︎要するに柴犬とは日本犬の中でも1番親しみやすく、人類の1番の親友であるという名犬中の名犬なのだ。
︎︎そして僕もそのひとり……いや、いっぴき。
︎︎吾輩は犬である。名前はまだない……わん。
︎︎まだまだ若造の僕ではあるが、その分経験は他の犬より多くできる。
︎︎僕はこれから色々な経験を積んで、日本一の名犬――エリート柴犬になるのだ。
︎︎これは、1匹の柴犬が、様々な(作者を通しての)経験から成長していく、ワンダフルストーリーである。
︎︎記念すべき第1回目。
︎︎1回目なんだから、普段の日常ではなく、ちょっと特別なことを記録しておきたい。
︎︎僕は今、島根県にいる。
︎︎そう、記念すべきシリーズ第1回目は、島根旅行記である。
︎︎僕が名犬になる第一歩。どうか最後まで読んでほしい、わん。
︎︎僕のおうちから車に揺られること6時間。お昼12時頃、長い移動が終わった。
︎︎島根県出雲市。出雲大社が有名な神様の集まる県。
︎︎毎年10月は神無月となるが、ここ島根県では神在月になるのだ。
︎︎つまり10月には全国からここに神様が集まってくるということ。
︎︎……犬の神様もいるのかな?
︎︎とにかく、ここにくれば何となく神様の御利益的ななにかで、僕も一瞬で名犬になれる、気がする。
︎︎だからこそ、旅行後半には出雲大社に行く予定を組んである。
︎︎これで僕も柴犬マスターだ。
︎︎島根県に着いたら、お昼ご飯。
︎︎地元の喫茶店で食べることになっている。実はこの喫茶店、ナポリタンが有名で、地元ではちょっと名の知れた名店なのだ。
︎︎鉄板に乗ってやってくるナポリタンは、ほかほかで、ケチャップをたっぷり絡めた具沢山ナポリタンだ。
︎︎僕は席につくと、早速ナポリタンを頼んだ。僕のお父さん――パパ柴は大盛りを頼んでいた。
︎︎ママ柴、
︎︎わくわくしながら待っていると、熱々の鉄板に乗ったナポリタンがやってきた。
︎︎僕はゴクリと唾を飲みこむ。ほかほかと湯気が踊っていて、「早く食べてくれ」と僕を誘っている。
︎︎パクリ、と一口。
「………………っ!」
「うまっ」と言いたかったのにその言葉すら出なかった。口を開くことでこのナポリタンの美味しさが損なわれてしまうのではないかと思って、僕は何も言えなかった。
鉄板で焼かれてほんのり焼き目のついているナポリタンは、ケチャップと野菜がこれでもかと絡まりあい、少し濃いめの味付けが口の中にいつまでも残っていた。
なによりもネギが入っていないのが良い。ネギは僕らの大敵なので。
天国はここにあったか……と僕は目を瞑った。
家族のみんなも無言で食べ進めている。喋ることさえ惜しいのだ。
「ごちそうさまでした!」と元気な声で言って、僕らは喫茶店を後にした。
おいしかった。ダイエット中の僕にはもったいないくらいのカロリー。
カロリーってやっぱりおいしいんだな。
しかも今日の夜はおばあちゃんのおうちでお寿司を食べるんだ。今日は「おいしいものデー」だ。
「おいしいものを食べるのも名犬への近道」と僕は車の中で大きくなったお腹をさすった。
車で30分ほど走ると、おばあちゃんのおうちに到着だ。
去年会った時より元気そうで安心した。
お風呂に入ったら、さっそく晩御飯だ。つまりお寿司。
もうお分かりかもしれないけどここは島根県。
日本海がある県なのである。
普段いわゆる「海なし県」と不名誉な渾名で呼ばれている県に住んでいる僕にとっては「日本海の魚」というだけでもう高級魚だ。
近所の猫は魚大好きだけど僕もエリート柴犬なので魚大好きだ。お魚なら何匹だって食べられる。どうだ悔しいだろ近所の猫。
とりあえず目の前のマグロを口に入れる。
お魚は口に入れた瞬間とろりと溶けて、お醤油の甘い味が鼻を抜ける。
「わふっ」という吐息をこぼす。
おいしい。おいしすぎる。
勢いよく他のお魚も口に運ぶ。イカ、サーモン、えんがわ、エビ……色々なお魚を口に運ぶ。
「犬に魚は大丈夫なのか」とか気にしない。だって僕はエリートだから。実際のわんちゃんに色んな魚とかナポリタンとかあげるのはおすすめしない。
僕だからこそできる贅沢なのだ。わん。
ぽふっと肉球を合わせて満面の笑みで「ごちそうさま」をする。
明日は海に行くのだ。柴犬専用水着がとうとう日の目を浴びることになる。
柴犬珍道中 柴まめじろ @shiba_mameta
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