実験奇想世界への異世界転生
ルーフェ
序章:神域
第一節:異界転移
彼の死と謎の空間
…俺は、高校の授業を受けている最中に気を失って緊急搬送された。
運ばれた病院で目が覚めた時には、3日経っていて…足が動かなくなっていた。
未知の難病と余命5年を告げられた時、頭の中が真っ白になった。
隣で両親が号泣しているのを見た瞬間に、目の前が真っ暗になった。
調べても調べても難病は原因不明、勿論名前すら見つからないので治療法もなく。
対症療法をひたすらに試して如何にか進行を食い止めようとしたが無駄だった。
1ヶ月、3ヶ月、半年と経るごとに末端からどんどん感覚が消えて行く。
今日は何処の感覚が消えた、昨日は、先週は、先月は。明日は、来週は、来月は何処の感覚が消える?そう考える度に肩にのしかかる虚無感、背筋を伝う死のイメージがどんどんと大きくなる。
その度に両親に泣きついて、「怖い」「死にたくない」と昔みたいに泣きじゃくっていた。
感覚が消えたはずなのになぜかその部分が痛い気がして、訳が分からなかったから痛み止めを点滴してもらってたけど、それでも痛かった。
時折、痛みに加えて原因不明の吐き気や発熱などが合わさって、意識を失う事が何度かあった。
絶対に治して、復帰しようと努力した。
親に協力してもらって、身体を動かしたりしたが痛みが余計にひどくなるだけだった。
この難病に関する国内外の文献を読み漁っても、この難病の名前すら見つからなかった。
もう、ダメかもしれないと思った、でも諦めずにずっと探し続けるそう決意した…その時から段々と進行が早くなっていたと思う。
俺の腕も動かない、足も動かなくなった…つまり、全身不随になったのが患って1年経ったとき。
あっという間に目以外は動かなくなってしまった。
苦しい、ただただ苦しい。これが精神的な物か実際の苦しみなのかもわからなかった。
勿論、その時には呼吸も出来なくなっていたので管が俺の口に繋がっていたが、そのせいで喉がずっと乾ききっていた。
体をよじる事も表情を変える事も、何もできない癖に瞬きしたり目を動かすことだけは出来るのが恨めしかった。
目線と瞬きで意思疎通が出来るような機械を使って、時折話す事が出来ているのだけが救いだった。
治療法を寝る暇も惜しんで探し続けて、更に1年経った。
難病に関する文献を集めたサイトのリンク全てが、既読済みになった時。
俺の心はぼっきりと折れてしまった。
いつもの痛みの中で、殺してくれとずっと、ずっと願っていた。
その願いが届いたのかは知らないが、痛みも死の恐怖もどんどんと大きくなっていった。
その時には両親が隣に来ても、何も思わなかった。
生きてほしいと言っていた両親のそばで、ただただ、死にたいと願った。
ディスプレイにただひたすらに”しにたい”と延々と打ち続けた。
そして病気にかかって2年と半年程経った今日…
動けない癖に締め付けるような、痺れるような激しい痛みがずっとずっと続いている。
最も強い痛み止めを点滴してもらっても、痛くて痛くてしょうがない。
死にたくない…!まだ、生きていたい!
俺はまだ何もしていない…!
ただ、普通に勉強して卒業したら仕事して、家族が出来なくても良いから看病してくれた親に親孝行して生きていたい。
珍しくそう思ったのを最後に気を失った。
――――――――—
ふと、目の前が真っ暗で、目を開いているはずなのに何も見えない事に気が付いた。
そして、それでいてさっきまで身体の一切の感覚が無かったのにも関わらず、ふわふわとしたような奇妙な浮遊感を全身で感じており、仰向けで横たわっているのだろうというのが、はっきりと分かった。
何が何だか訳が分からなかった。
そういう事があり得る事は現状でたった一つ。夢である。
もしそうなら、自然に目が覚める事だろう。
…というか夢なら、こんなに意識がはっきりするのはおかしい気もするが、これは噂の明晰夢という奴かもしれない。
ふと何か音が聞こえたから耳をすませると、遠くで誰かが話している声が聞こえる。
というか、病院特有の音…具体的に言えば近くにあるはずの心拍を測るの機械の音が聞こえなかった。
夢だから当然だろうが。
とはいえ…俺は、何処にいるのだろう。
動けないのが辛い…目が覚めてくれないかな。
――――――――—
何分経ったか分からないが、俺の意識はずっとはっきりしていて、目をつむっても全く寝れない。
相も変わらず視界は真っ暗だ。
何だかおかしい気がする。明晰夢ってこんな感じなのか?なんだか、気が付いてはいけないような気がする。
…あれ?足音?
ということは…誰か近づいてくる…?話し声も近づいてくるな…
「……ow@r」
「…b…f、s@4e4bsq@?」
2人の女性の声みたいだけど…
これ、なんて言ってるんだ?全く理解できない。
しかもなんだか、足音早くなってきてるし…!?
「…;eqeq@u、;er:ekjmkw@fueq@\4t@…」
「0t@3.d@、baofdyegueiszp@yd8z:@ydjdq。ett@eqdjd94t」
「…g:yfueq@\4、d@d@94=gewn.t。」
「nbb\kjji」
話し声と同時に、頭上からつば広帽子を被った顔が目に飛び込んでくる。
明るく透き通っていてきれいな肌色をしたその顔は、ぞっとするほど綺麗に整っていて、きりっとした目をした女の人のように見える。
「…pe<y、0qdkb5t@gb5.t?」
紫色の前髪を俺の顔に垂らして訳の分からない言葉を言ったものだから俺の頭は爆発寸前だった。
俺、英語喋れないし…動けないし…というかコレ、英語じゃない?じゃあどこの国の言葉なんだ?
「…6e、gb5we.t」
言葉をしゃべっているが、全く意味が分からないのでずっと見つめ合っている。
俺は一体…どうすればいいんだ?
数分見つめ合った後、疑問に思っているのかは分からないが彼女の眉間にしわが寄った。
だけど、ふと得心がいったような表情を浮かべたその瞬間。
「b;uo、gb5.t?」<これなら、聞こえるか?>
うああああ!?…声を聴いた瞬間、なぜかは全く分からなかったが、何かが全身をくすぐるような感じで流れていって、全身の毛が立つような感覚に襲われた。
耳で聞いているのは意味不明の言葉なのに、全身でその言葉の意味をなぜか理解した。
<…聞こえているようで、何より>
ううう…引き続き意味不明な言葉を喋っているみたいだけど、全身に伝わる感覚のせいでぞわぞわする。
…あれ?もしかして、俺が喋れなくても問題なかったりする?
<…問題無い、私はお前の意思を読み取って喋っているからな>
…どういう仕組みなのかは考えないでおこう。
それに、慣れてきたのかぞわぞわ感が薄れてきたのが嬉しい。
<それでだ…お前は何処からどうやって来た?>
どうやって来た?それは…分からない。
気を失っている間にここにやって来たと思っているけど。
確か…気を失う前は、病院のベッドの上にいたはずだ。これは間違いない。
<…ここが何処なのかは知らないのも当然だとは思うが…お前が言うに、病院のベッドの上からここに来たという事か?>
そういう事になる。
<…具体的にどういう状況だったか、その時の風景を思い出せるか?>
え?風景?まぁ…できるけど…思い出してどうするの?
<読み取る>
…何でも読み取れるんだなぁ…
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