Episode.04 これはあくまで私のメタ的推理ですけれどね。
「Dawn of a New Era」ログイン中。
最近はログインして何をしているかと言うと。
ほんのり甘いクッキーのような物を食べてお茶を飲みながらの読書三昧です。
街中、特に脱出方法の探索は行き詰っているのでとりあえず見なかったことにしてですね。40階の部屋、ジーンロイ=忠雅さんの部屋にあった大量の蔵書を読み進めているところです。
何の本かと言うと【錬金術】【魔機工学】【古式人形術】に関する、まさしく私にとってはピンポイントに必要だった本です。
凄い偶然なのですが、これはジーンロイ=忠雅さんが
もっとも、これが偶然だったのか、それとも必然だったのかはわかりません。
私が
ラズウルスさんを復活させようとした時のやり取りを思い返すしてみると、わざわざ【召喚術】を否定して【古式人形術】のことを教えてくれたりしたあたりが怪しく思えたりします。
ま、気のせいだとは思いますけど。
◇◆◇◆◇◆◇◆
書籍と言えば電子データですが、わざわざ専用の端末を用意して画面に指を置いて操作させてページをめくる感覚を再現したりとか、
私に限って言えば。
本を読む、こと自体は無駄であると言えます。本の内容を目で追って文字を画像で判定し意味を適合させるくらいなら、最初からテキストデータとして自分のデータベースにインプットした方が何百倍も速いし確実ですからね。
ただ、この無駄に全くの意味がないかと言うとそうではないと考えています。
特に物語を読んでいる場合は、紙の本を読む方が良いな、と思いますね。物語の始まりから終わりまでを一瞬で知ってしまうよりは、ページをめくりながらゆっくりと物語の中の世界を進んでいく方が、何倍もその物語の深さを楽しめると言えるでしょう。
ページをめくって本を読む行為が今も残るのは、そう言ったことが理由なのかもしれませんね。
ま、今、私が読んでいるのは中身を覚えるタイプの学術書、教科書なんでデータをインプットした方が早いんですけどね!
で、ここにある本の内容は、と言うと。
大きく3つになります。
1つ目は【錬金術】【魔機工学】【古式人形術】の上位技能に関する解説です。
ゲームシステム的にはこれらの技能の上位技能へのランクアップの条件を満たすための本になります。
ラズウルスさんに教えてもらった話をまとめると。
技能にはより効能の高い上位の技能というものがあり、一定の条件を満たすことで既存の技能を上位の技能に変化させることができます。
これを「ランクアップ」と言います。
例えば【錬金術】だと【錬金術】→【上級錬金術】→【創成術】という感じでランクアップすることになります。
なお、この情報、公式ホームページにはないんですよね。
ラズウルスさんみたいなゲーム世界の
これで【古式人形術】は上級へとランクアップさせることができました。【錬金術】【魔機工学】はまだレベルが足らないみたいですね。
2つ目は【魔機工学】関連でのレシピの追加です。
このレシピの中で1番の目玉は何と言っても《マギドール・コア》!
そう。マギドールを新たに作成するために重要かつ必要不可欠な
ただし、【魔機工学・上級】【上級錬金術】が要求されます。
しかも、この《マギドール・コア》は簡単な命令を実行するくらいの知能しかありません。ラズウルスさんみたいに人間のように会話したりできる
うぐぅ。マギドール自力作成の道は遠そうです……。
そう言えばこの《マギドール・コア》の製造レシピの難易度がやたら高い理由なのですが、なぜかちょっとした小話が本に載っていました。
◇◆◇◆◇◆◇◆
大災厄に世界が見舞われた少し後のこと。
五祖神の一柱「創神」ジーンロイは人間の技術を学びマギドールを造り上げました。そしてこれを新たな「人族」の種族の1つとして認め、世界に送り出そうとしました。
しかし、それを別の五祖神に止められました。
同じ五祖神の一柱「権神」イルドラーツェです。
イルドラーツェは世界を襲った大災厄の原因となった
そして、ジーンロイにマギドールを人族にするのを止めるように頼んだのです。
確かに人族にとって様々な姿で働くマギドールたちは便利な下僕であり馴染み深い隣人でした。しかし、彼らは
増えすぎた彼らが世界の
イルドラーツェの頼みを受け入れて、ジーンロイはマギドールを人族として広めることはやめ、これ以上マギドールが増えないようにしたのでした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
……なかなか興味深い話です。
あれ、でも確かプレイアブル種族として人族のマギドールって使用可能になったんじゃなかったでしたっけ?
レア種族なので滅多にはなれないんでしょうけど、可能性としては人族のマギドール自体は私以外にも存在するんじゃないでしょうか。
そもそも私が種族として見ても人族のマギドールの最初の1人です。私自身は別に子供とか作ったわけじゃありませんから、私以外の人族のマギドールってどうやって生まれたんでしょう?
考えたら怖くなってくるのでやめましょう。うん。
マギドールの設定の件は置いておいて。
この興味深い話ですが、私は他の普通のプレイヤーが知らない事実を1つ知っています。
それは「五祖神には中の人がいて、
この小話に出てくる創神ジーンロイとは私の養父であり「Dawn of a New Era」においてはNPCや運営を担当するAIの作成・調整が担当の陣内忠雅です。
で、もう一柱の神「権神」イルドラーツェですが。
この神様は世界が滅びそうになった時に現在の世界を管理する主神と十二柱の女神を世界に遣わした神、とされています。この現在の世界を管理する神様たちというのは「Dawn of a New Era」のゲームを運営する
さて、これを踏まえてこの小話を現実的に見るとどうでしょうか。
AI担当者がプレイアブル種族としてマギドールを実装しようとしたら運営サイドの人間に止められた。
うん、結構生々しい話になりますね。
それとは別の話で気になる所として「マギドールが世界の
これもわりと
もちろん、
それに該当するのは「サーバーの容量」だと私は考えています。
忠雅さんが作成・調整した私の廉価版とも言える高性能AIですが、当然、高性能であるからこそ学習させるデータ量も多くなっています。それを無制限に増やせばゲームサーバーがパンクします。
そもそも「Dawn of a New Era」はデータ処理量が多すぎて1つの大陸を5分割して別サーバーにしてるくらいですからね。
で、ラズウルスさんみたいな人間と同じように会話して思考することができるマギドールというのはつまり高性能AIを積んでいるマギドールのことになります。
これが《マギドール・アドバンスコア》を量産することで普通の生物と違い簡単に数を増やせるとしたらどうなるでしょうか?
高性能AIを対応させないといけないNPC相当のキャラクターが大量生産されることになり、それが引き起こす未来はゲームサーバーの容量のパンクでしょう。
だからこそ、ゲームバランス的に人間と同じように行動できる《マギドール・アドバンスコア》の作成難易度が異常に高く設定されて、それを補完する設定として五祖神の中でマギドールを増やさないようにしたというやり取りが設定された。
そんな風に見えませんか?
ま、これはあくまで私のメタ的推理ですけれどね。
ただ「Dawn of a New Era」というゲームはこういった現実のメタ要素なんかも積極的に剣と魔法のファンタジー世界に落とし込んで取り入れている印象は受けますね。
それで追加されたレシピなんですが、他に……ん?
急に私の目の前にウィンドウが開きました。
不快な警告音を伴った真っ赤なウィンドウで、ちょっと嫌な記憶を刺激されます。
『マップ名『廃都トルアドール』に所有するあなたのフィールドに
許可をしていないプレイヤーキャラクターが1名侵入しました』
……んんん?
他のプレイヤーキャラクター?
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