告白



 あれから芳美はひとり暮らしするアパートへ戻って、母の冬未に絶対千陽の邪魔するなと釘を刺されて、遊びに来た彼の好きな女の子、咲里をこっそりと観察する璃華と恵梨、そして2人に注意したはずの冬未も混じる。やはり母親として、大事な息子が好きな女というのは気になるものなのだ。



「なるほど、案外いい子そうね」



「まあちーちゃんが好きになる子だけんね」



「にーにはおんなみる目あるしね」



 して、部屋の前で何やらやってんなと感じる千陽だが、無視して咲里との話に集中する。



「そっか、咲里さんひまねえのファンだったんだ」



「うん、ホームランもいっぱい打って足も速くてかっこいいよね千陽ちゃんのお姉ちゃん。てかサインボールもらっちゃってごめんね、今日はそぎゃんつもりなかったて」



「んねんね、ひまねえいっぱいくれてお友達にもあげなさいて言うし」



「そうつたい。てか千陽ちゃんの部屋、男ん子って感じでかわいかね」



「えへへ、ありがとう。今度咲里さんのお部屋も行ってみたいな」



「うん、来てきて。千陽ちゃんなら大歓迎よ。あ、ばってん親に彼氏連れ込んだて思われるかな」



「僕はそれでよかばってん・・・」



「ん?なんか言うた?」



「んね・・・(もう、僕のバカ)」



 そんなかわいいやり取りを聞いていた母娘は尊死しそうな勢いで、そこで隼瀬に見つかって邪魔すんなて言うたろがと叱責され、連れられて行った。と、千陽の言おうとした事を妄想して勝手に確信した咲里が息を整えて、彼に顔を近づける。



「咲里さん?」



「さん付けはやめて・・・千陽ちゃん、今日私ば家に呼んだのはその、勘違いだったらあればってん私ん事・・・・・・」



「・・・うん、僕は咲里さん・・・咲里が好き。当たり前たい、僕達男子が好きでもない女の子ば1人で家には呼ばんたい」



「そっか、よかった。私も実は千陽ちゃんの事好きだったんだ、私と恋人になってくれる?」



「もちろん・・・」



 そう言って、家族以外の人と初めてのキスをする千陽。



「千陽ちゃん凄い赤くなっとる、かわいい」



「だって初めてだもん・・・ねえ、僕も呼び捨てにして」



「うん、千陽・・・千陽みたいに可愛い子と付き合えて私幸せ」



「僕だって咲里んごたかっこいい人と付き合えて幸せよ。浮気したら許さんけんね」



「なん、クラスでも一番の美少年の千陽と付き合えて浮気なんかできるかい」



「そら光栄ね・・・」



 そして2回目のキスが終わるのを待って、そっと部屋に入ってくる隼瀬。



「よかったね、千陽」



「パパも聞いとったと?」



「んね、2人の顔見たら分かる。えみちゃん、うちんひとり息子ば大事にしてね」



「はい!もちろんでござ候にござります!」



 彼氏の親の手前緊張する咲里に、26年前実家に婚約報告に行った時の冬未の姿を思い出し笑う隼瀬。そして、父親の自分でこれなら冬未とか陽葵芳美璃華の前だとこの子どうなるんだろうと少し心配にもなる。そして冬未も入ってきて、咲里は襟をただし挨拶をする。



「この度は息子さんとお付き合いする事になりましてございまして・・・」



「そう、大事にしてね」



「はい!」



 正直「うちの千陽に彼女なんてまだ早い!」とか言われるのを想像していた咲里はあっさり受け入れられて拍子抜けして、すぐに部屋を出ていく隼瀬と冬未をポカンと見つめる。



「千陽のお母さんに色々言われるかなと思ったけど、意外な反応ね」



「まあうちんママとパパもちっちゃい頃から一緒だったらしかけん。問題は璃華ねえよ」



「上から3番目の今高校生のお姉ちゃんだっけ?妹ちゃんは?」



「まあ恵梨はまだこまかしそこまで・・・あ、足音する、来た」



 次回へつづく


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