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「こんにちは」と涙は言った。
「あ、……こんにちは」未来はそう言って涙に頭を下げた。
(それが二人の交わした初めての会話だった)
未来はそのまま涙の座っているベンチのところまで移動をした。大きな植物園の中心にある丸いコーナーの前にはベンチが二つと自動販売機。空き缶用のゴミ箱。そして四角いガラスの箱のような形をした緑色の公衆電話が置いてあった。
未来はその自動販売機の前の辺りで立ち止まって、(一度、雨降りの空を透明なドームの天井越しに見上げた跡で)……涙の様子を伺った。
「どうぞ」
にっこりと笑っている涙が言った。
「え、……はい。どうも」
そう言って照れ笑いをすると、頬を少し赤くしながら未来は涙の座っているベンチの横にあるベンチに座ろうとした。
でも涙が、真ん中に座っていた場所を端っこに移動したので、未来は座る場所を変えて、涙の座っているベンチと同じベンチの反対側の端っこの辺りに(それでも三人くらいしか座れないベンチの大きさだったので、二人の距離は出会ったばかりだというのに、もうずいぶんと近かった)ちょこんと座った。
「僕は涙って言います。河原涙(かわはらるい)です」
と涙は言った。
「あ、えっと、私は三上未来(みかみみらい)です」と未来は笑顔を作りながら、涙に言った。
未来はこのとき、とても緊張していた。なぜなら未来はとても綺麗な顔をした川原涙くんに、このとき、すでに一目惚れの恋をしていたからだった。(それは未来の初恋だった)
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