第2話 誰も幸せになれない話し合い
正直すぐには理解できませんでしたね。
「は?」くらい言った気がします。
迎えに来た空港でそれですからね・・・もうちょい場所とか考えろ、と。
家まで帰る途中に話したんですが埒が明かない。
家に帰ったら詳しく話すの一点張り。
なら家で言えよ、こっちは疲れてるんだよ。
今考えると混乱してますね。
実家に帰るとうちの両親と幼馴染の両親が勢ぞろいしてまして。
しかも雰囲気が重い。
重いというかなんて言うか澱んでたと言うか、物理的に重苦しい空気が充満しているようでした。
うちの両親は二人ともうなだれてるし、幼馴染の両親は土下座してるし。
大人の土下座とか初めて見ましたね。
二度と見たくないです。
そこまできて「あーこれはマジの話なんだな」と他人事のように思いましたよ、
2年の海外出張から帰ってきていきなりこれですから、頭が回ってなかったんでしょうねえ。
そんでもって聞きましたよ、どういうことかって。
俺の親父との子供ができたんですって。
つまり、浮気相手は親父で腹違いの弟ができたってわけです。
もう意味わかんなかったですね!さっぱりです!
脳が理解を拒みました。
道理で親父と母の座ってる位置が離れてるはずだよ。
よーく話きいたら
「あなたと本当の家族になりたかった。結婚だと離婚する可能性がある。それなら母親になって弟を作れば一生離れられない家族になれる」とか笑顔で言うんですよ。
もうね、頭おかしくなったと思いましたよ。
同時に「あ、ダメだ。話し合いにならない」と思いました。
どんだけ説明されても理解できないんですもん。
それからどうしたのかって?そらもう終わりについての話し合いですよ。
幼馴染は泣きながら「愛してるのはあなた!家族で育てていきましょう!」とか面白いこと言ってましたね。
意味わかんねぇよ。
親父はずっと青い顔して黙ってましたね。
母親はずっと泣いてましたね。
幼馴染の両親はひたすら謝りながら土下座してましたね。
控えめに言って地獄のような空間でした。
誰が悪いのかっていうとまあ、だいたい幼馴染なんですけど最終的に壊したのは親父ですしね。
3時間くらい地獄は続いたんですけど当事者のはずだけど、どこか蚊帳の外であった俺が一番冷静で。
とりあえず頭を冷やして後日話し合おうと。
俺は実家を出て駅前のホテルに逃げました。
海外出張の荷物ほどく前でよかったですわ。
翌日、また俺の実家に集まり話し合いがありました。
当たり前ですけど、婚約解消とうちの両親の離婚の話し合いが同時進行という地獄のような話し合いでした。
もう二度とやりたくないですね。
なんで俺が司会進行みたいなことやらにゃいかんのか。
幼馴染が経緯を話そうとしたんですが、俺がそれを止めました。
「心底聞きたくねえ、黙ってろ。そこはどうでもいい、今から話すのは終わらせ方だ。」
なんか泣いてましたね、ははは。
泣きたいのはこっちだよ。
揉めて謝られて謝罪されて縋りつかれて5時間くらいたった頃、なんかもうどうでもよくなったので自分との婚約破棄の件だけ告げて、俺は実家から逃げました。
その後の俺はもう関わりたくなくなったんで、早々に弁護士立てて丸投げしました。
頭おかしくなりそうでしたからね。
なんかかなり揉めて慰謝料とか財産分与とかで滅茶苦茶だったみたいです。
俺はもう何も考えないようにして仕事に没頭しました。
海外出張から帰ってきたばっかで異動申請しやすかったのもあって、地元から遠く離れたここに引っ越してきて、電話番号も変えてすべてを捨てて。
幼馴染の束縛のせいで友達いなかったから縁切るのすごく楽でした、ははは。
電話帳登録5件くらいでしたからね。
つい先日全てのカタがついて分割で振り込まれてた慰謝料だか何だかのカネが全部振り込まれたんです。
やっと終わったんです。
結構な大金です、たぶん遺産相続の生前贈与とかその辺も絡んでるんじゃないかな。
んで、ラブコメみたいだった俺の青春ってなんだったんだろうなーって。
そこだけ切り取ると他人がうらやむような青春も、終わってしまえばこんなクソくだらない終わりで。
あれだけ囁かれた愛の言葉も、一緒に過ごした日々もすべてが思い出したくない過去になりました。
輝いてた分、落差が大きいんでしょうね。
だから俺はラブコメとかそういうのが今でも読めないし、なるべく触れないようにしてるんです。
物語の彼らのその後のことを考えちまうとどうしてもつらいんです。
彼らは幸せになれたのかなって。
もし幸せなら、なんで俺は幸せになれなかったのかなって。
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なんかノリで書いてたらどんどん暗くなっていく・・・
え、これハッピーエンドいける?
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