幼馴染に愛された物語のくだらない結末

みかんねこ

第1話 よくあるラブコメの

 理由もわからないけどヒロインからやたらと好かれて、主人公が戸惑いながらも絆を深めていくようなラブコメってあるじゃないですか?

 学生のころそんなラブコメの主人公みたいな立ち位置だったことがあるんです。

 ・・・うん、何言ってんだこいつって顔してますね。

 俺だって知り合いからそんなこと言われたら、そんな顔になると思います。

 いやまあ、確かに俺はそんなに顔も良くないですし、極端に優れた特技もないですよ・・・。

 でも、得てしてその手のラブコメの主人公ってそういうもんじゃないですかね?

 そもそも顔が良くて勉強もできてスポーツ万能!みたいなやつだとラブコメにならないんじゃ・・・?

 え?最近のはそういうのも割とある?

 そうなんだ・・・いや、最近はそういうのにとんと触れなくなったから・・・正しく言うと色々思い出してしまうから触れないようにしてるところもあるんですけどね。

 あぁ、話がそれましたね。

 それで自分がどんなラブコメの主人公だったかというとですね・・・。

 そうですね、タイトルをつけるなら「俺の幼馴染のクソ重愛情がとにかくヤバい」とかかな。

 センス無いですよ、どーせ。



 その幼馴染との付き合いは幼稚園までさかのぼるみたいです。

 なんであやふやなのかっていうと、俺は全然覚えてないんで・・・。

 何人かいる幼馴染の一人くらいって言う理解でいいと思います。

 俺の住んでた町は人口5万人くらいで、特に観光資源もないような平凡な田舎町でした。

 ただ隣近所の付き合いはまあまあ残ってる感じでしたね。

 つまり幼馴染とは家族ぐるみの付き合いなわけです。

 ほら、ラブコメの導入っぽいでしょ?

 普通だと小さい頃は仲良くて、思春期を境に段々疎遠になっていくって流れじゃないですか。

 でもそいつは違いました。

 なんか知らないけど俺にべったりなんです。

 小学校から中学校、高校ととにかくべったり。

 ただ単にくっついてくるだけならともかく、とにかくやきもち焼きで大変でした。

 ちょっとでも女の子と仲良くなると威嚇して追い払っちまうし、下手したら男友達まで追っ払う始末。

 漫画や小説だったらほほえましい描写かもしれませんけどね、当事者になったらたまったもんじゃないですよ。

 何せ友達が出来ない。

 ほかの幼馴染も離れていっちまいましたよ。

 え?距離を取れば良かったんじゃないかって?

 取ろうとしましたけど、家が隣だったんですよ・・・家族ぐるみの付き合いだったから完全に縁を切ることも無理でしたしね。

 お互いの両親もこいつらいつか結婚するだろうし、仲良くさせておいて損はないだろうみたいな感じでしたし。

 ・・・まあ、なんて言うか・・・幼馴染は顔はよくて家事も何でもできて勉強もできるとかいう完璧人間だったんで、当時の俺はそこまで悪い気もしなかったっていうのもあります・・・。

 仕方がないでしょ!思春期の男なんてそんなもんですよ!

 可愛い女の子に好き好き言われて振り払えなかったんですよ!





 まあ、その結果全員が不幸になったんですけどね。




 誰も「それはおかしいよ」って言わなかったんです。

 誰も「それはやりすぎだよ」って言えなかったんです。

 誰も「それは恋愛感情じゃなくて執着だよ」って気づかなかったんです。

 中学高校と一緒に過ごしました。

 恋人同士になったわけじゃないですけど、バレンタインにはチョコをもらったしクリスマスには家族ぐるみでパーティーをしました。

 よくある凡百のラブコメのようなやり取りもやりましたよ。

 チョコには血が入れられてたりして、今風に言うとヤンデレ入ってたとおもいますけどそれなりに仲良くやっていきました。

 受験勉強も尻を叩かれながら一緒にやって、それなりの大学に一緒に行きました。

 束縛がきつくて一度も合コンとかに行けませんでしたし、友達と飲みに行くような経験もほとんどできませんでしたけどね・・・。

 今考えるとこれは大分ヤバいし、おかしい束縛具合だったと思うんですけど当時はそんなこと考えてませんでした。

 んで、大学3年生のとき酒の勢いもあってヤっちゃって。

 しゃーない、年貢の納め時だって正式に付き合うことになりました。

 当時はうれしかったですよ、もっと早く付き合ってりゃとか思いました。

 家族も喜んで気が早いながら婚約もしました。


 どう考えてもおかしいんですよね、あの頃。

 関係者全員が「あの子に任せておけば大丈夫!」って妄信していたような・・・。

 大学卒業して就職して落ち着いたら結婚しようって言うことになりました。

 気持ち悪いくらいスムーズに決まったのを覚えてます。

 無事大学を卒業して就職して3年ほどたったころ、そろそろ結婚すべえってなって式場の手配やらなんやらやったわけです。

 そのころになると幼馴染の束縛もだいぶん落ち着いてて、「大人になったんだな」ってみんな思ってました。

 全然違ったんですけどね。


 問題なく式場も押さえて日取りも決まりってところで俺の海外出張が決まりました。

 幼馴染と話し合った結果、出世につながるってことで式を延期して海外出張にでました。

 アメリカとかヨーロッパじゃなくて東南アジア系だったんですけど、定期的に帰ってきてたし幼馴染とも会ってましたよ。

 相変わらず綺麗でした。
















 ・・・「あー・・・」って顔してますね。

 大体あってます、ははは。

 そうですね、俺は結婚してませんね。

 つまりはそういうことです。

 海外出張から帰ってきた俺に対して幼馴染が初めに言った言葉は今でも忘れません。




























「好きな人ができたから、婚約は無しにして。」

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