ガーの世界

 学校の休日、さやかは両親と共に和やかに朝食を終え自分の部屋に戻ったが、まだ眠気を感じていた。


勉強したり、学者たち相手の翻訳バイトをしたりと時間がいくらあっても足りない気がする。


さやかが女神となってから、彼女の通う高校の教師たちと生徒たちの授業への気合いの入れ方が違うのである。


『女神様の通われる学校の教師という栄誉ある身として不様な授業はできない』『さやか様と共に同じ学校で学ぶものとしてみっともない成績を取るわけには死んでもいかない』と言う理由である。


さやかとしてもクラスメートや教師たちの授業・勉学への身の入れようにちょっと焦りを感じているのであった。


それにさやかは女神になる前の初志通り、一般入試枠で行ける中で一番偏差値の高い大学の薬学部への進学を志望することに決めていた。


女神であるさやかが望めば推薦でどんな大学でも進学できるだろうが、あえて一般入試枠である。


(私って突然何故か女神になったのよね。そんな例は聞かなかったけど、もしかしたら突然何故か人間に戻ることがあったりして?)


と思ったためである。


万が一人間に戻るようなことがあっても、ちゃんと試験を受けて得た薬剤師の国家資格は取り消されたりしないだろうし、必ずや人生の役に立つのである。


さやかが人間に戻ったら推薦で入った大学の入学をインチキと文句を言われるかもしれないが、試験を受けて一般入試枠で入った大学の学歴は文句のつけようも無い。


そして、それまでに翻訳バイトで積んだ学問的業績も消えたりはしないのであり、世界の学者や大学から得た報奨金を取り上げられたりもないだろう。


お金も人間の人生には必要なのである。


勉強もしたいし翻訳バイトもしたいさやかであった。


幸か不幸か女神となって以来、以前の仲良しグループと遊ぶことはなくなっている。


人間たちにとって、女神様と一緒に遊ぶなど畏れ多いことは難しいのであり、対等な女神たちという新たな友を得たさやかとしてもそれはちょっと寂しい。


とはいえ女神同士のえっちの素晴らしさを知ってしまった彼女にとっては人間の人生は味気ないかもしれない。


リフレッシュも必要だ。


そんなわけでテレパシーで女神界の案内役・リーリスに連絡を取る。




 『あ、リーリスちゃん? 私よ、さやか。今日休みなのでガーちゃんを紹介してもらえないかな?』


『さやかちゃん? 大丈夫よ。ガーちゃんを呼ぶわね。キャロールちゃんとアリスちゃんも多宇宙女神会議の拠点に来てるわよ』


程なくして5名の女神が多宇宙女神会議の拠点の巨大テーブルの上に集まった。


とはいえアリスのみは巨大椅子に腰掛け、テーブルの上の他の四人の女神を見下ろしているのだが。


この巨大テーブルをテーブルとして使っているのはアリスくらいのもので、他の女神やサイズ変更能力者にとっては無限に等しい大地である。




 「みんな、こんにちはー」


「「「さやかちゃん、こんにちは!」」」


「初めまして。ガーはガーだよ」


「あ、初めまして、私、久光さやか。さやかって呼んでね」


「さやかちゃん、どうもよろしく」


ガーと名乗った女神はさやかと挨拶を交わす。


ガーの身長は18メートルほどで、褐色の健康的に見える美しい肌で、髪は銀、目は金色である。


髪は長めで、スレンダーでシャープな完璧な均整のプロポーション。


服装はシンプルで、胸と腰に何かの毛皮を巻き付けていた。


女神は互いに魅了し合うものなので、ガーとさやかの初対面の印象はすこぶる良い。


仲良くなれそうである。




 そしてリーリスは今日の主旨を説明し始めた。


「…、そういうわけで、ガーちゃんの隠蔽の力を使って、さやかちゃんが女神であることを内緒にしたいのよ。お忍びでガーちゃんの黄金都市を巡るの」


ガーとキャロールは興味深々だった。


人間に紛れて行動できる女神は(かろうじて)さやかのみである。


ガーやキャロール、リーリス、アリスはその巨体故に、隠蔽の力を用いても速攻で女神バレするのだ。


女神が女神であることを隠して人間に紛れる…、彼女たちは迷わずその話に乗った。


「じゃあ、さやかちゃんが女神であることを隠す」


その途端、さやかは自分の周囲に何か膜のようなものを感じた。


「何か感じるけど、これどうなの?」


「あら? さやかちゃんが女神に見えなくなったわ。ちょっと背の高い超絶美少女ね」


とリーリスが返す。


「んー、そうよね。大丈夫よ。女神の力は確かだから」


とはアリス。


「そうネ、さやかちゃん、サイズ変更能力者くらいには普通の人間に見えるワ」


キャロールが言った。


さやかが女神であることは隠せたらしい。




 「私はガーちゃんの世界の酒と肴を楽しもうかな」


「あ、いいわネ。ワタシも一緒に酒盛りネ」


「ガー、ちょっと女神の仕事、戻る。その間、皆ガーの世界、楽しんで」


「私、みんなを眺めて楽しむわ」


とアリスが言った。




 女神たちはサイズ変更能力者を一人連れてガーの宇宙、ガーの惑星にテレポートした。


ただしアリスのみは違う。


アリスは体の大きさを調整し、ガーの宇宙を指で摘めるくらいの大きさで、宇宙の外からガーの惑星を覗き込んでいた。


彼女は気をつければある程度破壊力を抑えることはできるが、それでも大きすぎる彼女が宇宙の中にテレポートすると、銀河や星々の位置が大きく変わってしまう大変動となる。


ならばいっそ宇宙の外から覗き込んだほうがいいという判断である。


アリスはガーの惑星に目の焦点を合わせ、ガーの宇宙全てに轟き渡る声で挨拶した。


「ガーちゃんの宇宙の皆さん、こんにちは! 私は女神アリスよ! 仲良くしてね! あ、私に崇拝の祈りを捧げなくてもいいわ! いつも通り普通にしていてね!」


宇宙の外から宇宙を覗き込む、宇宙より大きなアリスの瞳を目撃した人間は全てアリスに平伏し崇拝の祈りを捧げようとしていたが、その相手から直々にそう言われて、心の中でアリスに崇拝の祈りを捧げながら『普通』に戻っていった。




 リーリスは身長175kmの巨大なキャロールに匹敵する大きさになって、二人で腹ばいになって黄金都市を覗き込んでいる。


彼女らの体の下にあるものは何であれ、その膨大な体重に全て押し潰されて壊滅しているだろうが、キャロールなら指を鳴らすだけで元に戻せるので問題は無い。


リーリスの身につけているものがリーリスと一緒に大きくなっているが、それもリーリスの自分の体の大きさを変える力なのためなのか、サイズ変更能力者の力なのかさやかにはわからなかった。


二人の巨大女神の吐息が轟々と大風になって都市に吹き渡る。


別に女神は呼吸を必要とはしないのだが、これは人間だった時の残渣とも言えよう。


これでも都市を吹き飛ばさないようそっと息をしているのだ。


彼女たちが思いっきり息を吐こうものなら、都市は吹き飛ばされ住民は皆殺しの大虐殺である。


都市の住人たちは、二人の慈愛の女神の吐息の人智を超えた芳香に蕩然となった。


「あ、皆さん初めまして。ワタシは女神キャロールヨ。仲良くしてネ! ワタシたちは崇めなくていいわヨ。普段通りにしてテネ!」


キャロールの声が轟く。


初めて出会う女神キャロールに平伏して崇拝の祈りを捧げようとしていた都市の住民たちは、アリスに対したのと同じく心の中で祈りを捧げながら日常に戻る。




 そしてガーは、自分の世界の民に二人分の酒と肴を用意させ、サイズ変更能力者に渡し、仕事に戻る。


彼女は人間たちのため力仕事も引き受けているのである。


とはいえ人間たちが増えたら辞めるつもりらしいが。


身長が普通の人間の10倍程のガーの肉体的な力は、人間1000人分くらいである。


女神同士ではあるが、ガーはリーリスのことを密かに羨んでいた。


彼女のように大きさが可変であれば、自分を崇めてくれる可愛い人間たちにもっと多くのことをしてやれるのでは無いだろうか。


とはいえ、リーリスは頼めば力を貸してくれるし、この悩みも人間が機械力を手にするまでのことだと、その度に文明を進歩させる意欲を新たにするガーであった。


サイズ変更能力者は身長が通常の人間の10万倍程の巨大女神に合わせて酒と肴のサイズを調節した。




 アリス、キャロール、リーリスはにこにこしながら黄金都市を見つめている。


キャロールとリーリスの、人間には到達できない雲の上の途方もない高みからこちらを見下ろす顔。


全天を支配するアリスの巨大な銀の瞳。


というか、彼女らが見つめているのは正確には都市にいるさやかである。


さやかは人に紛れられる特別な女神なのだ。


とはいえ無数の人間の中から、人間に擬態して紛れ込んでいるさやかを見つけるのは、女神としての感覚を持つ彼女らにとっても難易度は高かったのであるが。


ガーもさやかを注視していたかったが、身長18メートルと小柄な彼女がさやかに付き纏ってガン見するとさやかが女神バレするかもしれないので、後で土産話を聞くことを楽しみにして彼女は仕事に戻って行ったのである。


三人もの女神の人智を超越した美しい視線が集中する黄金都市の住民たちは、女神の絶対の美の前に平伏し崇拝の祈りを捧げたいという、魂の根底から湧き上がる衝動に耐え、日常を行い続けるのであった。




 三人の女神の視線が集中するさやかは黄金都市の広場にいた。都市の全人口、10万人を収容できる大広場である。


地面は黄金だ。


都市の土台となった黄金だけで、地球で今まで採掘された金の総量を遥かに上回るだろう。


黄金郷はここにあったのだ、とかさやかは思った。


(金もただの地面レベルでいっぱいだとかえってありがたみがないわね)


とも思っていたが。


様々な半貴石が使われている建物は、色彩が乱雑にならないよう、同じ石は同じ地区にまとめてあるようだった。


地球・日本の街並みを見慣れたさやかにとって、それはなかなかエキゾチックで美しい都市に見えた。


とはいえ建物の造形にはあまり凝った装飾などは無いようである。


素材は特別でも造形は直線的で四角いのだ。


この街のどこから見て回ろうか…。


原始文明に観光スポットやショッピングエリア、美味いものを出す店、そう言ったものがあるとも思えない。


(そうね、社会見学に来たと思いましょう。この世界の人たちが仕事しているところを見せてもらうの)




 (まずは農地ね。農業こそ文明の基礎よね)


さやかは広場から大通りに出て、街の外へと出た。


絶対の女神であるガーの君臨するこの世界で、外敵を想定していないこの都市には城壁などは無い。


黄金の土台から地面に降りるためのスロープを下る。


農地は街の外に出るとすぐだった。


川から水を引いた黄金造りの水路には藻が繁茂していた。


長く直線に延びた水路と、盛り土を施された畑が交互になっている。


上から見ると綺麗なしま模様に見えるのではないだろうか。


盛土の土台も黄金だ。


どうやらこの水路と畑の土台も、黄金のインゴットを削り出して作ってあるらしい。


(金が好きねぇ)


遠くの畑では、おそらくは農夫の仕事についている人が、見慣れない四つ足獣の家畜に動く小さな小屋のようなものを牽かせて動かしていた。


人に見つからない位置にこっそりテレポートで近づく。


「こんにちは!」


「おや? どっから出てきた??? 随分と背が高くて綺麗な娘さんだねぇ。びっくりしたよ。稀人さんかね?」


「えっと、まあそんなところです」


さやかは適当に誤魔化す。


女神であることがバレなければいいのである。


「これ、なんでしょうか?」


「鳥小屋だよ。鳥に畑の害虫と雑草を食べてもらうんだ」


地球にもあるチキントレーラーのような物だろう。


「鳥は何でも食べてくれるし、肉も卵も食べられるし、羽毛も使えるし本当に役に立つねぇ」


「これもリーリス様とガー様のおかげじゃ。ありがたやありがたや」


「そ、そうですよね! 女神様方はとってもありがたいですよね!」


「全くじゃなぁ」


さやかは自分が女神だとバレないよう話を合わせる。


屈んで、ちょっと畑の土に触れてみる。


ふかふかして柔らかく、陽の光を浴びて僅かに暖かいが、農業や園芸に詳しいわけではないさやかに土の良し悪しはわからない。


(リーリスちゃんなら土やミミズや土中微生物の鑑定までできるのかも。よくわからないけどきっと最高の土なんだわ)




 さやかは農夫たちの目が自分から逸れた隙にちょっと上空までテレポートし、地上を眺める。


農夫たちは仕事に差し支えない限り、できるだけ天空の巨大女神…、リーリス、キャロール、アリスを少しでも見ていようとするので隙は多いのである。


風が強い。


芳香がする。


リーリスとキャロールの吐息である。


そっと息をするだけで大風となる、彼女たちの巨大さ、強大さをさやかは改めて感じた。


海辺に何かある。


行ってみよう。




 海の側には風車が立ち並んでいた。 


木で作られた、立体状塩田に風車で動かされるアルキメデス・スクリューが塩水を汲み上げている。


風と太陽の力で海水を濃縮しているのだ。


風車こそ木製だが、海水溜めや、海水を導く水路はこれもまた黄金で作られていた。


(リーリスちゃん…どんだけ金が好きなのよ)


ガーの原始文明で使われている金の総量は地球で今までに採掘された量と、これから採掘されると思われる金の量を全て合わせても比較にならない莫大な物である。


僅かな金のインゴットがこれほどの量の金となる…サイズ変更能力とはかくも便利な物なのだ。


これだけの数の風車を作るにもそれなりに大きな労働力が必要とされるはずだが、リーリスとガーがいればなんとかなるのだろう。


サイズ変更能力者も何かしたのかもしれない。


風車のメンテナンス要員らしい人が、風車に入って行った。


キャロールとリーリスの吐息が吹き荒れるため、今日はものすごく強風なのである。


きっと彼は今日は忙しいかもしれない。




 次にさやかがテレポートした場所は、黄金都市の近くだった。


そうそう女神バレはしたくないのである。


人目を避けてテレポートだ。


大通りから再び街に入る。


次はどこに行こうか?


街中を歩く人たちに尋ねる。


「すみません、この街で人たちが働いているところってどこでしょうか?」


「ああ、空色街には色々働いている人がいるけど、…お姉さん、すごい美人だね。えっちしようよ?」


「えええええ?!」


さやかはびっくりした。


とはいえ、ここは地球ではない文化圏なのである。


地球の性道徳は意味をなさない。


それに原始文明なので娯楽もそんなにない。


えっちをいきなり求められたのは当然なのである。


さやかは女神であることを隠蔽しても人間の究極であり極限である美少女なのであり、決して手の届かない高嶺の花なのだが、女神という絶対の超越者を知る世界においてはそうではないのだ。


彼らにとって女神であることを隠したさやかは手の届く超絶美少女である。


女神であることを隠したさやかにナンパする男はいるのである。




 さやかは適当にナンパを断り、空色街へと向かった。


身長2.4メートルを超える巨女のさやか。


間違いなど起きようがないのである。


空色街は地球でいうトルコ石で造られた街である。


そこでさやかは色々と興味深い体験をすることになった。


酒蔵。


酒を作っているのだ。


どうもガーの世界では都市から離れたところで働く人間は保存食を弁当にしなければならないそうである。


あまり美味しくない。


それでは都市で働く人間との境遇の差をどうやって埋めるのか?


その答えが酒であった。


都市の外であまり美味しくない食事を摂る人間には酒が多く振る舞われるのである。


そのほかにも、驚くべきことに、火薬工房すら存在した。


なんと、ダイナマイトに匹敵するレベルである。


(嘘でしょ?!)


あまりのありえない文明レベルにさやかは驚いた。


爆薬はどうやら黄金都市からかなり離れた場所にある、鉱山で使われるらしい。


どうもガーの文明は、化石燃料に頼らない世界で、人間の筋力にできるだけ頼らない世界を目指してデザインされているようだった。


(まあ、アリスちゃんはものすごい知性の女神だし、困ったらアリスちゃんに聞けば最適解を出してくれるよね)


さやかはそう思った。


カンカンカンカンー。


鐘の音が響く。


「稀人さんかね? お昼ご飯の刻だよ? 早く食べに行かないとねぇ」


今まで働いていた人たちがどこかに向かう。


よくわからないが、さやかも一緒に行くことにした。




 黄金都市の大広場である。


炊き出し(?)の人たちが、並ぶ人たちに温かい食事を振る舞っていた。


さやかも並ぶ。


ちょっと視線を感じるが、ほとんどの人は天空のキャロールとリーリスとアリスに見惚れているから問題ない。




 と、新たな視線を集める存在が現れた。


女神ガーである。


(あら…、ガーちゃん…)


どこに控えていたのか、サイズ変更能力者が現れ、ガーのサイズに食膳の大きさを調節した。


大きい。


小さい人間たちの間に聳え立つガーはなんと大きくて美しいのか。


さやかの感性は、リーリス、キャロール、アリスという桁外れの巨体の女神に慣らされてはいるが、身長18メートルのガーはものすごく大きいのである。


むしろ、人間の感性で感じられる適切な巨大さであるとも言えるのだ。


ガーが大広場の人間たちの間を歩く。


ガーが女神でないとしても、それだけでもひれ伏して崇めたてまつりたい神々しさである。




 食事を振る舞われた人たちは、地面にそれぞれ腰掛け食べ始める。


さやかも習って地面に腰掛け食事を摂る。


なんというか、主食は粥だ。


どんぶりに盛られた粥に何だか、肉っぽいものと、何だか野菜らしい青いものがどっさりと盛られている。


どうも粥にはかき玉っぽいものも盛られている。


(そういえば、鳥も飼われていたのよねー。鳥の卵なのかしら)




 木製の匙で掬って口に入れると塩味が強かった。


肉体を駆使して働く人間が多い時代の配給食としては最適解なのだろう。


副食は茹でた肉と、緑のイクラのようなものを和えた物だった。


味付けは何だか旨味と塩味の何かだ。


そういえば、この世界には魚醤があると聞いたからそれなのかもしれない。




 「美味しかったわ。ごちそうさまでした。」


さやかは食器を回収している係の人に、食器を返して挨拶した。




 それにしても視線を感じる。


リーリス、キャロール、アリスの三人の巨大女神に加えて、今ではガーもさやかを注視しているのである。


何か言いたそうなガーの元にさやかは歩み寄った。




 「さやかちゃん…、えっち、しよう?」


さやかはガーの力で女神であることを隠蔽しているし、色香も彼女を見た人間が溶けて死なないように抑えている。


しかし、それはガーからは丸見えなのであった。


自分の隠蔽の力で自分自身の目が眩まされたりはしないのであるし、隠してあるものを見つけるのも得意なのだ。


ガーの目から見ると女神の神々しい美と色香と雰囲気を隠せず発散しているさやか。


それを見せつけられているのだ。


さやかとえっちしたくてたまらない。


女神たちは性に非常におおらかであった。


素直に思いを口に出す。




 「そうねー、ガーちゃん、えっちしましょう!」


女神であることに順調に慣らされているさやかであった。


街中の広場で、彼女らは服を脱ぐ。


とはいえ、まだまださやかには衆目の中で服を脱ぐのは恥ずかしい。


崇める女神であるガーが服を脱いだのを見て、何か特別なことが始まることを察した広場の通行人たちがふし拝む。


(どうしようかなー、私も女神なことばらしちゃっていいのかしら?)


とちょっと迷ったさやかだったが、そもそも女神でない女性が街中で服を脱げばただの痴女であるということに思い至り、自分の周囲の膜(のように感じられるもの)を破った。


「「「めめめめめ、女神様がこちらにも?!」」」


ガーを伏し拝んでいた者たちが、自分たちがただの超長身の超絶美少女とだけ思っていた人物が実はガーと同じく女神であると知り、慌ててさやかの方にも礼拝の姿勢を見せた。


「あ、えーと、私は拝まなくていいですから皆様普通にしていて下さいね」


さやかは慌てて周囲に言う。




 「さあ! さやかちゃん!」


服を脱いださやかの体をガーが掴みあげた。


そして自分のささやかな美乳にさやかを押し付ける。


「ガーちゃんの胸、ふかふかしてやわらかいわ!」


「さやかちゃんもやわらかくてあったかいぞー!」


ガーの胸とさやかの全身にはじんわりとした快楽が走る。


大きさに差のある女神たちがえっちする際は、小さい方の女神がテレポートで大きい方の女神の体を動き回って愛撫することが主であるが、ガーの身長はせいぜいさやかの七〜八倍程度である。


相対的に、山のように見える女神、微生物のように小さく見える女神とえっちすることも多い女神同士のえっちでは差が少ないと言える。


さやかは、自分を掴むガーの手に身を任せることにした。


(私はガーちゃんのお人形さん! 仲良く遊んでね!)


ガーはさやかに触れるところ全てから快楽が伝わることを知り、スポンジで体を洗うときのようにさやかを体のいろんなところで擦る。


さやかとガーの、ゆったりとした快楽の時間が流れていく。


人間たちにとっては平伏しながら眺めていたい素晴らしい光景ではあるが、それぞれの用事を果たさない訳にもいかず、心の中でさやかとガーを崇めながら後ろ髪をひかれる思いを断ち切りつつ食事を終えていった。




 「私たちも混ざりましょうか」


「そうネ!」


酒とつまみを消費し終えたリーリスとキャロールが、えっちを楽しむガーとさやかを見て言う。


酒盛りの時間は終わりでえっちの時間だ。


女神たちが服を脱ぐ。


広大な地域が彼女たちが脱いだ服の下敷きとなり潰れた。


リーリスが体の大きさを変える。


常人の1000倍程度だ。


リーリスから見ると、ガーは自分の100分の1程の大きさとなる。


リーリスはガーを無理なく摘み上げられる。


リーリスは自分の体にさやかを擦り付けるガーを摘み、自分の乳首に押し当て乳首ごと摘み弄ぶ。


そしてキャロールから見ると、今のリーリスは、これもまた自分の100分の1程となる。


キャロールはリーリスを摘み、リーリスがガーに今しているように自分の乳首に押し当て乳首と一緒に弄ぶ。


四人の女神の間で人間の想像を絶する快楽が与え合われる。


女神たちの間にしっとりとした穏やかなえっちの時間が訪れた。


人間の感覚は女神と異なり限定的である。


人間たちには、天空を支配するアリスの瞳の下、ここからでもすぐそばのようにはっきり見える空の彼方の巨大なキャロールが虫のように小さく見えるリーリスを乳首と一緒に弄ぶ光景しか理解できない。


しかし、それだけでも魂を消し去るほど美しい神聖でエロティックな光景だ。


都市の人間たちは用のあるものはキャロールに心の中で礼拝し、急ぎの用がないものはそのまま平伏しキャロールを崇め始めた。




 「はぁ…はぁ…」


凄まじい巨大な、美しい喘ぎ声が全宇宙に響き渡る。


アリスだ。


巨大な瞳で宇宙を覗き込む彼女は他の4人の女神が戯れる有様を見て自分も発情し喘ぎ声をあげていた。


興奮に潤む瞳が宇宙中から見える。


宇宙の住民たちはこれだけでも恍惚となる。


四人の女神がえっちに戯れる姿はそれだけで途方もないエロスだが、四人の中にはさらにエロスの女神であるさやかがいて、それを増幅させているのである。


アリスはもうたまらない。


「みんな…、お願い…、私も混ぜて…」




 「いいわ! アリスちゃん! 来て!」


とさやか。


「いつでもいいわよ!」


リーリスが応える。


「ワタシはいつでもOK!」


キャロールが返す。


「ん、いいぞ」


ガーが言った。




 「いくわよ…、みんな」


アリスの声が轟く。


アリスはそっと口を開き宇宙に近づけた。


あーん。


アリスのあまりにも美しいピンクに輝く唇の間を宇宙は漂い、とてつもなく美しい白に輝く前歯の間を通過し、口の中の空間へと到達した。




 そっと口を閉じる。


宇宙からはアリスの口の中のとてつもなく美しい光景が広がっているのが見えた。


さやかたち女神たちも、全宇宙の住人たちも期待に胸を高ならせる。


アリスは次に何をするのだろうか?


アリスにとって宇宙はあまりにも小さくて弱い。


舌で宇宙を硬口蓋にゆっくりゆっくりと押し付ける。


アリスは抵抗など感じない。


宇宙はゆっくりと潰され無に帰した。


宇宙の全ての住人は、消し去られる直前、アリスに潰される栄光に魂を消し飛ばすほどの歓喜を覚えた。


不滅にして無敵である女神たちのみがアリスの舌と硬口蓋の間に存在していた。


アリスはそのまま舌を硬口蓋に擦り付ける。


一塊になっていた女神たちはバラバラに散らばった。


アリスにとってはその範囲は舌先にすぎないが、小さな女神たちにとってはとてつもない距離である。


好きにテレポートできる女神にとっては距離は些細なことに過ぎないのだが。




 「「「「きゃああああー!」」」」


舌をそっと押し付けるだけで宇宙を消し去るアリスの凄まじい力を味わい、女神たちは口を開けて快楽の悲鳴をあげた。


アリスの口の中はうっすらと唾液で覆われている。


さやかの開けた口の中にアリスの唾液が入り込む。


女神は目で見ても人智を超越した美しさであり、体の全ては人智を超越した芳香を漂わせる。


それだけではない、触れれば人智を超越した素晴らしい肌触りであり、味わえば人智を超越した天上の美味。


その声は人間が聞けば魅了され全面的に従う以外にない人智を超越した美声なのだ。


アリスの唾液は想像を絶する美味であり、香りも素晴らしい。


口当たりも喉越しも人間の想像しうる全てを超越し、神話のネクタールもアリスの唾液に比べれば腐った水にもならないだろうとすらさやかは思う。


アリスの口の中の女神たちは、素晴らしい美味に蕩然となる。


そしてそれはアリスも同じだ。


小さな女神たちはアリスの舌先にいるのである。


舌先に女神たちの美味を感じる。


口の中に四人の女神たちの芳香が満ちる。


(なんてすごい美味しさなの! みんなそれぞれ味が違うのね…、一際とてつもなくえっちな美味しさがあるわ。これはさやかちゃんの味ね。えっちな味ってなんなのかと言われるとよくわからないけど他に形容できる言葉が見つからないわ)


あまりの美味に、アリスは舌先を強く硬口蓋に擦り付ける。


その強大な力に女神たちは素晴らしい快楽を味わい、また、アリスに快楽が与えられる。


「アリスちゃん! もっと! もっと! もっと強い力で私たちを弄んで!」


快楽のあまりさやかが声をあげる。


それはアリスの口の中にいる全ての女神を代弁していた。




 (わかったわ! もっと強くね!)


アリスは口の中の女神たちの要望に応えるため、一瞬で無限としか言えないような有限倍の巨大化をした。


(いくわよ! みんな!)


さらに巨大に強くなった舌を口の中で動かし、舌先に貼りついた女神たちを奥歯でそっと甘噛みする。


無数の宇宙を何も感じずに噛み潰せるだろうアリスの美しい歯…、女神たちはアリスの強大な力を味わいさらに素晴らしい快楽を与え合う。


アリスには女神たちを噛み締める歯から快楽が伝わる。


しかし、絶頂には達しなかった。


((((イキそうなのにイケないなんて?!))))


原因はさやかだった。


エロスの女神であるさやかは、その気になれば、ギリギリまでイキそうになっても絶頂を我慢することくらい容易いのだ。




 それは快楽を与え合う他の全ての女神たちにも理解できた。


(さやかちゃん…、何か企んでいるのかしら)


快楽のあまり精神が吹き飛びそうになるのに絶頂をむかえることができない感覚の中リーリスが思った。


さやかが他の女神たちに考えを伝える。


『ねえ! 私いいこと考えちゃったわ! リーリスちゃんアリスちゃんの右乳首に行って! ガーちゃんは左乳首に! キャロールちゃんはクリトリスよ』


『さやかちゃんは、どうする?』


ガーが尋ねる。


『私はお尻の穴に行くわ!』


そして女神たちはアリスの全身の見える距離までテレポートし、それぞれの場所に着地した。


さやかはアリスのお尻の穴を一望できる場所までテレポートする。


美に輝くピンクのシワに囲まれた壮麗な巨大な穴が僅かに空いている。


そしてその穴は、無限とも言える巨大な双山に挟まれている。


比較対象物がないからよくわからないが、わずかに空いているように見えるあの穴には宇宙が無限個とも言えるほどに詰められるのだ。


さやかがアリスのお尻の穴のシワの底に着地すると、そこは無限とも思えるほどに広い、ピンクの大峡谷の底で、無限とも言える底の果てからこれも無限とも言える高さの壁が聳り立つ凄まじい絶景だった。


皮膚の一片でも髪の毛一本でも人間を魅了し完全服従させる人知を超越した女神の美である。


ましてやアリスは大きければ大きいほど美しくなる、大きさと美しさと知性に特化した女神。


アリスのお尻の穴のシワの底は、思わず蕩然となる絶対の美に満ちた空間であった。


(私、お尻の穴を責めた経験ってないのよね)


エロスの女神ではあるが、さやかの性経験はそんなにない。


いっそのことシワとは言わず、お尻の穴の中に飛び込んで中から責めようか。


とはいえ、どうもあの壮麗な大穴に飛び込むのもちょっと怖い気がする。


それにエロスの女神であるさやかにとってはどこでも性感帯である。




 『それじゃ! みんなでアリスちゃんをイカせましょ!』


さやかはメッセージを送る。


『わかったわ!』


『了解ヨ!』


『わかった!』


女神たちが愛撫を始める。


さやかもお尻の穴のシワの底に舌を這わせた。


(アリスちゃんは女神だから穢れないしうんこもしないから汚くないよね!)


アリスは女神であるのでお尻の穴も凄まじい芳香を漂わせるのである。


大きくなればなるほど美しくなるアリスの芳香はさらにとてつもないものになっている。


さやかはお尻の穴を責めることに僅かに抵抗がなくもなかったが、アリスの美しさに上書きされた。




 「あああああーんっ!!!」


凄まじい音量の声が宇宙の外の虚空に轟く。


アリスのよがり声だ。


アリスの口元近くを漂う無限とも言える数の宇宙が声だけで消し飛び、ビッグバンを超越する声のエネルギーで無限とも言える数の宇宙が生まれる。


だがさやかは絶頂を堪える。


(ちょっと意地悪しちゃいましょ)




 アリスは快楽に耐えきれず一瞬ごとに無限としか言いようのない有限の巨大化を続けた。


無限とも言える有限の数の宇宙がアリスの巨大化に巻き込まれて消えていく。


無数とも言える有限の数の宇宙がアリスの発散するエネルギーにより生まれていく。


女神たちは思う。


((((さ、さやかちゃん…、そろそろイカせて…))))


そしてさやかは堪えるのをやめ、快楽を与え合う全ての女神たちは同時に絶頂に達した。




「みんな、すごかったわ…」


アリスが顔を紅潮させて他の女神たちに話しかける。


「本当にそうね」


これもまた、絶頂の余韻で顔が真っ赤のリーリス。


「ワタシが味わった一番の快楽ヨ…」


キャロールも言う。


「こ、これがエロスの女神の実力…」


ガーも言葉少なに語る。


「うふふふふふっ」


さやかは笑った。


エロスの女神の余裕である。




「ジャア、壊レた宇宙を戻すわネ」


キャロールが指を鳴らすと壊れた宇宙は全て元通りになった。


「いつ見てもキャロールちゃんすごいわねー」


さやかが感嘆の声をあげる。


「ほんとキャロールちゃんには私、頭上がらないわ」


とアリス。


彼女は巨大さのあまりつい破壊してしまうものが多いのであった。


「キャロールちゃんが女神になってから、女神たちは破壊とか殺戮とかにあまり躊躇しなくなったのよねぇ」


とリーリス。


「そうなのかー?」


ガーは身長18メートルと、さやかに次いで小さめの女神なので、破壊力も小さくキャロールの力に頼る経験はなかった。




 「それじゃ、今日は解散しましょうか?」


リーリスがとった音頭にさやかが返した。


「そうね、でも聞いて! わたしいいこと思いついちゃった!」




続く

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