ガールズトーク:縮小人間の話あるいは文明

 さやかが女神として覚醒してから二週間ほどが経とうとしていた。


覚醒後2度目の日曜日である。


さやかは母が朝食を作るのを手伝っていた。


「さやかは女神様になったんだから、お料理の腕は不要かもしれないけれどね」


と母は笑った。


さやかの母は、今の時代の冷凍食品やコンビニ飯、レトルト食品、カップ麺等を企業努力の結晶として高く評価していた。


「私はあの人の胃袋を掴んだけれど、今は電子レンジがあれば簡単に美味しい物を食べられる時代よ。さやかは進学就職して一人暮らしになっても困らない程度のスキルがあればいいと思うわよ」


「今はロボット掃除機も自動洗濯機も食器洗い機も便利なものがたくさんあるんだから、家事ができてもいい夫をつかまえるアドバンテージにはならないわ。不景気な時代だし、共稼ぎで稼げる資格とかの方が有用ね。さやかの希望が第一だけど、大学や専門学校は取れる資格で選んだ方がいいわね。私みたいに薬剤師はどうかしらー」


とはさやかが女神に覚醒する前の母の言葉である。


さやかの母は、薬剤師と栄養士の資格を持っていた。


有用な資格があるため好条件での再就職も容易いだろうとさやかを身籠った時に退職したのである。


当初の予定では、さやかが幼稚園に行く頃の再就職を考えていたが、専業主婦のままでお金も稼ぐ道を選んだ。


さやかの母の料理スキルは高い。


それを生かして、料理漫画の料理を再現する動画を作成しアップしていたのである。


原作の再現性のみではなく、美味しいものを作るということも重視し、原作通りだと不味いものしかできないところをアレンジと工夫で乗り越え、原作通りのリアクションをされるような美味しいものを作る。


分量と手順を守れば誰でも美味しい漫画料理が作れるレシピ付きの動画は原作漫画ファンのみではなく自炊層主婦層にも受け入れられ、今ではフルタイムパートで働くよりも結構な副収入があり、久光家の家計とさやかの母のお小遣いを潤している。


さやかの母は失敗した再現料理は自分の胃袋で食材への責任をとって始末し、試行錯誤の後にできた成功作をさやかとさやかの父に振る舞い、感想を動画に載せることを常としていた。


それが元で先日動画配信者として身バレすることにもなった。


原因はさやかである。


実に間抜けな話であるが、編集で顔を隠してはいても、最新の動画で、今までの動画にもしばしば登場していた「配信者の娘」が突然身長2.4メートルを超えたことから、あっさりと女神であることがバレた。


なぜアップする前に気がつかなかったのだろうか。


動画配信者の〇〇氏は女神さやか様の母堂だった! とはちょっとしたニュースになりさやかの母の動画再生数とブックマークは飛躍的に伸びた。


閑話休題、「料理はただの家事ではないわ。趣味も兼ねているのよ」とはさやかの母。


そんな母の教えを受けて育ったさやかは自分も薬学部に進学して薬剤師の資格を取ることを志望していたが、女神として覚醒してからは、世界の支配者として役立つことを勉強した方がいいかもしれないと、志望先について迷っていた。


人生の先輩である父母も、教師も、さすがに「全世界の支配者が学ぶべきことを教えてくれる大学の学科」を相談されても困るのであり、適切な答えを返すことができないのである。


帝王学部帝王学科なんてものはどこにもないのだ。




 とはいえ今日、さやかと母の合作の朝食は漫画再現料理ではなく、普通に安価な食材と少ない手間でありながら夫の胃袋を鷲掴みにする理想的な主婦の料理であった。


さやかの母はさやかの前にてんこ盛りに料理を盛る。


「さやかはそれだけ背が高くなったんだからたくさん食べないとね」


さやかの父母は自分達の娘が突然超長身美少女になったことを、娘が立派に育ってくれたと喜んでいるようだった。


不老不死不滅の女神であるさやかは飲食不要であるが、さやかは人間だった頃の習慣で3食食べていたし、なんなら放課後にスイーツを食べることもある。


女神になっても、さやかにとってスイーツは美味しいのである。


さやかが女神になって身長2.4メートルを超えてからは母はさやかにてんこもりに料理を出すようになっていた。


栄養士の資格を持つさやかの母が計算した、今のさやかの体格に見合った量とはさやかの母の言葉。


排泄もしない女神となったさやかが食べたものが一体どうなっているのか誰にもわからないが、さやかは母の盛る料理を完食していた。


ちなみにさやかはいくら食べても体重が増えることもない。


食べたものは消えているのだろうか。


さやかがフードファイターになったり、わんこそばにチャレンジしたら、記録がいくつも更新されるだろう。


さやかは朝食を終えたら、アリスの宇宙で、以前の日曜日に知ったアリスの眼に、今日も浸からせてもらおうと思っていた。




 さやかたち一家は皆で美味しい美味しいと和やかに朝食を終え、くつろぎの時間が訪れた。


さやかは自分の部屋に戻り、アリスに連絡する。


『あ、アリスちゃん? 聞こえる? 私さやかよ』


『あ、さやかちゃんー、こんにちは。今日がさやかちゃんの学校の休日なの?』


『そうなのよ。また、アリスちゃんの眼に入らせてもらいたくて』


『私が寝ている時以外ならいつでも歓迎よ。ただ私、今、自分の宇宙じゃなくて多宇宙女神会議の拠点にいるからそっちに来てね』


『わかったわ』




 さやかは多宇宙女神会議の拠点へとテレポートした。


以前現れた、超巨大テーブルの上に現れる。


多宇宙女神会議に雇用されている、サイズ変更能力者たちに挨拶をした。


彼らはいつ女神からサイズ変更依頼があってもいいよう、交代で待機しているそうである。


待機時間はゲームでも読書でもおしゃべりでも何でも好きなことをして過ごしていいし、それでも時給で大変結構な報酬は出るし、福利厚生としてサイズ変更能力者のみの特権は与えられるわの超好条件で、本当に多宇宙女神会議はありがたいとは彼らのうちの一人のセリフであった。


アリスの姿は無い。


(アリスちゃんどこかしら? あんなに大きなアリスちゃんを見落とすなんてありえないわよね?)


さやかはアリスの姿を探しテーブルの遥か上空に上昇していく。


超巨大テーブルの全容を一目で見える距離まで昇り、さらに周りの床が見えるところまで上昇する。


アリスが見つかった。


彼女は多宇宙女神会議の拠点の床に仰向けで大の字になって寝そべっていた。


なんという大きさであろうか。


アリスは最小の大きさですら、身長12,2165,1354光年という圧倒的巨体だが、今それがさらに巨大になっていることが、さやかの女神としての感覚に伝わってきた。


人間に由来する感覚だけでは今の彼女の大きさを認識することなど不可能だ。


今のアリスの大きさを朧げながらにも語りたいのであれば、天文学ではなく巨大数論の知識が必要だろう。


最も著名な巨大数であるグラハム数をいくら使っても、今のアリスの大きさには無に等しい。


とはいえ実無限の大きさにも、絶対無限を超越する大きさにもなれるアリスだが、今の大きさはまだ有限の範囲ではある。


(アリスちゃん…、なんて大きいのかしら。でもどうして多宇宙女神会議の拠点でこんなに大きくなっているのかしら?)


とはいえ、アリスと無事出会えたので話しかける。




 「こんにちは! アリスちゃん。きたわよ。でもどうしてそんなに大きくなっているの?」


「さやかちゃんこんにちは! リーリスちゃんに頼まれたから大きくなっているのよ。じゃあ服を脱いで私の右眼に入るといいわ。リーリスちゃんもいるわよ」


さやかはテーブルの上に戻り服を脱いで畳むと、アリスの右眼に近づいていった。


アリス以外の女神の気配がする。


気配の元にテレポートするとそこにはくつろいでアリスの涙の海に浮かぶリーリスがいた。


「あ、さやかちゃん。元気してた?」


「リーリスちゃんこんにちはー。もちろんよ。アリスちゃんがこんなに大きくなっているのって、どうしたの?」


「あら? アリスちゃんは大きくなればなるほど美しさが増すのよ? うんと大きくなってもらってさらに美しくなったアリスちゃんの姿を愛でたほうがお得でしょ?」


「私はいくらでも大きくなれるし、大きくなるのは息をするより簡単なことで何の負担でもないし、望まれれば望まれるだけいくらでも大きくなるわよ。さやかちゃんも遠慮なく言ってね。私は望まれるまでどれほどにまでも大きくなるわ」


とアリス。


さやかは最小の状態のアリスの大きさからでも精神を揺るがす感銘を受けていたが、こうして大きくなったアリスの形容し難く、名状し難い大迫力を目の当たりにしてみると、リーリスの気持ちもわからないわけではなかった。


とはいえ、今日来た目的は、アリスの眼に入らせてもらうことである。


さやかもリーリスと共にアリスの涙の海に浸かった。


以前にアリスの涙に浸かった時も、途方もなく巨大なモノに抱かれる感覚があったが、今度はそれを遥かに、超絶的に上回る感覚がさやかを満たしていった。


別にストレスが溜まるような生活では全く無いのだが、さやかにとって人間たちを精液や愛液にして溶かし殺さないよう常時色香を抑えているのはちょっぴり疲れるのである。


リーリスのサイズは身長500メートルから10万キロメートルまで可変であるが、今のリーリスは自分の最小サイズである500メートルでアリスの涙に浮かんでいた。


(リーリスちゃん、なんてあなたは美しいの…)


さやかはアリスの涙の海に浮かぶ、くつろいだ表情の巨大なリーリスの美に感銘を受け、見惚れていた。


アリスやキャロールのような桁外れの巨体に慣らされることで多少感覚が麻痺していたが、身長500メートルは山にも匹敵する圧倒的巨体であり、大きさだけでさやかに感銘を与えることができるのだ。


「リーリスちゃん…、貴女はなんて大きいのかしら」


思わずさやかの口から言葉が漏れた。


「あら? 大きさならアリスちゃんのほうがずっと大きいわよ?」


「うーん、アリスちゃんは大きすぎて、人間に由来する感覚では大きさを実感できないのよ。私がアリスちゃんの大きさを朧げにも感じることができるのは女神になれたからね」


そこにアリスの声が轟く。


「やっぱり私って最小でも大きすぎるのね。でも私が大きければ大きいほどいいっていう女神もそれなりにいるのよ。人間由来の感覚だと絶対に理解できない超絶的巨大さがたまらないそうね」


さやかは一瞬だけ考えた。


アリスがとてつもなく大きいことを気にしていたらどうしよう。


アリスに謝ったほうがいいのだろうか。


しかしアリスの声には自分の巨大さをコンプレックスにしている様子は感じられなかった。


アリスからは、その巨大さを自分の属性として誇るでもなく卑下するわけでもなくただ当然と受け入れている様子が感じられた。


だからさやかはアリスの大きさを褒め讃えることにした。


「私も大きいアリスちゃんが大好きよ! どんどんいくらでも大きくなってほしいわ!」


その言葉に嘘はない。


さやかにとってもアリスは大きければ大きくなるほど美しさが増すし、その姿を眼にするのは至高の幸福なのだ。


「さやかちゃん…!」


アリスはさやかの言葉に感動した。


アリスの体が感動でさらに巨大数論的に巨大化する。


果てしない涙の海がさらに果てしなくなったことが女神の感覚に伝わる。


「「アリスちゃん…素敵」」


巨大化しさらに美しくなったアリスに魅了された、リーリスとさやかの声がハモった。


「うふふっ」


アリスは照れくさそうに笑った。




 「私の知っている一番大きいものは宇宙だけど、アリスちゃんはもう大きすぎて宇宙も比べものにはならないわね」


とさやか。


「あら、そういえばさやかちゃんの宇宙は大きい方だものね。でも小さい宇宙というのもあるのよ」


リーリスが返した。


「そうなの?」


「無数にある宇宙の中には、いろんな宇宙があるのよ。私が行ったことのある宇宙で一番小さい宇宙は、直径1光年に満たないわね」


とリーリス。


「直径1光年より小さい宇宙なんて、私には最小の状態でも入れないわね。外から見るだけだわ。間違えたら潰しちゃうわね」


「さやかちゃんやアリスちゃんから見ると変わった宇宙でしょうね。大地を生み出し、その世界の人間たちを創造したのは『地元の神々』ね。平面の大地と海が中心に浮かんでいていくつかある月と太陽と惑星がその周りを周っているわ。星々は宇宙の果ての壁で輝く光の点なのよ。ちなみに学べば魔法も使えるわよ」


「天動説が正しい宇宙があるなんて思わなかったわ…。地元の神々?」


「そう、宇宙によっては『神々』が実在する宇宙もあるの。神と言っても、私たち、多宇宙を渡り歩く女神とは別の存在よ。私たちやサイズ変更能力者の人たちよりも格は下の存在ということになるわね。会話の中で私たち女神と区別がつくように『地元の神々』とか『地元の女神』とか『地元の男神』とか呼んでいるわ」


「サイズ変更能力者の人たちは神様たちより上なの?」


「サイズ変更能力者の人たちは非常に強力な存在なのよ。望めば都市や国、世界の一つや二つ簡単に滅ぼせるくらいには強力ね。女神は無敵と頭ではわかっているんだけど、彼らを怒らせたいとは思わないわね。彼らを怒らせた相手がどうなったかちょっと怖い話を聞いたことがあるわ」


とリーリスは言った。


「私はサイズ変更能力者の人たちとは挨拶くらいしかしないからよく知らないわね」


とアリス。


リーリスはその『怖い話』をよく知っているようだ。


さやかは話を聞くことにした。




 リーリスが口を開く。


女神界の案内役である彼女は結構な情報通でもあるのだ。


「そもそも私たち女神は宇宙の法則を完全に超越した存在なのよ。宇宙の外でも問題なく存在できるし、生まれた宇宙と異なる法則の宇宙の中でも問題ないわ。でもサイズ変更能力者はそこまで完全に超越しているわけではないわね。サイズ変更能力はあらゆる宇宙の法則を超越したところにある力で、その力を操るサイズ変更能力者の人たちも宇宙の法則をそれなりに超越している存在ね。宇宙の外では存在できないけれど、異なる宇宙への移動は問題ないわ。けれどそれなりに超越してるだけとも言えるのよ。地元の神々は自分の宇宙の法則にかなり拘束される存在ね。彼らが自分の宇宙の他の宇宙に移動するのは難しいわ」


さやかは思う。


中途半端に超越しているということだろうか?


さやかはさらに話を聞こうとした。


リーリスが続ける。


「たとえば、女神は不老だけど本来ならサイズ変更能力者はそうとは限らないの。でも魔法や科学が充分に発達した世界では、老化も病も完全に克服されているわ」


「多宇宙女神会議のサイズ変更能力者は、女神のテレポート能力を借りれば超先進文明世界に行って、不老長寿化や若返り、あらゆる病の治療を受けるサービスを受けることができるわ。それだけではなく、超先進世界では美容もすごいのよ。サイズ変更能力者たちは超先進世界の美容術で、私たち女神には及ばなくても人間では超絶レベルの美形揃いで最高のナイスバディーを持っていて、赤ん坊よりもプリプリの美肌で不老長寿ね。免疫機能とか内臓とかも色々テクノロジーで強化して、ほぼ病気の心配もないわ。これが多宇宙女神会議が彼らに提供する福利厚生の一つね。宇宙が無数にある中でも、女神と同じくサイズ変更能力者は非常に希少な存在なの。老化や病で失うのは勿体無いの」


さやかは先ほどのサイズ変更能力者の一人の多宇宙女神会議は本当にありがたいという言葉を思い出した。


「怒らせると怖いっていうのは?」


「能力者であることを隠して、普段女子学生として過ごしているサイズ変更能力者がいてね、彼女、ある日、鉄道で通学している時痴漢にあったのね。怒った彼女は相手の男をまず人形サイズに縮めて、鞄の中に閉じ込めて鉄道から降りて道端の適当な草むらに連れて行ったわ」


「それで?」


さやかは痴漢に同情する気にはなれなかったが、この時点で痴漢がどんな恐ろしい目に遭わされたのか気になって続きを促す。


「そこからさらにありんこサイズまで小さくして…、それでこの話はおしまい」


「終わりなの?」


「終わりよ。ありんこサイズの痴漢を草むらに放置してそれでおしまい。それから痴漢がどんな運命を辿ったのかわからないわ。誰かに踏み潰されたか、虫か小動物にでも食べられたのか…。野垂れ死したかもしれないけど、案外今でもしぶとく生き延びて、ありんこ生活しているかもしれないわね。ああ、ちなみに最後に痴漢に言った言葉はこうだそうよ『私のお尻は高くつくのよ』」


さやかは(人間のままの)自分がありんこサイズに縮小されて、おそらくは森林のように見えるようになった草むらでサバイバル生活をすることを想像してみたが、生き延びれる気はしなかった。




 「…怖いわね」


「怖いわよねぇ。ちなみに多宇宙女神会議は他人の宇宙には不干渉不介入というのが原則ね。女神が自分の支配する世界でどんな暴政や大殺戮を行っても、サイズ変更能力者が自分の宇宙で何をしたとしても、誰も何も一切咎めたりはしないわ。実際、サイズ変更能力者には都市を丸ごと縮めて、自分の部屋にインテリア兼ペット兼おもちゃとして飼っている人もいるわ。ちゃんと(?)自分の祖国と険悪な関係の国の都市を選んで縮めたそうよ。結構愛国者なのかしらね? 女神が君臨する世界は、全世界の人間がみんな、『世界は女神様の所有物。我らは使わせてもらっているだけ』とか『我ら人間は女神様の元みな平等』とかそんな意識を心から自然と共有するようになるので、治安は向上し格差は減り、国家間の軋轢も社会のあらゆる問題が少なくなる傾向にあるわ。ある意味、女神は存在しているだけで世界に貢献しているわね。さやかちゃんの星も、私の見るところ数十年後には一つの政府の元に統合されるんじゃないかしら。戦争は歴史上の知識だけのものとなるわね。でもサイズ変更能力者はそんな人間を魅了する力はないからね。彼らの世界には普通に国家間の軋轢もあるの」




 さやかはそれを聞いて喜んだ。地球の抱える諸問題はこれから解決に向かうようだし、そこに自分の貢献もあるのである。


別にさやかはいるだけで、何か努力したわけでもないのだが貢献は貢献だ。


 


 「都市を縮めた子だけど、縮めた都市の放送局に圧倒的に巨大な自分を映させて、それをリビングの受像器の大画面で観るのがお気に入りだそうよ。縮小都市の住人はもうその子に降参して服従しているそうね。自分を女神様として崇めているって言ってたわ。縮小都市ではたまに女神様を讃え、怒りを鎮めるお祭りが行われているそうよ。たまに指で縮小都市をつついたり、小物を落としたりして殺戮するんだけど、その有様を映した縮小人間視点での動画を再生するたびになんとも言えない優越感があってたまらないそうね。縮小した都市を破壊して遊び尽くしたら、また新しく対立国の都市を縮小するつもりって言っていたわ」


「そういえば、暑い日が続いた時に、『私が暑い中汗だくで外を歩いてきたのにいつも冷房の効いた部屋の中で飼われていてずるい』とかいう理由で縮小都市にドライヤーでたっぷりじっくり熱風を浴びさせたこともあったそうよ。大勢の縮小人間が熱中症で倒れたみたい、って縮小都市の放送局がニュースにしていたそうね」


「そう…他には、縮小都市に虫を放つという遊び方があるそうね。縮小都市にとって、虫は大怪獣よ。大怪獣の殺戮と破壊を放送局に放送させて楽しむのね。もし縮小都市と一緒に軍事基地が付いてきた場合さらにお得だそうよ。軍隊VS大怪獣の戦いを放送させて、リビングの大型受像器で楽しむの。軍隊がいない縮小都市の場合、警察だけじゃ大怪獣の虫に対応できないから、『街を守る女神として私がちゃんと潰してあげてますっ! 私って優しいですよね!』って言ってたわ。縮小人間たちは指先だけで大怪獣を捻り潰す、都市を支配する女神の強大な力を目の当たりにして改めて服従の念を強くしたそうね」


「水槽に入れて飼っている縮小都市におしっこしたこともあったそうね。放送局員からの最後の放送は、『ここまでおしっこが迫ってまいりました。お別れです。皆さんさようなら!』だったと聞くわ。都市はおしっこに水没して一人残らず滅んだそうよ。滅んだ都市はおしっこごとトイレに捨てられて、対立国からまた新しい都市を縮小したそうね」


「縮小都市にうんこをしたこともあったそうね。放送局は都市の中心に聳え立つ巨大なうんこを写しているのがおかしかったそうよ。自分のうんこですらビルより遥か高く聳え立つ縮小人間たちのちっぽけさと惨めさが愉快で愉快で仕方ないそうね。放送局によれば、都市中がうんこの匂いに覆われたそうね。うんこの下敷きになって多くのビルが潰れてたくさんの住人が死んだけど、おしっこと違いうんこが都心に聳えているだけでは都市全体は滅ばないわ。自分の部屋にうんこの匂いがするのはいただけないからって、縮小都市を入れている水槽のそばにちゃんと消臭剤をおいたそうね。数日後にはちゃんとうんこを取り除いてあげたって言っていたわ。『縮小人間は無力すぎて私のうんこすらどうすることもできないのですよっ。ホント、ちっちゃいって惨めですねっ!』って本当に楽しそうだったわね」




 さやかとアリスは縮小された都市ごとペット兼おもちゃとしていたぶられる自分を想像してみた。


たとえば都市の遥か上空から落とされるビルより圧倒的に巨大な10円玉とか。


それに易々と粉砕されるビル群。


そこで瓦礫の下敷きになって、恐怖と苦痛を味わいながら死ぬ自分。


都市の上空に現れる巨大な手に持たれた巨大ドライヤー。


そこから囂々と吹き付ける熱風。


じわじわと体温は上昇し熱中症になり意識を失い倒れる自分。


怪獣サイズの巨大虫に捕食される自分。


虫はなんだろう? 蜘蛛だろうか、カマキリだろうか、ゴキブリだろうか。


自分は全長数百メートルの巨大ゴキブリに食べられて死ぬのだろうか。


都市の上空を支配する巨大性器。


そこからほとばしる膨大なおしっこ。


おしっこが命中した場所のビルは、その超水流に易々と粉砕されただろう。


逃げ場のない水槽の中で自分はおしっこに溺れて微生物として死ぬのだ。


天空を支配する巨大尻。


巨大なお尻の穴から現れる、悪臭漂わせる茶色の塊。


遥か天空から落ちてくる巨大な茶色の塊。


巨大うんこが地面に落ちた時に大地に衝撃が走る。


巨大うんこの直撃を受けたビルは粉砕され、衝撃だけで直撃を受けなかったビルも傾く。


巨大うんこは落下した地点の周囲のビル群を見下ろし悠々と聳え立ち、悪臭を放つ。


巨大うんこの落下から辛くも生き延びた自分は、山岳サイズの巨大うんこを見上げ、悪臭に包まれながら、屈辱に塗れつつそれでも今日を生き延びるために、泣きながらうんこの匂いを嗅ぎつつ、吐き気を催しつつご飯を食べるのだ。




 「「何それ怖い」」


さやかはこの時点で、地球でどんなに気に食わない人間に会うことがあっても絶対にサイズ変更能力者に縮小させることだけはしないと密かに心に誓っていた。


もっともさやかは相手が普通の人間ならおおむね上手くやっていける娘であったし、常軌を逸脱した困った相手との遭遇経験もなかったので、縮小していたぶりたい相手など最初からいないのだが。


「他には、もう少し大きめのサイズに小さくした大勢の人間をペットとして飼っている子もいるわよ。普段は世話を楽にするためと逃げられなくするため身長3センチ程にしているそうね。部屋に昆虫飼育用ゲージをいくつも置いて飼っているそうよ。気まぐれでもっと縮小したりしてあそぶことはあるけれど、優越感を感じるにはサイズ差は重要だそうで、3センチより大きくすることはほとんどないそうよ。サイズ変更能力者が縮小人間で遊ぶには優越感が大切だそうね。私たち女神はみんな等しく不老不死で無敵だわ。最大のアリスちゃんでも最小のさやかちゃんを捻り潰したりはできないわよね?」


そこにアリスの声が響く。


「さやかちゃんなら逆に指一本で、私をよがり狂わせて快楽のあまり悶絶させることは簡単でしょうね。大きければ偉くて強いというのは女神でなくて人間の感性ね。でもサイズ変更能力者はそのあたりは人間の感性で判断しているみたいね」


「遊ぶって何するの?」


「性のおもちゃとかもあるけど他にも色々あるようね」


これもまたサラリとリーリスは答えた。




 「巨大な指を近づけて潰す潰すと追いかけ回して逃げ惑う有様を楽しむこともあるって聞いたわ。真剣に逃げないと面白みがないからという理由で何人かは本当に捻り潰すそうよ。女神にはできないわね。女神が人間たちに同じことをしても、人間たちはどうぞ我々を潰してくださいませ女神様と随喜の涙を流しながら喜んで大人しく潰されるだけだわ」


「潰したことあるの?」


リーリスは答えた。


「仕事でならあるわよ」


「仕事?」


「私の世界では死刑囚は最後の慈悲として、死に方をかなり自由に選べる決まりがあるの。あと、死刑囚は他に、最後の慈悲の一つとして、最後の晩餐としてどんな美食でも望みのままに注文することができるわね。私が女神に覚醒する前はほとんどの死刑囚が薬殺による安楽死を望んでいたそうよ」


「でも私が女神になってからは、死刑囚は私に処刑されることを望むようになったわ。私は世界を支配する女神としての仕事として、死刑囚の死刑執行も引き受けているの」


「最初に処刑した死刑囚は、私に処刑されるならどんな死に方でもいいみたいだったから、間違っても苦痛がないよう一瞬で済ませれるよう身長を1650メートルまで大きくしてから、女神に処刑される喜びで涙を流す彼を一思いに思いっきり踏み潰したわ。一瞬で彼は私の靴の裏で赤いペーストになったわ。刑務官が私の靴の裏と地面から彼の亡骸をスコップでこそぎ剥がして棺に入れている様子は今も思い出せるわ。次からの死刑囚はもっと細かく殺され方の望みがあるようになったわ。変わったところでは私に食べてほしいというのがあったわね。噛み潰されるか、丸呑みにされるかどっちがいいか尋ねたら、ねっちり口の中で弄んだ後丸呑みにしてほしいという願いだったわ。脆弱な人間である死刑囚を、噛み潰さないように、舌の力で潰さないように、唾液で溺れたりしないように口の中でもぐもぐするのには全神経を集中させる必要があったわ」


その情景はどのようなものであったのだろうか。


女神の超絶的芳香が漂う口の中。


舌先や歯の一本ですら人間を魅了する美しさの女神の口の中。


その中で圧倒的な力の舌で弄ばれるのだ。


人間には想像を絶する体験であろう。


「その甲斐あって彼は、飲み込む直前まで私の口の中で元気でいてくれていたみたいだったわね。よくわからないけど。少なくとも潰しはしなかったし、多分怪我もしなかったと思う。10分くらいは口の中でもごもごしてたわ。流石にそろそろもういいだろうと、舌で一気にのどの奥に追いたて飲み込んだわ。彼のあげた、かすかな喜びの声が私の喉の奥に響いたのは未だ覚えているわね。私たち女神が食べたものがどうなっているのか誰もわからないから、彼の最後の気分がどんなものかちょっと想像できないけどね」


「そうなんだー」


さやかは自分が地球の死刑囚に、色香で全身を精液にして溶かして処刑してほしいと懇願されるさまを想像してみた。


すぐにさやかは考えるのをやめた。




 「それでサイズ変更能力者の話に戻るけど、適当なサイズに縮めた人間を食べることもあるみたいね。先ほども話したように、同じことをしても、人間は女神相手なら喜んで食べられるわ。もちろんサイズ変更能力者の場合は普通に怖がられるし嫌がられるわね。縮小人間はサイズ変更能力者の口の中から逃れようと、飲み込まれまいと噛み潰されまいと、全力で暴れるそうよ。もちろんどんなに暴れても、サイズ変更能力者の舌の力にあがらうことはできないし、口の中から逃れるなんて無理ね。その有様が滑稽で楽しくて楽しくてたまらないそうよ。あんまり大きいと飲み込むのに苦労するし、小さすぎても口の中でもがく有り様を感じられなくて面白くないから、適正サイズは最大で50分の1から最小でも1000分の1くらいだそうね。1000分の1の縮小人間は一度に数百匹くらいまとめて口の中に入れて弄ぶって聞いたわ。あとは、縮小人間は噛み潰すと美味しくないので丸呑みが基本だそうね。生きたまま飲み込んだ縮小人間が胃の中で蠢く有様をお腹で感じるのもまた乙なものだそうよ」


そこでアリスが怖そうに口を挟む。


「女神が食べたものがどうなるかわからないけど、サイズ変更能力者に丸呑みにされたら、当然、普通に胃の中で消化されてゆっくり溶かされて…死ぬわよね? ドロドロの亡骸は吸収されて残りはうんこだよね?」


リーリスの話に聞き入っていたさやかとアリスは、自分が巨大な胃袋の中に閉じ込められ酸っぱい匂いのする胃液に浸かりじわじわ溶かされ死んでいくありさまを想像していた。


死体はもちろん、うんこにされるのだ。


茶色の悪臭放つ塊だ。


さやかとアリスは想像力豊かに、うんこになった自分までも想像していた。


なお彼女らの想像の中で、うんこになってもなぜか意識はあった。


想像なのでなんでもありであるのだ。


意識を持ったまま激痛の中ドロドロに溶かされ、やがて意識のあるうんこになる自分…。


そして意識あるうんこである自分はサイズ変更能力者のお尻の穴から便器にひりだされ、下水に流されるのだ。


もっとも女神やサイズ変更能力者の故郷世界はさまざまだ。


もしかしたら文明によっては水洗ではなくぼっとん便所とかおまるが現役かもしれない。


意識あるうんことして便槽やおまるの中で膨大な量の他のうんことおしっこの混合物の中を揺蕩うのだ。


サイズ変更能力者の黒い面は、無敵であり不滅の女神であるさやかとアリスにも恐怖という感情を沸き起こさせるものがあるようであった。


超巨大女神であるアリスにとってはサイズ変更能力者はそれこそただの微生物程度の存在であり、恐れる必要など何一つ無いはずなのだが、人の心の闇への恐怖は女神とて感じるのである。


とはいえこういう言葉もある。『怖いもの見たさ』


さやかとアリスはリーリスの語る『本当は怖いサイズ変更能力者たち』の話に引き込まれていた。


あるいは『本当“に“怖いサイズ変更能力者たち』かもしれないが。




 「私もサイズ変更能力者の全てを知っているわけではないわ。生きたままじゃなくて、ちゃんと料理して縮小人間を食べることもあるかもしれないわね」


それはそれでイヤである。


さやかとアリスは、その言葉に自分が生きたままフライパンで炒められたり、煮えたぎった油に放り込まれて生きたまま揚げられたり、あるいは生きたまま熱湯で茹でられたり生きたままグリルでこんがり焼かれたりという有り様を想像し背筋が寒くなった。


いや、縮小されたら生きたままレンジでチンもありうる運命である。


たとえばバターを塗った巨大なパンの上に乗せられてオーブンで(生きたまま)焼かれるというのはどうだろうか。


生きたまま巨大な串に貫かれて、そのままタレを塗られたり塩胡椒をふられて炭火で焼かれて焼き鳥ならぬ焼き縮小人間とかもあるかもしれない。


サイズ変更能力者が刺身が好きならどうなるだろうか。


活き造りにされるという運命もあるかもしれない。


縮小された自分は生きたまま、内臓を傷つけないように肉を削がれ、人型に綺麗に盛られてまだ生きて蠢く状態のまま食膳に給されるのだ。


臭み消しはわさびだろうか、生姜だろうか、レモンだろうか?


あるいは生きたまま巨大な挽き肉器にかけられ挽き肉にされる。


そして刻んだ玉ねぎやパン粉とこね合わされハンバーグにされるのだ。


さやかとアリスの脳裏には縮小人間料理地獄変がありありと浮かんでいた。


元々さやかは「いただきます」の挨拶をきちんとする女の子であったが、物を食べるときには必ず命を捧げてくれた食材への祈りをきちんとすることを改めて誓うのであった。


でも食べることはやめない。


これは女神になっても残る人間の本能なのである。




 さやかとアリスが存分にその想像力を発揮したことを感じたリーリスは話を続けた。


「あとはそうね…、子供って残酷よね? 虫の足を遊びでちぎったりするよね?」


さやかはその時点で次にリーリスがどんな話をするのか予想できたような気がした。


「縮小人間の手足を引きちぎる遊びもあるそうね。もう子供じゃないんだからと思うけど、感情のない虫じゃなくて、自分と同じ感情と心を持った人間の手足を引きちぎってピクピク苦しみ悶えるところを見るのにはなんともいえない愉悦があるらしいわ。自分の指先だけでこれを行えるという全能感みたいな物が心を満たしてくれるのがもうこたえられないそうよ」


「小さすぎると縮小人間の手足をうまく摘めないし、適正サイズは3センチくらいだそうね」


さやかは歴史の授業の時間に教師が話してくれた、牛裂きの刑の話を思い出していた。


「まあ、今の日本は憲法36条で拷問と残虐刑の禁止を明記していますし、牛裂きの刑なんてどんなに間違っても絶対有り得ませんよー」


とその教師はゆるい口調で話していたものである。


「縮小された人たちってそんなに何か悪いことでもしたのかしらね?」


縮小人間のあまりに残酷な運命…、まさに地獄の責め苦と言うのにふさわしい運命にさやかは思わず尋ねた。


能力者の祖国の対立国の国民だったという理由で地獄行きの裁定をされては誰もたまったものでは無いが。


なお、さやかの頭にリーリスの最初の話に出てきた縮小されて放置された痴漢は入っていない。


さやかも女の子として痴漢は許せないのである。


痴漢は大罪だ。


死刑は当然といえよう。


もっともさやかには痴漢被害にあった経験はないし、そもそも縮小しなくても「この人痴漢です」の一言で相手の人生は終わるのではなかろうか。




 「私もそこまでは聞いたことはなかったわね。そこらへんのなんでもない人を適当に縮小しているのか、あるいは刑務所の囚人とか犯罪者とかを選んで拐って私的制裁でもしているのか…。ちょっとわからないわね。サイズ変更能力者もいろいろいるから、そのあたり人によるかもしれないわ。今度聞いてみる?」


(でも私的制裁も犯罪よね)


さやかは思った。


ただし痴漢はさやかの知ったことではないが。


「ちなみに力任せに手足を引っこ抜く派と捻じ切る派があるみたいよ」


なんだかんだと色々詳しい、情報通のリーリスであった。


さやかとアリスは、その辺を歩いていると突然縮小されて拉致され、生きたおもちゃとして手足を引っこ抜かれてピクピク蠢きながら死んでいく自分を想像した。


死体は多分虫サイズのままゴミ箱にでも捨てられるのだろうか。


縮小された自分の死体にとって、周りのゴミは凄まじい大きさだろう。


彼女たちは想像力逞しい女の子たちなのであった。


さやかとアリスは次に、サイズ変更能力者に挨拶するときどんな顔をしようか困惑していた。


さやかは女神になりたて数週間の新米女神だ。


アリスはその圧倒的巨大スケールに対応できるサイズ変更能力者がいないので、サイズ変更能力者に依頼することは全くない。


そしてさやかは最小の女神だ。


巨躯の女神たちの中ではものすごく小さい。


さやかのサイズの物品を用意するのには、人間社会で普通にお金を払えば済むのであり、サイズ変更能力者に依頼することは今後まずないだろう。


さやか、アリスとサイズ変更能力者たちは顔をあわせたら挨拶するくらいの関係であった。


女神はサイズ変更能力者の絶対的上位者のはずであり、なんなら無視しても問題ないはずではあるのだが、社会的一般的常識として、人間関係の基本としてさやかもアリスも誰に対しても少なくとも挨拶だけはきちんとするよ派であるのだ。




 「他には闘技場ごっこという遊びがあるそうよ。縮小人間と同じくらいの大きさの虫とかをどちらか死ぬまで一対一で闘わせてその有様を見物するそうね。私にその話をしてくれたサイズ変更能力者は、虫VS縮小人間の試合を撮影した動画記録がすでに100本を超えているらしいわ。縮小前は結構なガタイのいい屈強な男だったのが、今は私の指先で捻り潰せる虫相手に命懸けで闘っている有様が楽しいですよって。虫の大きさにも結構差があるから縮小人間の適正サイズは様々ね。もちろん(?)相手は虫とは限らないわよ。縮小人間VS縮小人間の試合もあるそうね。闘わなければ両方指先で捻り潰すそうよ。闘いで負けた方はもし命がまだあったら指先で捻り潰すの。生き延びた縮小人間は次の試合まで待機だそうよ」


「性のおもちゃにする場合もあるわね。適当なサイズに縮小した人間に自分の性感帯を刺激させるの。小さすぎると刺激が少なくなるけど優越感は味わえるって言っていたわね。でも視認できるサイズであることは基本だから、最小でも1000分の1くらいだそうね。1000分の1サイズの場合は性感帯や性器ですりつぶされて消費されることが多いわ。生き延びれるチャンスは少ないわね。必ずすりつぶすというわけでもないそうだけど。性のおもちゃにするには結構大きくする場合も多いそうよ。10分の1くらいの大きさもありみたいね。優越感にはサイズ差が大切って言う理由で虫サイズ以下が縮小人間遊びの基本らしいから珍しいわね。この場合は比較的安全(?)な遊びで、たまに巨大な膣で締め付けられて膣内で死んだりすることもあるけれど、生き延びれる可能性は割と高いそうね。どのみちいつか死ぬそうだけど。死んだらありんこサイズに縮めてティッシュに包んでゴミ箱いきね。トイレに流すこともあるみたいよ」




 「別に縮小するだけが能でもないわね。サイズ変更能力者の中には、逆に能力で自分が巨大化して、圧倒的巨大男神や巨大女神として自分の世界を支配している人もいるのよ。そもそも今までも話したように、サイズ変更能力は人間には逆らいようもない超強大な異能だわ。能力を秘密にして市井に生きる人もいるけど、能力を大々的に見せつけて自分の世界を支配する能力者もいるの。人間たちは私たち女神を見ると自然に崇敬の念を抱き、平伏するけれど、でもサイズ変更能力者はそんなことはできないから、力と恐怖による支配になるわね。サイズ変更能力者は女神と違って呼吸が必要だから、あまり巨大化すると上空の空気が薄いから呼吸するのが難しくなるの。身長数キロならともかく、10キロメートル近くになると呼吸が難しくなるわ。肺の中の酸素を巨大化能力の応用で増やして、二酸化炭素を縮小能力の応用で処理しているそうよ。そこまでして巨人として君臨したいのかしらね」




 「あとはそうね、マフィアのボスになって、金と暴力で人を支配しているサイズ変更能力者もいるわね。敵対した相手は誰であれ、ありんこにして踏み潰せるからほぼ無敵よ。一度ちょっと縮小人間の恐ろしい運命を見せつけたあとちょっと縮小してみるだけで、どんな荒くれでも屈服して涙ながらに忠誠を誓うそうよ。銃で撃たれても、能力の応用で、飛んでくる銃弾を自動でケシ粒サイズに縮小して無効化するということができるみたいね。食べ物に毒を入れられても、毒成分だけ自動で縮小して無毒化できるそうよ。サイズ変更能力の応用法は本当に数あるみたいだわ。まぁ、暗殺の不安はほぼないみたい」


「多宇宙女神会議がサイズ変更能力者の人たちに払っているお給料はものすごいから、何もせずに市井に隠れていても普通に贅沢三昧毎日豪遊で好き勝手に遊んで暮らせるはずなんだけど、どうしてわざわざ面倒な手間ひまかけて支配者になりたがるのかしらねぇ。私たち女神にとっては人間たちが我々を支配してくださいませって言ってくるのが当たり前なのでかえってちょっとわからないわね」


とリーリスは続けた。




 「私の世界ではお金は歴史上の知識だから、サイズ変更能力者のお給料がどんな物だか実感持てないけどね」


とアリスがこたえる。


「そうなの?」


とさやか。


「私の生まれた世界では、人工知能やロボット工学、産業ナノマシン工学といったさまざまな技術分野が発展して、社会の維持も生産活動も完全な自動化がなされているのよ。子育てや教育も教育AIとアンドロイドがやるわね。人間が働く必要があったのは、もう歴史で勉強する遠い昔の話で、今では2割くらいの人間は自己実現のため研究者として学問に打ち込んだり、創作者として芸術や娯楽制作、各種創作に打ち込んだり、何か生産的な行動をしない8割くらいの人も消費者として誰かのそれらの成果を消費して評論したりして好き勝手にそれぞれに幸福に人生を送っているわ。貨幣制度も歴史で習う過去のものよ。老化も病いもみんな昔話ね。そういえばスポーツは昔、自分で遊ぶのも見るのも重要な娯楽だった時代があったそうだけど廃れたわ。サイバー技術が発達したため誰もが容易く最高の肉体パフォーマンスを発揮できて、スポーツ技能も練習なんかしなくてもネットから技能ソフトをダウンロードして脳内にインストールすれば誰もが簡単にトップアスリートになれるようになって、今は誰もわざわざ練習してプレイしようとはしないわ。平面の画面に投影される映像を、手で操作するコントローラーで操って遊ぶレトロなゲームにはスポーツを題材にしたものも結構あって、これは趣味の人によくプレイされているみたい。私の世界に残るスポーツの残渣ね」


とアリス。


「私の世界ではスポーツ観戦やプレイは結構重要だけどね。大金が動くし、トップ選手は大スター。高校では体育の授業は必修よ」


とさやかは答える。


「私の世界もその辺りはさやかちゃんの世界と同じね」


とリーリス。


(アリスちゃんの世界っていいわねー。スポーツがないのはどうかと思うけど)


どうやらアリスの生まれた世界は結構な超先進世界のようだと思ったさやかは素直にちょっと羨んだ。


「まぁ、私の世界はリーリスちゃんの世界と違って一つの惑星上でちまちましているんだけどね」


「そうなの?」


そこでリーリスが口を開く。


「宇宙は無数にあり、その法則も様々よ。私の世界の法則では、魔法こそ存在しないけど、結構ゆるい法則の世界なの。超光速航法や超光速通信とか、人工重力とか色々、科学者と技術者が頑張れば実用化できたわね。さやかちゃんとアリスちゃんとキャロールちゃんの世界は無数にある世界の中でも、とっても人間に厳しい法則の世界なのね。私の鑑定では、超光速航法も超光速通信も、実用的な人工重力装置も、機械技術ではどんなに進歩しても実現は無理ね。魔法もないわね。核融合の実現へのハードルも、私の宇宙はさやかちゃんやアリスちゃんの宇宙よりずっと低いのよ」


「鑑定って?」


「そういえばまだ言っていなかったかしら。私、女神界では案内役女神で通っているけど、正確には鑑定の力を持つ女神ね。私はどんな女神でも、どんな特性を持つか、特別な宿命を持つならそれも見通せるわ。人間でもひと目見ればどんな資質をもっているのか、どんな人間なのか見抜けるの。それだけでなく、たとえば美術品や骨董品をひと目見れば真贋も、適正価格もお見通しよ。企業の社屋や社員を見れば、社風も将来性もわかるわ。予知能力じゃないから、なんらかの不慮の事件で株価が下がったりするようなことはわからないけどね。土地を見れば適した農作物とかもわかり、何か有用な資源があればそれもひと目でお見通しよ。他の文明の都市をひと目見れば、どんな文明なのかだって鑑定できる。他の宇宙の法則だって大体なら鑑定できるの。まぁ、人間が想像できる大体のものなら、ひと目で見抜けると思ってくれればいいわね」


「リーリスちゃんすごい!」


さやかは思わず声をあげた。


「うふふふふっ」


褒められてリーリスは微笑む。




 「そんなわけで、私の世界は人間たちが恒星間宇宙に進出して、幾つもの居住可能惑星に植民しているの。今では数十個くらいになっているわね。人口密度はさやかちゃんやアリスちゃんの世界より低いと思うわ。でもさやかちゃんやアリスちゃんの生まれた世界みたいにコンピュータ?とかネット?とかはまだないのよ。ただ、この間、どこかの惑星の研究施設で、最初の真空管式計算機が試作されたって聞いたけどね」


世界によって技術の進展具合は異なるのであるようだ。


まぁ、そんな世界もあるのだろうとさやかは納得する。


自分の世界にないものを挙げるのは女神の無敵の語学力を以ってしても難しいようで、コンピュータやネットという単語を口にするときリーリスはぎこちなかった。


とはいえさやかも日本という漫画やアニメ、ゲームが盛んな国に生まれ育った娘である。


SF世界を漠然と想像するくらいはできる。


「コンピュータ無しに宇宙航法ができるのかしら?」


「歯車仕かけの機械式計算機と計算尺でなんとかやっているわ。なんならそろばんもあるわよ? 機械式計算機は高価だし、そろばんは事務仕事をするには今の所必需品ね。私も女神になる前、人間の子供だった時には学校の算数の授業でそろばんの練習をしたものよ。とはいえ宇宙航法計算は大変だそうね。専門の訓練を何年も受けて国家資格を取ってはじめて宇宙航法士としてやっていけるのよ。宇宙航法士は結構な難関職ね。安定した仕事で高給取りよ」


「でも、コンピュータの進歩ってものすごく早いよね? 最初の真空管式計算機ができたのなら、宇宙航法士はそのうち誰でもできる仕事になっちゃわないかしら」


「さやかちゃんの世界のコンピュータはもの凄いし、アリスちゃんの生まれた世界はそれに輪をかけてさらに凄いからね。私の世界の文明もそんな技術への第一歩を踏み出してくれて嬉しいわ。まぁ、ちょっとミスがあれば、大損害や大事故を起こすかもしれない重責ある職だし、当分の間は難しい試験を必要とされる難関職であり続けるんじゃ無いかしらね」


さやかは自分がリーリスの世界の人間だったら宇宙航法士を志望するべきかやめておくべきかちょっと悩んだ。


さやかは人のことでも自分だったらどう思うかと自分ごとのつもりで考えてみることのできる、よいこだったのである。


なおアリスも同じことを考えてみたのだがさやかの心配はよくわからなかった。


彼女の生まれた世界ではそういったことは全て人工知能がやるからであり、職業というのは全て歴史上の知識なのであり、どうにも実感が湧かないのであった。


「私は大きすぎて、生まれた世界と直接交渉を持つことはもうあまりないけどね。でも私は私の生まれた世界が好きよ。できれば私の生まれた世界もなんとかして恒星間宇宙に進出して欲しいわね」


とアリスは言った。


さやかもそれは同感だった。


地球人にもいつか恒星間宇宙に進出して欲しいのである。


リーリスの世界の文明が実現した巨大な可能性がちょっと羨ましいさやかであった。




 「女神やサイズ変更能力者の出身世界はさまざまだけど、一番特異なのはガーちゃんの世界ね」


リーリスが話す。


「ええ、ガーちゃんの文明は特殊ね」


アリスが応える。


どうやらアリスも『ガーちゃんの文明』について知っているようだ。




 「ガーちゃん?」


思わず口を挟むさやかにリーリスは応えた。


「ガーちゃんは文明の女神と呼ばれている女神よ。さやかちゃんについで小さい女神で身長は18メートルほどね。実際の特別な力はその呼び方と関係ないけど、女神の間ではまぁ、文明の女神で通っているわね」


「どう特殊なのかしら?」


「ガーちゃんの世界は穴居人で石器時代だったの。人間は世界の片隅に生息する賢い猿くらいの生き物の時代ね。人類の最高技術が石を叩いて作る打製石器だったわね。女神として覚醒した彼女を迎えに行ったとき、あまりに原始的すぎてまともな言語すらなくて意思疎通が大変だったわ。女神は語学無敵のはずなんだけどね。まともな単語も文法もないの。ガーちゃんって呼び方も、原始的すぎて名前という概念がなかったので私がつけたのよ。彼女は最初に会った時ガーガー唸っていたからガーちゃんね。女神になって巨大な体になって戸惑っていたわ。多宇宙女神会議について説明しようとしたけど、女神という言葉すら無いし、宇宙なんて概念もないし会議の概念もないわね。まずはガーちゃんの教育が先だと思ったわ」




 「ガーちゃんの教育には私もちょっとだけ協力したのよ!」となぜか嬉しそうにアリスが口を挟む。


「アリスちゃんには、原始人がすぐ簡単に覚えられて、完全に洗練された文法を持ち、なおかつ後々超高度文明が発達しても無理なく拡張可能な、時間経過や地理的断絶で変化しにくい、完璧に洗練された完成された人工言語の設計をお願いしたの。今ガーちゃんたちの文明が使っている言語よ」


さやかはアリスが知性にも特化した女神であることを思い出した。


アリスは大きくなれば大きいほど知性も増し、最小の状態でも通常の女神の904,6256,9716,6532,7767,4664,8320,3803,7428,0103,6717,5520,0316,9065,5826,2375,0618,2132,5312倍の知性を持つのである。


人工言語の設計くらい簡単な仕事であるのだろう。


「ちなみに教室はアリスちゃんの右眼ね。アリスちゃんの涙の海に浸かりながら、進んだ文明の持つ概念と言葉を私が先生役で教えたわ。あとは簡単な算数も教えたわよ。数を数えられない相手に物を説明するのはどれだけ苦労するか、想像できるでしょ? ガーちゃんにとってもアリスちゃんの眼は楽園のような場所よ? 嫌がらずに授業を聞いてくれたのは助かったわ」


「うふふふふ」


アリスは嬉しそうに笑った。


自分が他の女神の役に立てるというのが嬉しくて嬉しくて仕方ないらしい。


強力な生物は高い知能を持たずとも生きていける。


絶対無敵の強者である女神はどんなに高い知性を持っていてもそれを発揮する機会は少ないのである。


アリスがその知性を発揮する数少ない機会が『ガーちゃんのための人工言語の設計』なのであった。


「そうそう! 文字も私が設計したんだよ! ちゃんとどんなに低い文明発展度でも大丈夫なように、地面に指でも無理なく書ける、簡単で、それでいて互いに間違いようのない文字にしたんだからね!」


アリスは得意げに言った。


「ほんと、あの時にはアリスちゃんには助けられたわね」


とはいえやはり一番の功労者は、案内役女神だからとボランティアでその役目を買って出たリーリスであろう。


そのあたりはアリスも認識していて、


「まぁ、一番頑張ったのはやっぱりリーリスちゃんなんだけどね。ほんとリーリスちゃんすごいわ」


と付け加えていた。


さやかは「そーなんだー」と呟くのみであった。


とはいえさやかにも知的好奇心というものがあるのである。


女神ガーの話をもっともっと聞きたい。


さやかは思わず次の話をせがんでいた。


「そしてどうなったのかしら?」




 リーリスは女神ガーの話を続けた。


「女神はもともと語学万能よね。その女神が真面目に勉強するのよ。ガーちゃんはものすごい勢いでアリスちゃん謹製人工言語を覚えていったわ。出身世界が原始的なだけで、決してガーちゃんは頭が悪いわけではないの。そして他にもガーちゃんは色んなことを学んだの。そうね、さやかちゃんの単位だと3、4年くらいかしら。アリスちゃんの眼は色んな女神が訪れて涙に浸かっていくわ。他の進んだ文明出身の女神たちを通じて…、ガーちゃんの世界に比べればどこでも先進文明だけど…、それらの世界が如何に進んでいて豊かであるかを知ったのね。特に、文明によっては星々の海の中に進出を成し遂げていると知って、ガーちゃんは強い憧れを持ったみたい。自分の世界に文明を齎すことを熱望したのね。自分の世界の進歩を可能な限り加速することを誓ったの」


「そういえば、誰か女神の一人が、ガーちゃんに進んだ文明の食べ物の例として砂糖菓子をプレゼントしたことがあったのね。もちろんサイズ変更能力者がガーちゃんのサイズに合わせて調整したわ。ガーちゃんは美味しさに感動して、これは部族のみんなで分かち合わないといけないからもっと無いかと聞いてきたわね。ガーちゃんの考えとして、獲物はみんなで仲良く分かち合うものというものがあるみたいね。その女神は自分の世界に引き返して、ガーちゃんの部族に配れる分だけお菓子を持ってきてプレゼントしたわ。お菓子に感激したガーちゃんは必ずや自分の世界に文明をもたらすという決意を新たにしたみたい」


「文明を築く第一歩は人口の集中だったわ。世界のあちこちに少しづつ散らばって住んでいた人間たちを、私の鑑定で位置を探り出して、女神のテレポート能力で一つの土地に集めたわ。大河の畔、海のそばよ。文明を築くのに絶好の地を、これもまた私の鑑定で見抜いて選んだ最高立地よ」


(鑑定の力って便利ね)


さやかは思った。




 「もちろん今まで洞窟とかに住んでいたような人たちよ? まともな住居の作り方なんて知らないわ。人間たちを集める前に、最初の住居はガーちゃんと私と、サイズ変更能力者が協力して作ったの。女神になる前洞窟に住んでいたガーちゃんは、雨風が凌げて住めればいいくらいに思っていたけど、私と、担当したサイズ変更能力者の人がちょっと悪ノリしたのね。どうせ記念すべき世界最初の都市にして世界首都を作るのなら特別な素材で作ろうと思ったのよ。ちょっとすごいかもしれないわよ?」


「すごいの?」


「すごいと思うわよ」


リーリスの言葉が聞いて聞いて聞いてくれと言わんばかりの響きを帯びたように、さやかには思えた。


「最初は、古代文明の研究にあるよう、加工した適当な石とかレンガとかを素材に、ちゃんと構造とか石組みとか再現した住居の模型を作って、サイズ変更能力で巨大化して住居として、並べて、世界最初の都市を作るつもりだったんだけどね。あっという間に古代文明都市の出来上がりよ? でも、そういうことなら豪華な素材で作ってはどうかと、サイズ変更能力者の人が言ってきたの。面白そうだったから私は賛同したわ」


「住居の素材は見た目の美しさと加工のしやすさを考慮して半貴石が用いられたわ。そうね、ラピスラズリ、トルコ石、孔雀石、メノウ、ローズクォーツ、あと何があったかしら? とにかく色んな石を使ったわ」


「住居の窓には磨いた水晶を嵌め込んだわ。あと天井も一部磨いた水晶を嵌め込んで、天窓として灯りとりにしたのよ。あとは…そうね。暖炉と煙突はあるわよ。寒いと人は死ぬからね。暖房は大切よ?」


「残念だけど、個人の住居に台所と風呂とトイレはないわよ。そこまで加工するのは手間がかかりすぎるし、原始時代では維持できそうになかったから。料理は公共食堂、お風呂も公共浴場ね。トイレも外にある共有のものね。水場も共有よ」


総パワーストーン製の住居ということだろうか。


スピリチュアルな人たちは喜ぶかもしれないとさやかは思った。


「ちなみに都市の基礎は巨大化した18金のインゴットね。まず100gほどの金のインゴットを用意して、サイズ変更能力で加工しやすい大きさまで大きくしてもらったわ」


「そして適当なサイズに大きくした金のインゴットに、厳密な都市計画のもとに決められた道や排水路、水路とかを刻んで加工していったの。都市計画は私の世界の考古学者にやってもらったわ。専門家として原始人でもなんとか維持できるインフラを設計してもらったの。加工したのは私の世界の工場ね。ちゃんと報酬は支払ったわよ? 私の世界の政府には、女神の要望に応えるための特別予算枠があるのよ。女神は特に何も無くても問題ないし、サイズ変更能力者にお願いすれば大抵のものは人間サイズの物品を大きくすればすむだけだから、毎年予算は余って国庫に戻されてるけどね。本当にサイズ変更能力って便利よね」


さやかは人間相手にもWin=Winの関係を持った取引を望んでいたが、女神にとっては自分の世界の政府に一方的に金を出させるくらい容易いのである。




 「そして住居模型と都市の基礎が完成したらガーちゃんの世界に持っていったわ。サイズ変更能力者に予定のサイズまで巨大化してもらったの。地面を平らにして金のインゴットを置いたり、金の土台の上に住居を並べたりするのは私がちょっと大きくなってやったわ。ガーちゃんは街の細かいところを担当したの。数時間もかからず数十万人くらい住める都市が出来上がったわ。黄金の上に築かれた、宝石の都市なんて、ちょっと神話みたいですごいよね?」


「私はガーちゃんの世界の都市は見たことがないんだけどね。私は大きすぎて、他の宇宙に行くとそれだけで大変動になるわ。だから、好奇心はあるんだけど、他の女神の支配する宇宙に行くことは自重しているの。特別な理由があれば別だけど、銀河を移動させるとか潰すとかいう用事なんてないわよね? だから私は他の女神の話を聞くことが大好きよ」


とアリスが言った。


リーリスはどれくらいの大きさになってその作業を行なったのだろうか。


身長数キロメートルもある動く山のような巨大女神が、人間には想像もつかない力で土地を易々と平らにし、巨大な金塊が地面に置かれる。


巨大女神はそして金塊の上に宝石でできた家を指先だけでつまみあげて並べていくのだ。


街の細かいところを担当するのは身長18メートル、千人力の巨大女神だ。


まさに神話的工事と言える情景をさやかは想像し、その場面を近くで見たかったと思うさやかであった。




 「こうして人間たちは一箇所に集められ、暮らすようになったわ。人間は自ずから女神に従うから説得とか説明とかは不要よ」


「それからはまず言葉ね。ガーちゃんが先生役で、毎日街の広場を教室にして、人間に自分が学んだ言葉…アリスちゃん特製人工言語を教えたの。算数も教えたそうよ。円滑な社会運営のためには最低でも四則演算くらいできないとだめよね? 女神が教えれば人間たちは真剣に聞くから、みんな勉強熱心ね。学習は早かったと思うわ。こうして数年で原始世界に洗練された言葉と文字、そして数がもたらされたの。まさに文明への第一歩と呼ぶに相応しいわ」


「数万の人間が、一箇所で採取生活で食べるのは無理じゃないかしら?」


「そうね、農業はやがてもたらす予定だったけれど、ロクな言葉もないんじゃ教えれないし、人間に言葉を教えている最初のうちは、ガーちゃんが女神の力と特権をフルに活用したそうね。ガーちゃんの力は隠蔽よ。なんでも隠せるわ。ちょっと街の外に出て、自分の匂いと音と姿を完全に隠蔽して獲物に簡単に近づいて、身長18メートルのパワーで一撃必殺ね。新鮮なお肉を容易くゲットね」


そこで、リーリスはちょっと考え込んで言った。


「…そうね、ガーちゃんの隠蔽の力を借りれば、さやかちゃんは女神であることを隠せると思うわ。女神は普通は人間と隔絶した巨体だから、そんなことをしても意味はないんだけど、さやかちゃんは別ね。超長身の超絶美少女で通せると思う。誰もさやかちゃんのことを知らない、他の女神やサイズ変更能力者の世界に行って、お忍びで旅行ができると思うわ」


「お忍び! すごいわ! さやかちゃん、まずどんな世界に行くのかしら? やっぱり地元の神々がいて、魔法もある世界なんてどうかしら?」


それを聞いたアリスが自分のことのようにはしゃぎ出した。


あまりにも巨大すぎる故にできないことが、彼女には多いのである。


「うーん、さやかちゃんの次の休みにでも、ガーちゃんを紹介するのはどうかしら?」


さやかにも異存はない。


彼女にも日本に生まれ育って、漫画やアニメ、ライトノベルやTVゲームといったメディアに触れて、魔法の世界への好奇心は大いにあると言っていいのである。


魔法の世界に女神であることを隠してお忍び旅行!


(なんて素敵なのかしら!)


次の冬休みでも、両親の許可をとって旅行というのはどうだろうか?


さやかもワクワクが止まらなかった。


「そうね、お願いするわ!」


「じゃあ次の休みを楽しみにしていてね。そうそう、ガーちゃんの話に戻すわよ。獲物をとって簡単に血抜きして肉を切り分けたガーちゃんは、サイズ変更能力者に依頼して肉を巨大化してもらうの。切り分けた肉を巨大化すれば、一頭の獲物を数万人で分かち合って、みんなでお腹いっぱい食べられるのね」


「お肉ばかりで栄養が偏らないのかしら」


「食べられる木の実を人間たちにあつめてもらって、巨大化してもらって分かち合って食べてたみたいだけどね。でも農耕を始めるまでそれは我慢してもらったわ。最初は直火で焼くのが唯一の調理法だったそうね。いくら原始的でも血抜きくらいはしているけど、あまり美味しいとは思えないわね。まだ調味料なんてなかったしね。塩すらなかったのよ?」


「木を摩擦して火を起こすのは大変だから、火を簡単に起こせる手段はまず他の世界から供給したわね。以前は生で肉を食べることもよくあったそうだけど。キャンプで火をつけるのに使う、ファイヤーピストンを持ち込んだわ。今ではガーちゃんの世界で自作できるようになっているわね。火起こしの道具として一般的に使われているわ」


「都市ではそんな生活が数年続いたわ。生活水準は、まぁ最低だけど、ガーちゃんのおかげで飢えることだけは無くなったそうね。みんながお腹いっぱいちゃんと焼いた肉を食べられるし、雨風は凌げるわね。それまではみんなひもじい思いをしながら、少ない獲物を分かち合っていたみたい。そして十分言葉と読み書きと算術が普及して、知識の伝達と記録が可能になったあたりで、色んな知識が一気にガーちゃんの世界にもたらされたの」


「まずは土器の作り方ね。そして農業もあるわ。あとはそうね、畜産ね。漁業もあるわ。他には金属器もあるわ」


「土器は重要ね。粘土を捏ねて火で焼いて器が作れるわ。元々粘土は結構重要だったのよ? ガーちゃんが読み書きを教える時には生徒は粘土に指で文字を書いて覚えたの。土器があれば水を汲んで貯めておくこともできるし、器に食料を入れて保存することもできるわ。皿を作って食べ物を載せることもできるわね。それまでは食べ物を手づかみだったそうね。それだけでなく、土器さえあれば、食べ物を直火で焼くだけではなく煮ることもできるようになるの。料理の幅がこれだけでも大幅に広がるわ。充分な油さえ手に入れば揚げることだってできるんじゃないかしら? でもまだガーちゃんの世界の食文化に揚げ物はなかったと思うけど。ともかく土器の知識は飛躍的に生活水準を向上させたの。あとはそうね、残すべき知識を粘土板に刻んで焼いたわ。これが世界の最初の本で、世界最初の図書館よ」


さやかは好奇心をそそる話に聞き入る。




「そして? そしてどうなったのかしら?」


「そうね、それなら次は農業の話をしましょうか…。私が鑑定の女神であることは話したわね。植物を鑑定すれば、人間に有用な特性を持つ植物を一眼で見抜けるわ。テレポートで世界を回って人間にとって有用な植物をいくつか見つけたわ。特に、デンプンを大量に含む植物は人間の主食になりうるわ。重要よ? あと油を採れる植物とかも使い道が多いわ。植物油は燃やして照明にも使えるわ。それに油と木灰があれば石鹸も作れるわね。衛生は大事よ? ガーちゃんの世界には魔法はないから、科学に基づく文明の道のりを一歩一歩歩んでいくことになるわね。私たち女神も協力するし、道程は加速されるけれど。魔法がある世界ならわざわざ油をとって燃やして、明かりにしなくても、『明かりの魔法』とかを使えばすんじゃうのよ。衛生だって石鹸がなくても殺菌の魔法とか浄化の魔法とかがあるの」


「そうよね」


地球においても米や麦、玉蜀黍、豆類、ジャガイモなどが主食として人間の文明に大きな存在感を示していることをさやかは思っていた。


「品種改良とかまだ全然だから、食味は良くないと思うわね。生産性もそこまでじゃないと思うわ。それは今後のガーちゃんの世界の人間たちの努力に期待ね。それにまだ栽培されている作物の種類自体少ないわ。いつか、彼らが自分で新しい農産物を見つけ出して、豊かな食文化が花開くといいわね」


「畑は今のところ、盛り畑耕法の一種ね。直線に堀を掘って川から水を引いて貯めるの。その脇に大体0.6メートルほどに土を盛った畑が並行してあるわ。私が上から見下ろしてみれば、直線の堀と畑が互い違いに並んでいるのが一目瞭然よ。堀には水草や藻が繁茂していて、それを肥料にして土を肥やすの。化成肥料なんてまだないけど、農業に肥料は大切だからね。無いなら無いで、なんとかして土を肥やさないとね。他の肥料は家畜の糞と人糞ね。専門の係に任命された者が共通トイレから、糞尿を回収していくわ。彼らはトイレの維持係も兼ねているわね。うんこしたりおしっこしたりしたあとお尻を拭くための干草と木の葉を補充したり、掃除したりも仕事よ。街から離れた場所に作られた肥壺で発酵させて肥料を作っているそうね。ほぼ全ての人間が一つの都市に住んでるんだから防疫は重要ね。トイレや街を清潔に保つのは大切な仕事なのよ。この農法を提案したのは私の世界の考古学者ね。ちなみに畑は私が大まかに作って、細かいところはガーちゃんね」


「化学農薬なんて無いから、私の鑑定で人体に影響のない殺虫成分を多く含有する植物を見つけ出して、それを栽培して農薬兼殺虫剤も作っているのよ。」


「肥料と農薬のおかげで今では、女神が力を使わなくても人間がお腹いっぱい食べられるくらいの収穫はあるわね」


(でも人糞肥料って寄生虫の問題がなかったっけ?)


ふとさやかは思ったが、そもそも野生の肉を生で食べることもあったそうなので、何を今更ではある。


ギョウチュウや回虫で人は多分死なないだろうと思うしかなかったが、ガーちゃんの世界の生野菜は食べたくないわねと思うさやかであった。


とはいえ『文明の始まりの物語』には知的好奇心は大変に刺激される。


さやかとアリスはリーリスの話に聞き入るのであった。




「他にはそうね、塩の話なんてどうかしら。海水から塩を作ることも行われているのよ! 天日塩が主ね。あと藻塩もあるけどこっちはあまりないみたい。作り方は知識としては教えたけど、私たち女神は直接には力を貸してないわね。彼らにできることは彼らにやってもらうわ。人間たちに自分で細部は工夫して頑張って作ってもらったわね。塩は最も原初の調味料ね。塩の無い料理なんてちょっとスイーツはともかくありえないわよね? それだけではないわ。塩があれば食べ物を塩漬けにして長く保存だってできるのよ…。まぁ、魔法世界では保存の魔法で食材の保存も簡単にかたがつくんだけどね? ホント、魔法ってずるいわね。魔法のない世界の文明は色々と大変なのよ」


この場にいる3人の女神は全て科学文明世界の出身なのであった。




「塩を手に入れて、食べ物を塩漬けにすることを知った人間たちは、いろんな食材を塩漬けにして試行錯誤したわ。結果として原初のハムや漬物が生まれたりしたそうね。穀物は器に入れて冷暗所で保管しておけばけっこう持つけど、それ以外の食材も長期保存できるようになったのは大きいわ。まだそこまで作り方が洗練されているわけではないから、たぶんかなり塩からいと思うけど。味はともかくガーちゃんの世界が飢えることはあまりなさそうね。まあ、どうにもならなければ、女神とサイズ変更能力者でなんとか助けるわ。そうそう、干し肉や干し魚、干し貝とかも今では食べられているそうね。食用海藻も採取されてるけど、これも干して保存するのが基本ね。食べ物の長期保存手段は色々試行錯誤されているけれど、塩か干すのが今の基本ね。あと干した食材にはいい出汁がとれるものが多いそうね。食文化が広がるわね」




「漁業も始まったわね。漁船はまだ原始的な丸木舟だけど、木工技術が発展したら、もっと高度な船も作れるようになると思うわ。いつか大陸間を渡れるようになるといいわね。植物を加工して網は作ってるわよ。あとは銛とかが主な漁具かしら。簡単な釣竿と釣り針もあるわね。今のところ、動物の骨とか角とかを加工して釣り針を作っているようだわ。魚は日持ちしないから、新鮮な魚はご馳走扱いだそうね。一度に食べきれない分は海水で洗って干して保存食にしているそうね。お酒のつまみにいいんじゃないかしら? 魚醤もあるわ。小魚の内臓を刻んで塩と壺に入れて発酵させるの。塩に次いで、世界二番目の調味料ね。魚醤を作った時の固形物の余りも、お粥に添えられて無駄なく味付けに使われるそうね。今のところどんな料理にも魚醤を使うみたいだけど、もっといろんな調味料が生まれればいいと思うわ。世界最初の発酵食品でもあるわね。これで彼らは食品発酵の知識を得たことになるわね。実際食べ物をわざと放置して発酵させようという試みが始まっているそうだけれど、大抵は腐るだけね。でも偶然有用な微生物が適した食材に作用して食べられるものが生まれることはあるの。一番の傑作はお酒ね。穀物を発酵させて濁酒を作ることに成功したわ。世界最初のお酒よ。量産可能になれば、そのうち、穀物の貯蔵の一部は酒造りに回されることになりそうね。ちなみに飲酒に年齢制限なんてないから子供も飲めることになるんじゃないかしら。チーズもできたのよ。これからはミルクは保存可能な食品になるわね。次の機会には、ガーちゃんの世界の濁酒で、これもガーちゃんの世界の干し魚にこれもまたガーちゃんの世界の魚醤をつけて、それをアテに一杯飲みたいわね。もちろんサイズ変更能力者に私のサイズに巨大化してもらうけどね」


(リーリスちゃんってのんべなのかしら)


真面目な未成年のさやかはお酒の経験はないのである。




「畜産も始めているわ。家畜化が可能ないくつかの動物種を私の鑑定で選んで、世界から集めたの。品種改良を進めれば、乳をたくさん出せるようになる動物、労役に適した力の強い動物、人間が乗って早く移動できるスピードに優れた生き物、毛を採取できるふわふわした毛玉動物よ。みんなその辺の草と木の葉で生きていける生き物よ。ここまでの4種は哺乳類ね。あとは卵と肉をとるために、家畜化に適した鳥ね。最終的には飼いやすいように飛べないよう品種改良する予定だそうよ。今のところ、この5種類が人間の家畜ね。まぁどんな家畜も最後の運命は無駄なく食肉になるんだけどね。今後人間たちには自力で他の家畜化可能な動物を見つけ出してもらうつもりよ。後は、文明が進んで豊かになれば、愛玩のために動物を飼うこともあるわね」


(卵があるのね…、あとお砂糖があればプリンも作れるわね)


さやかは原始プリンに思いを馳せた。


「まだ野生が残っている個体も珍しく無いけど、あんまり手に負えない個体は潰して即食肉ね。おとなしくて優れた個体だけを交配して品種改良を図る予定だそうね」


「もちろんまだまだ原始の文明よ。物資は不足するものと思っていた方がいいわ。資源の無駄ない利用は大切ね。家畜は全て余すところなく使われるわ。蹄ですら、釣り針の材料として使われているそうね。食べられる部分は肉も内臓も全て利用されるわ。皮は主に衣服ね。そういえば、私たちは教えてないけど自力で腸詰を発明した人もいたわ。綺麗に洗った家畜の腸に、家畜の血を入れて茹でて作るそうね。他に血の利用法はスープもあるわ。血の一滴すら家畜を余さず利用する、使わないのは鳴き声だけという文化が生まれつつあるわね。骨も余さずちゃんと使うそうよ。しばらく前までは、骨も素材としていろんな製品に加工していたけれど、今では煮込んでスープを作るのね。スープをとった後のダシガラの骨は、砕いて鳥の餌に混ぜるのが主で、たまに肥料に使えないか試すため実験的に畑に撒いていると聞くわ」


「肉を食べるのには臭み消しも欲しいよね? ガーちゃんの世界の人間は、経験則で、野生の植物の中から、匂いが強くて臭み消しに適して毒性のない、食べてそこそこ美味しい香草や、香辛料の元となる植物を自力で発見したの。私の鑑定は使ってないわよ? これもまた、ガーちゃんの世界の人間が見よう見真似だけど自力拡張した農場で栽培が始まったわ。今では肉や魚を料理する際に使われているわね」


ガーちゃんの世界も自力で進歩しているのねとさやかは思った。




「ここまでなんだか食べ物の話をいっぱいした気がするけれど、食料をなるべく少ない人数で、効率的に手に入れられれば、その分、人を他のことに回すことができるわ。より複雑で高度な社会を作れるの。文明を築くには効率的な食糧の入手と分配が不可欠ね。最も世界の頂点に立つガーちゃんは、獲物はみんなで仲良く分かち合うという考えの持ち主だし、今のところ食料の分配は配給制ね。みんなに行き渡る分はあるから今のところあまり問題にはなっていないわ。しばらくは原始共産制社会じゃないかしら。もしかしたら最初から最後の方まで、原始共産制のまま宇宙進出を成し遂げる特異な文明になるかもしれないけどね」


「そんな歴史も好奇心をくすぐられるわね。あとはそうね、文明というからには職業と階層が分化するものね。でもガーちゃんの世界では最初の第一歩から頂点に女神であるガーちゃんがいるわ。王様もいないし、宗教家階級もなしね。ガーちゃんを崇め、その言葉に従うのが人間たちの宗教の全てよ。神話とかは、今私たち女神が文明を齎そうとしていることの歴史の記録がそのまま神話になるんじゃないかしら。女神のいる世界の住人は『我らは女神様の前に皆平等』という意識を持つようになるから、今後階層が生まれても多分そこまで絶対的で重要な物にはならないはずね。多分世襲の身分制度も生まれないわ。私の世界の歴史だと、時代によっては宗教家階級が知的労働も行っていたわ。寺院とかが学問の府だったそうね。でもガーちゃんの世界には無いから、やがては教育者の仕事をする人間に知的労働もしてもらうつもりよ。あとは書記かしら。原始時代なのにみんな読み書きできるようになってるガーちゃんの世界だけど、書記という仕事はあるのよ。必要な資質は絵のうまさね。物の特徴を捉えて誰が見てもわかるように粘土板に刻むのよ。図や絵があれば記録は格段にわかりやすくなるからね。彼らにも知的労働者の役割を担ってもらうわ」


(万能知識人のダ・ヴィンチもいくつもの名画を残しているし、絵の上手い人に知的労働もさせるのはありなのかもしれないわね)


と地球の偉人を引き合いにしてさやかは思った。


それは万能のダ・ヴィンチの守備範囲にたまたま絵もあっただけであって、絵が上手い人が知識人に適性があるわけではないのではないというほうが考えられるのだが、どのみち原初の文明は色々と人が足りないのである。




「あとは、鉄の利用ね。まず木炭の作り方を伝えるところから始まったわ。木工の素材にもなり燃料にもなるなんて文明にとって木は便利ね。森林保護も原始的な概念くらいならあるわ。と言っても木を切る際には必ず木の苗を持っていって、切った後に植えることを決まりにしているくらいだけどね。そして鑑定で、一番都市に近い鉄鉱石の取れる土地を見つけたの。鉄鉱石の採取のため、小規模な入植地が造られたわ。入植地は自分達で創意工夫して作ってもらったわ。木や草といった植物由来の素材で竪穴式住居を作る技法を自力開発していたわね。もちろんそういったノウハウは粘土板に刻んで焼かれることになるわ。恒久的な住居は石かレンガで作るんじゃないかしら。あるいは木造かもしれないわね。いつかは人口も増えるし新しい都市を自分達で建ててもらうことになるわね。彼らが建材に何を選び、どんな建築様式を発達させるのか今から楽しみね。入植地までの道はまだないわね。なんとか家畜に運搬させて交易してるわ。もちろん私がやれば道なんてなんなら指一本ですぐできるけど、彼らが自力で維持できないとね? 鉄は主に工具や農具になるわ。武器はないわね。ガーちゃんという絶対の女神がいる世界に戦争はないから必要ないの。道具としてのナイフとかナタとか斧とかなら武器に転用できるけどね? 最初から対人用として作られた専用の武器はないけど弓なら知られているわよ。畜産があっても野生動物も狩りたいから。狩猟の道具ね。食材が多種多様であれば食文化も発展するし、結構なことよね」




「あとは今ちょっと頭打ちになってるところね。まだ伝えられることも伝えたいこともあるんだけど、今後高度な文明に成長するためには圧倒的にまだ人口が足りないの。まだ世界総人口は10万に満たないわ。乳幼児の死亡率を減らして平均寿命を延ばし人口を増やすのが課題ね。今のところ石鹸での手洗い推奨とか、少なくとも3日に一度は公衆浴場で体を清潔にとか、衛生観念の普及が主な施策ね。手づかみで食べるのも不潔だからという理由で食器もいくつか伝えたわ。とはいえ、少し前まで世界の片隅で洞窟や野ざらしで生活していた『ちょっと賢い猿みたいな人間たち』がここまでになったのは、すごいんじゃないかしら」




「とはいえガーちゃんの世界の住人は、すでにただ与えられ教えられるだけの存在ではないわよ。自分で探究するということを知っているわ。いくつかのことは女神が教える前に自分達で発明発見するかもね。ガーちゃんの望みは進歩の加速だから、今後も女神が教えることのできることはなるたけ教えて、文明の道程を急いでショートカットするつもりだけどね。これが文明の女神ガーちゃんとその世界のお話よ」




 さやかとアリスは人類の壮大な旅路の第一歩を脳裏に描き、感嘆のため息をついた。


「すごいわ…、なんて偉大な一歩なのかしら」


とさやか。


「ええ! ガーちゃんの世界が早く宇宙に出られればいいわね」


とアリスが返す。


「そうでしょうそうでしょう」


と嬉しそうにリーリスが言った。


女神ガーの世界にはリーリスも尽力しているのである。




「それでさやかちゃん…、お願いがあるのよ」


と、さやかを見てリーリスが言った。


「何かしら?」


「えっちしましょう!」


「え?」


「女神が集まればやることなんてえっちに決まってるでしょ?」




 そこにアリスの声が響いた。


「そうよ! さやかちゃん! 女神同士のえっちは当たり前のことなのよ! 私の眼を褥に存分に二人で愛し合ってね! 私見てるから!」


「そーなのねー。わかったわ、リーリスちゃん。えっちしましょう!」


女神同士でえっちするならリーリスとアリスでもいいはずなのだが、エロスの女神であるさやかの色香は女神たちにおいても特別なのであった。


さやかがいなければリーリスとアリスがスキンシップとしてえっちしていただろうが、この場にはさやかがいて凄まじい色香を撒き散らしているのである。




 ぐぐーん。


リーリスの体がみるみる伸びる。


彼女は身長500メートルから身長1650メートルまで大きくなった。


通常の人間の1000倍ほどといったところか。


「さやかちゃん…。お願い。女神のテレポートと空中移動は使わないで、私の体の上をじっくりと歩いてくれないかしら」


「わかったわ」


さやかはリーリスの要望に答えることにする。


リーリスの巨大な指が、アリスの涙の海面からさやかを摘み上げた。


それにしても1000倍というサイズ差のチョイスには絶妙なものがあるとさやかとリーリスは思う。


指でつまむ際も、1000倍のリーリスは、女神の感覚によらず人間由来の感覚だけで、さやかを摘み上げることができる。


それでいて、もしリーリスがサイズ変更能力者で、さやかが人間だったら、わずかに力加減を間違えるだけでさやかは赤いペーストにされるであろう、リーリスの圧倒的強大さ、さやかの小ささが人間由来の感覚には感じられる。


先ほど、サイズ変更能力者の縮小人間遊びについて大いに語った彼女らは、なかなかに倒錯的な気分になっていた。


リーリスがさやかにテレポートと空中移動を使わないようお願いした理由である。




 さやかはそのままそっと、リーリスの右足親指の上に置かれる。


そのままリーリスは脚をのばす。


リーリスは仰向けになってアリスの涙に浮かんでいた。


女神の体というあまりにも美しい島が、女神の眼という、これもあまりにも美しい海に浮かんでいる。


これだけでも息をのむ光景だ。


とはいえ今さやかのいる場所はリーリスの右足親指である。


リーリスの右足親指の太さは幅10メートルを超えているのではないだろうか。


足指だけでもこんなに大きい。


そしてリーリスは女神だ。


足先の親指一本ですら完璧な美しさを誇り、さやかを魅了する。


リーリスの足の甲はほぼ垂直の崖だ。


足首まで百メートルなんてはるかに超える。


どうやって降りようか…。


さやかは少し悩んだ。


ここでも1000倍という絶妙なサイズ差がものをいう。


リーリスからは人間由来の感覚でも、自分の足指の先でさやかがちまちましていることがなんとか感じられる。


そして、さやかが人間としての感覚で見れば、リーリスの足の甲は100メートルをはるかに超える絶壁なのだ。


これだけでも二人の倒錯的な気分は高まった。


(リーリスちゃん…大きいわ)


(さやかちゃん…ちっちゃいわ)




 しかしさやかは無敵で不滅の女神である。


怪我の心配なんてしないでいいのだ。


ここから足の甲を一気に滑り降りて足首までなんとか行くことにした。


地球でも最大級の施設なら、高さ100メートルを超えるフリーフォールはあるかもしれない。


しかし女神リーリスの足の甲ほど美しくはないだろう。


「わーい!!!!」


さやかはリーリスの足の甲を思い切って滑り降りる。


思い切りをつけるために、ついでに大声で何か叫んでいた。


あっという間にさやかはリーリスの足首に到達していた。


人間なら大怪我あるいは死亡かもしれないが女神であるさやかには爽快なだけである。


リーリスにとって足の甲は本来性感帯とは言えないのだが、さやかにかかれば触れているところはどこでも性感帯である。


リーリスは足の甲にじわじわと快楽を感じていた。


少しずつリーリスの魂という器に快楽という液体が貯まっていく。


そしてさやかもリーリスに触れていた背中に、快楽を感じていた。




 これからどうしようかちょっと迷うさやかだったが、すぐ結論は出た。


遠くに見事な形のリーリスの乳房が見える。


女神の完璧な美しい曲線を誇る素晴らしいモニュメントだ。


まずはあそこまで歩こう。


次のことはそれから決めればいい。


足首を踏破し、脛に至る。


皮膚と骨とごく薄い脂肪と筋肉が素晴らしい景観を作っていた。


リーリスは自分の脚の上を歩くさやかを感じていた。


さやかの一歩一歩ごとに快楽が感じられる。


それとてリーリスが不滅の女神でなければ魂が消し去られるであろう、とてつもない快楽なのだ。


女神は快楽を与え合う。


さやかはリーリスに触れる足の裏からじわじわと快楽が伝わるのを感じていた。


性感帯ではない足の裏から快楽が伝わるのはさやかにしてもなかなかない体験である。


普通なら足の裏を愛撫されてもくすぐったいだけなのだが。




 膝を越えて、太ももに達した。


筋肉と脂肪と皮膚の織りなす素晴らしい景観を楽しむ。


足の裏から伝わる快楽と、リーリスの脚線美というあまりにも美しい情景に、さやかは歩き続けることに飽きることなどなかった。


さやかがリーリスの股間に近づくにつれて、リーリスの快楽もいや増した。


さやかがすんなりのびたリーリスの脚を踏破し、鼠蹊部を越え、腹部に到達に到達する頃には、リーリスの魂という器には快楽という液体は半分以上満たされていた。


さやかはリーリスの縦長の窪みであるおへそを見た。


そして自分のおへそと見比べる。


自分のお腹のささやかな窪みが、リーリスだとこれほどの大きさになるのか。


リーリスはなんと大きいのか。


さやかはリーリスの巨大さに感銘を受ける。


穢れを知らぬ女神であるリーリスのおへそにゴマはない。


完璧に清潔なおへそである。




 とはいえおへそは性感帯でも特にないので、さやかは縁を迂回してリーリスの乳房に歩みをすすめる。


「ああ…さやかちゃん…」


さやかが自分の体の上を歩くのを、人間由来の感覚からでも感じる。


リーリスには快楽がもたらされる。


たまらない。


そしてさやかはリーリスの乳房に近づいていた。




 大きい…。


さやかから見たそれは、胸板から100メートル近くまで聳え立っている、あまりにも美しい、素晴らしい巨大モニュメントだ。


片方だけでも山のような大きさである。


このままずっと見ていても見飽きないが、いつまでもこのままでもいられはしない。


さやかはリーリスの乳房という山を登り詰めることにした。


今さやかが立っている下乳の麓からはリーリスの乳房山はオーバーハングしている。


女神の力なしでの攻略はちょっと無理ではないだろうか。


さやかはリーリスの乳房の山の間という、肉と脂肪の大峡谷をくぐり抜けることにした。




 「ああ…、なんてもの凄いのかしら…」


さやかはリーリスの胸の谷間に感銘を受けていた。


リーリスの圧倒的な乳の谷、その道を辿る。


空はほぼない。


リーリスの胸の盛り上がりはものすごいのである。


さやかも爆乳だが、リーリスの胸も大きいのであった。


とは言えそんな道程も間も無く終わった。


さやかがリーリスの鎖骨方面、上乳のほうに到達したのである。




 (さあ、登るわよ、さやか!)


巨大なリーリスの胸、上乳方面からでも相当な急傾斜であるが、まぁ女神の力を使わなくてもなんとかなるだろう。


さやかは左右どちらの胸を攻略するべきか考えたが、左胸は心臓の鼓動に悩まされそうだったので右胸の方を登ることにした。




 リーリスは今までにもまして、凄まじい快楽にさらされる。


今までさやかが体の上を歩いていたのは性感帯と言えないところだったのだが、今やさやかはリーリスのおっぱいの上を歩んでいるのである。


(さやかちゃんを感じる…、なんて、なんてすごい快楽なの…)


とはいえ、快楽のあまりその身を震わせると、さやかが乳房山から振り落とされるかもしれない。


リーリスは喘ぎ声をあげるにとどめた。




 さやかは遂にリーリスの乳輪に到達する。


むくむくむく。


その刺激を受けてリーリスの乳首が堅くなり盛り上がる。


なんという大きく美しい乳首か。


さやかは手と足をかけ、リーリスの乳首によじのぼる。


快楽を堪えきれなくなったリーリスの体が震える。


しっかり掴まないと乳首から振り落とされるかもしれない。


さやかはがっちりと手をかける。


それはリーリスに更なる快楽をもたらしていた。


そしてさやかはリーリスの乳首の上に立った。


女神の力を使えば簡単なことであるはずなのだが、さやかは謎の達成感を感じていた。


人間の登山家が、山に挑む気持ちがわかった気がした。


さやかはリーリスのおっぱいという最も美しい山を征服したのだ。


万歳したい気分だった。


さやかは達成感のあまり、たわいもないことを考える。


リーリスにさらに巨大化してもらい、登山家たちを胸板に撒いて、リーリスの乳房山に登山させるのだ。


リーリスの乳首という最終試練は攻略が困難だろう。


無敵の女神の皮膚はハーケンなど受け付けない。


登山家たちは、自分の手足だけで、フリークライミングで乳首の絶壁を登らなければならないのだ。


さらに巨大化したリーリスの乳房は高さが富士山の倍はある大高峰だろう。


地上にあるどんな山でも全く比べ物にならない美しい山だ。


登山家たちにはその美しい山に挑む栄光が許されるのだ。


なんと素晴らしいサービスであろうか。




 ごごごごご。


さやかの夢想を断ち切るものが現れた。


リーリスの顔だ。


頭を持ち上げ、自分の乳首の先っぽにいるさやかを見つめている。


「リーリスちゃーん!」


さやかはなんとなく手を振った。


巨大で美しいリーリスの顔が微笑む。


「さやかちゃん…、私の足先からここまで歩いてきてくれたんだから、ゴールはやっぱり私の顔よね」




 ずしっ。


乳首が揺れる。


さやかの立っているリーリスの乳首に、リーリスの人差し指が触れたのだ。


乗れというのだろう。


さやかは従う。


言葉にすれば簡単だが、リーリスは大きくそれに比べてさやかはあまりにも小さい。


少々難儀しつつも、リーリスの指の上にのるさやかであった。




 さやかが指の上にのったことを確認したリーリスの指が上空へと昇る。


さやかはあっという間にリーリスの口元まで運ばれた。


女神であるリーリスは口紅など必要としない。


彼女の唇はそのままで、最高に美しい完璧なピンクなのだ。


リップグロスも不要だ。


そのようなものがなくても常にツヤツヤでプルプルだ。


そして形も完璧だ。


非の打ちどころのない美しい唇だった。


さやかを振り落とさないよう、リーリスの指がそっと唇に触れる。




 「さやかちゃん…。私はもう限界よ。いかせて。とどめをさして…」


リーリスの魂という器に注がれた快楽はもう一杯になっていた。


次に何かあれば溢れ出すだろう。


リーリスとさやかはそれを感じていた。




 「わかったわ。いくわよ。リーリスちゃん!」


さやかはリーリスの唇を見上げた。


なんと大きく美しい口であろうか。


さやかが数百人くらいいても、一口で食べられてしまうだろう。


リーリスはそんなことをしないとわかってはいるが、サイズ変更能力者の縮小人間遊びの話を聞いたばかりのさやかは、いささか倒錯的な気分になっているのであった。


リーリスの唇にキスをする。


リーリスの快楽が限界を超える。


「ああ! さやかちゃーん!!!」


女神は快楽を与え合う。


さやかもまた絶頂に達する。


愛液が股間から漏れ出すのを感じる。


さやかからは遠すぎてわからないが、リーリスの股間からも愛液が噴き出しているのだろう。




 「さやかちゃん…」


「リーリスちゃん…」


「素敵だったわ…」


「うん!」




 満足した二人にアリスの声が響く。


「次は私ね、さやかちゃん…、私もいかせて」


さやかはアリスの涙の海の果てしない海がさらに果てしなくなっていることを感じた。


アリスからは、自分の涙の海に浮かぶリーリスとさやかは、角度からして、リーリスの後ろ姿しか見えないはずだった。


それでもアリスはリーリスとさやかの喘ぎ声だけで想像逞しく興奮し、そのあまりさらに巨大数論的巨大化したのである。




 「いくわよ…、アリスちゃん」


さやかはアリスの全身を視野におさめられる上空にテレポートした。


今日は何度もアリスは巨大数論的巨大化を行なっている。


最少状態ですら超絶巨体の彼女は、今やとてつもない大きさだ。


比較対象物が全くないから人間由来の感覚ではただ大きいとしかわからない。


さやかの女神としての感覚なら漠然と大きさが…とてつもないことくらいならわかる。


少なくとも今日最初に会った時より絶対的に大きいことは。


そしてアリスは大きくなればなるよど美しくなる。


アリスの銀の髪、銀の瞳、白い肌は凄まじい美しさに白く輝いている。


さやかはこのままずっとアリスに見惚れていてもいいかな、なんてことを思っていた。


そしてそれはアリスも同じだった。


空中のさやかは、女神にとっても神々しく壮絶な色香を放っている。


アリスはこのままずっとさやかの神々しい色香を浴び続けたいかも、と思った。




 「さやかちゃん…すごいわ。大きいおっぱい、くびれた腰、完璧な丸いお尻、スラリと長い脚。さやかちゃんみたいにすごいスタイルってどんな気分なのかしら」


アリスの外見は幼女である。


大きいおっぱい、くびれた腰、完璧な丸いお尻、スラリと長い脚、といったものは、女神であっても彼女のものではないのである。


ぺったんこの胸、細い腰、小さいお尻というのが完璧なバランスを持って組み合わさっているのが彼女のスタイルだ。


身長2.4メートル強のさやかの頭身は10頭身を超える。


女神界の中でもさやかを超えるプロポーションはいないのではないだろうか。


もしさやかが今の姿のまま女神でなく人間だったとしても、さやかのスタイルは全ての男性の夢の結晶といえよう。


さやかはアリスの視線を感じていた。


巨大な視線だ。


もしさやかとアリスの間に無数の宇宙を並べて視線を遮っても、アリスのあまりにも巨大な視線は無に等しい宇宙を消滅させてさやかを見つめるのではないだろうかとすら思わせる。


そんな視線がさやか一人に集中している。


さやか、というかその視線はさやかのバストを見つめているのを感じる。


さやかは胸にくすぐったさを感じた。


アリスにも大人の素晴らしいプロポーションへの憧れはあるのである。


さやかの大きく美しい胸はその象徴であった。




 (アリスちゃんは私の胸が気になるようね…。じゃあ今日は胸で愛撫してあげる)


アリスは、さやかとリーリスの喘ぎ声だけで既に十分に興奮している。


特に、さやかはエロスの女神であり、喘ぎ声だけですら特別なのだ。


前戯に手間をかけるとそれだけで、アリスは絶頂に達するだろう。


それは味気ないので前戯は簡単に済ませることにする。


さやかはアリスの唇にテレポートした。


キスはしない。


胸だ。


胸で愛撫するのだ。


間近では、もはやピンクの無限平面と思えるアリスの唇に、乳首を擦り付ける。


「どうかしら…、私のおっぱいを感じる?」


答えは明らかだが、さやかはあえて尋ねた。


「さやかちゃんのおっぱいを感じるわ…、なんて素敵なの…」




 さやかはテレポートし、再びアリスの全身を見られる位置に現れる。


(次は胸ね)


あえて乳首にはテレポートしない。


乳首を刺激したらアリスはそれだけで絶頂するだろう。


さやかがテレポートしたのはアリスの胸板の上だった。


アリスの胸はぺたんこである。


どことなく柔らかい印象を受ける、もはや無限といえるような大平原だ。


白い無限の大地を、これもまた乳首で擦る。


「ああ…さやかちゃん…」


アリスが喘ぐ。


さやかも、乳首から全身に快楽が伝わり喘ぎ声を出す。


「アリスちゃん…」




 「アリスちゃん…、指を出して」


「こう?」


さやかのいる胸の上に、巨大なアリスの手が現れる。手は握られ人差し指のみがのばされている。


さやかは人差し指の腹の上にテレポートした。


「反対側の手で、アリスちゃんのあそこを開いて」


「わかったわ…、こうね」


反対側の手が、アリスの秘所を人差し指と中指でくぱぁと開いた。


「アリスちゃん…、次はわかるわね?」


「ええ…、いくわよ、さやかちゃん!」




 さやかをのせたほうの手が、アリスの股間にのびた。


さやかを乗せたまま、人差し指がアリスの秘所に挿入される。


巨大数論でしか比べ物にならない数の無数の宇宙を指一本僅かに動かすだけで消滅させる、アリスの人差し指の凄まじい力が、無限とも言える巨大な膣壁にさやかを押し付ける。


なんという快楽であろうか。


さやかがアリスの力を味わう時には、アリスが大きければ大きいほど快楽も増すようだ。


さやかはアリスが大きいほど得というリーリスの言葉を思い出す。


さやかはアリスの膣壁に取りつき、乳首を押し付ける。


アリスは秘所に人差し指を出し入れする。


その度にさやかはアリスの膣壁に押し付けられ擦り付けられ、凄まじい快楽を得る。


女神は快楽を与え合う。


自分の指だけで秘所を刺激した時とは比較にならない快楽がアリスを襲う。


「さやかちゃーん!!!」


「アリスちゃーん!!!」


二人は同時に絶頂に達した。


絶頂のあまりアリスがさらに巨大数論的に巨大化する。


もはや表現し難い絶大な量の愛液が床に放たれ、さやかは膣内から放出された。




 「さやかちゃん…」


「アリスちゃん…」


「「うふふふふっ」」


二人は顔を合わせて見つめ合い笑った。




 「それじゃ、さやかちゃん、次にはガーちゃんを紹介するわ。みんなまたね!」


リーリスは、巨大テーブルの上に脱いだ自分の服の元にテレポートする。


服を身につけて、彼女は自分の宇宙へと帰っていった。


「私も帰るね、またね、さやかちゃん」


巨大なアリスからはテーブルの上のサイズ変更能力者も視認距離であり、彼らからも巨大すぎるアリスの姿は見えるので、アリスは彼らにも挨拶した。


「それじゃ皆さん、ごきげんよう」


サイズ変更能力者はあまりにも美しい女神アリスに声をかけられたことに感激するが、実はアリスの内心は結構ひきつっていた。


圧倒的巨大女神、絶対的強者であるアリスがサイズ変更能力者たちに恐怖を感じるのは滑稽かもしれないが、人の心の闇はアリスにも怖い。


女神にも怖いものはあるのである。


アリスも自分の宇宙に帰っていった。


さやかが服を脱いだところとサイズ変更能力者たちの待機場所はそう離れていなかったので、さやかは服を身につけた後、サイズ変更能力者たちに挨拶する。


「それでは、お先に失礼しまーす」


「はっ…、我らのために勿体無いお言葉!」


サイズ変更能力者たちは自分達が女神たちの圧倒的下位の存在として応えを返したが、さやかもサイズ変更能力者はちょっぴり怖かった。


地球にテレポートする。




 次の休みは女神ガーを紹介される予定だ。


早速隠蔽の力を試しに使ってもらって、お忍びでガーの世界を見物させてもらうのはどうだろうか。


さやかは今から楽しみで仕方がなかった。

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