くノ一 おとみは転生者です

霞千人(かすみ せんと)

第1話 少女瞳転移してしまう

  少女瞳13歳は祖父と暮らしていた村を追い出された。

13歳で神様から貰う能力が村の役に立たないもの

だったからだ。

祖父は瞳が小さい頃から一人でも生きていける様にと武芸を

仕込んできた。

まるで今の状況を予測していたかのように。

冒険者として生きていけるまでに鍛えられた瞳は

王都に出て冒険者になった。

魔法を使いたくて魔法の書を求めて挑戦したダンジョン。

 あの時は3層の階層主のベヒモスに殺されそうになった。

運良く倒すことが出来たのだが、

他の6つのダンジョンを踏破しなければこのダンジョンの

5層はクリア出来ないと書いた書き物が有った。

 その為に武者修行に出て3年、16歳になった瞳は

それらのダンジョンをクリアして帰って来たのだった。


 瞳は成長していた。身長が伸び、胸も……

奥ゆかしく、つつましく成長しつつ有った。


 本人は「私は今成長途中。後数年すればあのエルフに

 負けない胸になるはず」と、思っている。

 そうだよ瞳、夢を見るのは自由だよ。

 そう言えば「鬼に金棒って、エルフにオッパイってこと?」

 と言ってた事があった。どんな残酷な現実を

 見せつけられたのだろうか……


 それはともかく、瞳は格段に強くなっていた。

 3層主のベヒモスも、4層主のヒュドラも瞬殺して

 5層の主のエンシェントドラゴンをいたぶっていた。

「おのれ小娘この恨み晴らさでかーーー!」


「寝言はあの世でゆっくり言ってよねバイバーイ」

 瞳の刀がドラゴンの首を跳ねた瞬間、瞳は異世界に転移して

 いた。目の前にいたのはエンシェントドラゴンではなく、

 転んでいるお爺さんに襲いかかろうと2本足で立ち上がって

 いる3メートルも有ろうかというヒグマだった。

(初めて見る魔物ね。でも首ちょんぱで終わりよね)

 サッと刀を振る。

 羆は、ずどーーーんと倒れた。


「嬢ちゃん強いのう。助かったよ。有難う」

 老人が礼を言う。


「でも、この魔物消えないわねえ。変なダンジョン」


「嬢ちゃん何言ってるんだい。こいつは魔物なんかじゃ

 ないぞ。【月の輪羆】と云う猛獣だよ」

「へえ、ここのダンジョンの5層って魔物だけじゃなく

 普通の獣もいるんだ」

「変な事ばっかり言う嬢ちゃんだなあ。ダンジョンって

 何のことだ?」


「話が通じないわね。ここってバローク世界でしょ

 月が2つ有る」

「ここはニッパン国の北見っていう村の山だぞ。それに

 月は昔から1つに決まっているだろうが」



 ここにきて瞳はここが自分がうまれ育った世界でない

ことを確信した。

「あいつだあのエンシェントドラゴンが私をここに飛ばした

んだどうしょう。私この世界のお金持っていない……

またあのひもじい思いをしないといけないのかー」

 修行中のトラウマが襲う。

「ねえおじいちゃん冒険者ギルドなんてのも無いんでしょう」

『ああ無いな」

「ねえ、こういうの売れるところって無いかしら?」

 瞳はホーンラビットの魔石を老人に見せた。

「ほほう綺麗な石だな。町のかんざし細工の店なら

買ってくれるかもしれないな」

「じゃあこれは?」

 ホーンラビットの毛皮を出して見せた。収納魔法に

入れていたので解体したばかりの状態だった。

「このままよりなめした方が高く売れるぞ。儂が教えてやろうか」

「お願いします。この熊私がおじいちゃんの家まで運びますよ」

「とんでもなく重いぞ」

「大丈夫よほら」

 収納する。老人が目を丸くして言う「どこに消えた?」

「私が持ってるわよ」

 出して見せる。

「ほえーこりゃたまげたもんだ。嬢ちゃん運び屋で稼げるぞ」

「なるほど、お金を稼ぐ手段が有るってことね」

 少し安心した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る