雨降る夕暮れ

梅林 冬実

雨降る夕暮れ

ついさっきまで快晴だったのに

急な通り雨に参ったから

顔のない数体のマネキンに

綺麗な服が着せられている割に

素っ気ない店先で暫し雨宿りする


まったくもう 面倒くさいなぁ


ブツブツ呟くのをすぐに止めたのは

君が同じ軒先に入ってきたから

登校日だったから制服姿

登校日だったから重たい鞄持ってる

どちらも似たような恰好で

雨が止むのを大人しく待つ


私は軒先から見える雨雲と

にらめっこしてばかりだったけど

君はすぐにスマートフォンを手に取って

何やら操作を始めてしまう

こんな時スマホがあったら楽だろうな

学生にそんなもん早いって

決め付けない母の元に生まれたかった


それとなく見つめる君の横顔

陶器のような肌というらしい

すべるように滑らかな頬を

整った鼻筋を

画面を眺める

物憂げな目元を

目にかかる程度に伸びた前髪を

美しい絵画を眺めるような気分で

だけど君にそれと知られないように

そっと そっと 見つめる


止まない雨が止むのを待つ

君と わたし

夕暮れ時の霧雨は

少し君に似ている

スマホから目を離し

私に気付いてくれないかな

ほんのちょっとだけ願ってしまう

だって君さ

私の存在に全く気付いていないんだもの

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雨降る夕暮れ 梅林 冬実 @umemomosakura333

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