第E章 軌跡 2
少ししてから、ナムルの説明により、ダカルとガクによる演奏が始まることとなった。
「本日──成人を迎えた皆さん、誠におめでとうございます!」
「ボク達から、ささやかな余興ですが、唄わせてもらう機会をお与えくださり、誠にありがとうございます!」
「聴いてください」
「『小さな軌跡』」
二人は、同時に頭を下げた。
ダカルは、『竪琴』を構え。
ガクは、『鍵盤式アコーディオン』を構えた。
奏でられる曲は、悲しくも優しいメロディー。
唄われる歌詞は、あの頃を覚えてる四人には懐かしの思い出。
村の人たちは、その音色と歌詞に耳を傾けていたが──ロキと過ごしたあの数ヶ月の思い出がある四人は違った……耳を傾けるように目を瞑り、ある者は涙を流し、ある者はイタましい想いを持ち、ある者は拳を握り、ある者は笑顔を浮かべた。
それぞれの感情を奏でられるごとに、それが真実で在ることを知る者は、四人のみ。
『囚われの五人の子供たち~~♪』
『立ち上がる、優しき少年~~♪』
「この唄、あの頃の出来事だよな……?」
「うん……」
「でも……どうして?」
「ここに戻る時に少し話したの……」
「お姉ちゃん……が!……珍しい……ね」
「私も、ナゼ話したかわからないの……たぶん、ロキ君を誰かに覚えて欲しかったんだと思う……」
そこで、会話が終わり、唄に集中する四人。
演奏が佳境に差し掛かった頃。
「ここは、ロキ君の決意の場面の所だね」
「……うん……」
「だな……」
「そして、私たちの……違うね……ロキお兄ちゃんの……ロキお兄ちゃんが私たちのために……」
続きを語ることは、なかった。
それでも、サキが語りたいモノが理解出来る三人と、黙って聞いていたネル。
演奏が終わりを告げ、それぞれの祝辞が一通り語られて、「乾杯」の音頭とともに、夜も耽っていった。
第E章 軌跡(完)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます