第二章 逃走の物語 7

カラン……と、石を当てられた事により、頭目は持っていた剣を落とした。

「痛……ガキ、やってくれたな」

右手を抑え、苦悶の声でそう告げる。


「師匠より、全然隙だらけだったからな」

ハァハァと、ロキは息をしながら答える。


頭目は、面白く無さそうに、

「ケッ、一丁前に強がりやがって、おいガキ、テメーの名前は何て言うんだ? 」


ロキは、言葉の意図が分からず、一瞬考える……それが大きな隙になることを失念して……。


「ク……」

その隙を見逃さす、頭目はロキめかけて土を蹴りかけた。



「へ、やっぱガキだな、ツメが甘ぇよ」

笑いながら足元の剣を左手で拾い上げ、ゆっくりロキに近付いていき……斬りかかった。


「上からきます」

女性の一人が叫ぶ。同時にロキは右前に転がり回避した。

それでも、完全に回避は出来なかったが致命傷を避けることはできた。


(クソ、今声をかけてもらわなかったら確実にヤられてたな……)

ロキは苛立ちながら頭目を睨み付ける。

(だいぶ……見えるようになってきたな。)

「ちょこまか、ちょこまかと……蝿かテメーは!!」

「お前こそ、やってくれたな」

「ッヘ、卑怯だと言いたいか? 」

「遊びじゃないからな、卑怯なんて言わないさ」

「へぇー、わかってるじゃないか。次はどうするつもりだ?」

頭目が少し感心しながら聞いてくる。


「こっちから攻めさせてもらう! 」

言い切るかどうか、ロキは走り出した。

始めに、頭目の顔面目掛けて石を投擲して、注意を上に向けさせた。

「おっと……まだ石か?…クッ…!」

右足に走る激痛に顔をしかめた頭目の男……理由は簡単だ右足の太ももの辺りに、ナイフが突き刺さっていたからだ。


「まだ、武器を隠してやがったな」

「卑怯だと言いたいか? 」

同じ台詞をそのまま返すロキ。そして、また走り出す。


「いーや、遊びじゃないからな」

頭目の男はナイフを抜きながら笑い、ロキの出方を見ている。

(こいつ、戦い馴れてやがるな。)

頭目は笑っている裏で、ロキへの警戒度を上げる。


ロキは投石に混ぜながら、時々、爆弾を投げて視界を遮って、木の陰に隠れる。

(後、ナイフ3本、爆弾2個、矢が2本と、そして替えの弦か──一か八か罠を作るか? )


「チッ、あのガキ何処に隠れやがった! 」

周りを見ながら、警戒する。

不意に何かが飛んで来る事に気付いた。

「そこか!! 」

石を投げられた事に気付いた瞬間、その方角に駆けていく。

「グワァ……」


背中に鈍い痛みが走り、片膝を着く。

「な……に……? 」

何か起きたかわからず、頭目の男が背中を見る……そこに、ロキが矢を放った状態で立っていた。


「な……ぜ……? 」

それは、『何故、後ろにいるのか? 』『今感じる違和感はなんなのか? 』

なのだか。


「簡単な話だ、石を時間差で飛ぶように罠を作っただけだよ」

「な……!?」

簡単そうに、言ってのけるロキに、驚愕の表情を向ける頭目の男。

それもその筈、僅か10分前後で罠を作り後ろに回りこむなど不可能に近い、それを平然とロキはやってのけたのだ。


「グゥ……」

ロキは、会話が終わったと言いたげに、最後の矢を頭目の眉間目掛けて射った。

「次は……油断しない」

そう呟き、そして近づきながら武器はナイフに持ち替える。


頭目の男の上に乗り、そして……首を思いっきり斬ったのだった。

首を斬られたことにより、1度ビクッと跳ね、大量の出血と共に動かなくなった。

「これは、俺の覚悟・・だ……」

ロキは、息絶えた頭目を冷たい眼で見下ろしながら、その一言を呟くのであった……。


第ニ章 逃走の物語(完)



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

少し間を開けてから第三章を投稿します。

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