第二章 逃走の物語 5


現れた男は、少し考えてから言葉を発する。

「……おまえらもう少しで根城だ、そこでだ……お待ちかねの商品どもの味見でもするか? 」

「ヒュー、待ってました! 」

「やったー! 」

カシラと言われた、男の言葉とその手下達の喜ぶ声が静かな森で響く。


内容の意味を理解したロキは……顔をしかめる。

(不愉快……だな……)

そして、心底不機嫌になる。

(とりあえず、一旦戻るか? )


きびすを変えそうとした時、『ペキッ』っと、枝を踏んでしまった。


(ヤバい!! )


「んぁー、何か聞こえたな? 誰か居るのか? 」


「動物じゃ、ないでしょうか? 」

「わからん、おい、見てこい」

スキンヘッドの男に命令する。


スキンヘッドの男は、『へい』と返事をして、音の鳴った方に向かってくる。


(どうする? 向かえ撃つか? )

ロキは思考しながら、いったん木の上に移動した。


「何か見つけたか?」

眼帯の男が大きな声で聞いてきた。

「いーや、何も無いぜ。」

スキンヘッドの男が答える。


(ヤるか)

ロキは木の上を移動しながら、弓に矢を添え……そして、放つ。


「グフ…」

「おい、どうした!? 」

始めに、スキンヘッドの男を撃って、まだ移動。

「ガフ…」

今度は、眼帯の男の眉間に矢が刺さる。

あまりの事に、カシラと呼ばれていた男は、数瞬の困惑の後、剣を抜いて。

「誰だ、出てこい!! 」

と、怒鳴る。


(心を落ち着かせて、冷静に判断しないとな)

移動しながら、ロキは悠長に考えていた。


「そこか!! 」

ロキの通った所に、石を投げてみせる。

(危ねぇ!? 伊達に頭を張ってる事はあるな)

「チッ、すばしっこい。何処にいやがる」

苛立たしげに、怒鳴り出す。


(長期戦はこっちが不利だな。これを、使うか? )

山賊の洞窟からくすねてきた、火打石と爆弾を取り出す。


山賊やつらの入り口を崩す為に、持ってきたが、ここで使う羽目になるとはな。)

1度頭を振り、準備を始める。


「おっと、危ねぇ」

始めに、矢で頭目と帆馬車の距離を離す事にした。

(後、4本か……)


続いて移動しながら、石に蔓を巻き遠心力にて投げつけて、再度距離を開かせる。

「くそ、ちょこまかと」


(これ位なら、いけるか)


「また、矢かよ。グフォ……」

爆弾を上空へ投げると同時に、矢で頭目を誘導した。

『ドッカーン』爆弾が爆発し、頭目は倒れる。


(よし、今のうちに)

ロキは、帆馬車に近づき中を確認する。

そこには、予想通り捕まった人達がいた。


                続く

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