第61話 アディンはSランク冒険者になる!

 ────数ヶ月後。

 俺は毎日クエストをこなしていき、気が付くとAランク冒険者になっていた。

 そして、今日のAランククエストを達成すれば、俺はSランク冒険者になれる。


「アディンくん!今日の朝は、アディンくんのSランク冒険者達成祝いだから、いつもより豪勢に作ってみたよ!」


 朝起きると、アリアさんがそう言ってテーブルの上に広げられた豪勢な料理を見せてくれた。


「嬉しいです!でも、俺まだSランク冒険者になれるって決まったわけじゃないですよ?今日のクエストもSランク冒険者になるためのクエストっていうことで、今までのと比べて難しいって話でしたし」

「アディンくんなら大丈夫だよ!それに、アディンくんのSランク冒険者達成を妨害するようなモンスターが居るんだったら、仮にアディンくんがそいつのこと倒せなくてもそのあとですぐに私がそのモンスターのことこの世から文字通り消してあげる……だからアディンくんは、自分の出せる力を精一杯発揮することだけを考えて!」

「は、はい!ありがとうございます!」


 言葉が少し怖いところもあったが、きっと俺にクエストを失敗しても大丈夫だと言ってくれているんだろう。

 俺とアリアさんはその豪勢な料理を一緒に食べ終えると、今度は一緒に宿舎から出て冒険者ギルドに────


「アディンくん」


 宿舎から出ようとした時、アリアさんが真面目な表情で俺のことを呼び止めた。

 そして、その表情のまま続ける。


「本当に……ここまでよく頑張ったね」

「何もかも、アリアさんのおかげです」

「ううん、アディンくんが頑張ったからだよ」


 アリアさんは、俺のことを抱きしめて言った。

 さらに優しい声で言う。


「昔した約束、一緒に叶えようね」

「はい……叶えます」


 アリアさんに抱きしめられている俺は、アリアさんのことを抱きしめ返した。


「ねぇ……いい?」

「……いいですよ」


 俺とアリアさんは唇を重ねると、今度こそ宿舎から出て冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドに到着すると、ミレーナさんが笑顔で俺たちのことを出迎えてくれる。


「アディンさんにアリアさん、こんにちは……いよいよ、ですね」

「はい!絶対にクエスト達成してみせます」

「アディンさんならきっと大丈夫だと信じています……クエストを達成して、また元気なお姿を見せてくださいね」

「約束します」


 俺がそう答えると、ミレーナさんは優しく微笑んでから、クエストの受注手続きを行なった。


「では、これでいつでもクエストに赴いていただけます、お気をつけて」

「ありがとうございます」


 俺はミレーナさんにそう感謝すると、冒険者ギルドの外に向────


「アディンさん、Sランク冒険者になったら、また一層魅力的な男性になられますね……以前お伝えさせていただいたことになるのも、もしかしたら遠くないのかもしれません」

「え……?それって────」

「ミレーナ!こんな大事な時にそんなふざけたこと言わないでくれる!?」

「ふざけてなどいませんよ?私は真剣です」

「その真剣がふざけてるって言ってるの!」

「こんな日でも相変わらず、か」


 アリアさんとミレーナさんが言い合いをしていると、俺の後ろにシュテリドネさんが来てそう呟いた。


「多く語るつもりはないが、君ならきっと今回のクエストも達成することができるだろう、そうなれば私は、同じSランク冒険者として、君の見本にならないといけなくなるな」

「前も言いましたけど、俺もシュテリドネさんと同じぐらい冒険者の人たちの見本になってみせます」

「ふふ、その意気だ……行ってくるといい」

「はい!」


 俺はようやく冒険者ギルドの扉に足を進め、あと一歩で外に出るというところで────今度はエテネーラさんから話しかけられた。


「あ〜!アディンも今日でSランク冒険者になっちゃうんだ〜!冒険者として一番高いランクじゃないアディンとあんなこととかこんなことする妄想繰り広げてたのに〜!……でも、アディンの努力が報われるなら、それはそれで良いよね、アディンはずっとそのために頑張ってきたんだから」

「はい……俺はSランク冒険者になります!」

「っ!今キュンって来────」

「サキュバス〜!アディンくんから離れて!!」

「うわっ、アリア=フェルステだ!逃げないと!」

「逃がさないから!アディンくんに関わらないでって何回言えばわかるの!?」

「頭では分かってるんだけど体が反応しちゃうんだよね〜」

「このっ……!」


 ……本当に、このいつも通りさが、俺の心に安らぎを与えてくれる。

 アリアさんにミレーナさん、シュテリドネさん、エテネーラさん……俺は本当に、周りの人に恵まれている。

 そして、もっとこの人たちの力になるためにも、俺は今日のクエストを達成してSランク冒険者になる!

 俺は冒険者ギルドの扉を開けた────そして、外の日差しが俺の目に差し込んできた時、ふと後ろを見てみると、四人が俺の背中を見届けてくれていた。

 俺と目の合ったアリアさんが、優しく微笑んで言った。


「アディンくん、クエスト達成したらいっぱい祝ってあげるからね」

「ありがとうございます」

「じゃあ、行ってらっしゃい!」

「行ってきます!」


 俺は元気にそう答えると、冒険者ギルドの外に出て、クエストに向かった。

 ────討伐対象はドラゴン。

 いつかは戦う日が来るとは思っていたが、とうとうこの日が来た……前の俺なら勝てなかったと思うが、今なら────俺は今まで培ってきた全ての時間を活かして、ドラゴンのことを討伐した。

 そして、くたくたになりながらも、なんとか冒険者ギルドの前に着いた。

 今日から俺はSランク冒険者になるけど、俺たちの日常に大きな変化はないだろう。

 だが────そこは、俺にとって、とても楽して、幸せな場所だ……これからも、そこでアリアさん大切な人と一緒に過ごしていく。

 俺はそんな幸せな日常を想像しながら、冒険者ギルドの扉を開けた。



 この作品は、この話を持って最終話となります。

 この作品に対する作者の気持ちなどは次エピソードで19時15分にあとがきとして投稿させていただこうと思いますので、ここでは手短に。

 美人で可愛いSランク冒険者の弟子になった俺、俺のことを大好きで過保護な師匠が俺を好き過ぎてクエストに行かせてくれない!〜俺は早く強くなりたいのに師匠は俺とイチャイチャしたいらしい〜という作品をこの最終話まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

 あなたがこの作品を最後まで読んでくださって、ここまでで抱いた気持ちなどをいいねや星、コメントなどの形で送ってくださると本当に嬉しいです!

 また次エピソードに投稿されるあとがきや、別作品でもお会いできることを楽しみにしています!

 この作品を最後まで応援していただき、本当にありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る