第60話 エテネーラさんは感謝してる!
「あ!居た居た!アディン〜!」
俺がクエストに出るために街から出ようとしていると、後ろからエテネーラさんの声がした。
「エテネーラさん、こんにち……は」
俺が後ろから声をかけてきたエテネーラさんの方を向くと、エテネーラさんは胸元の露出が激しい服を着ていた。
それはいつものことだが、今日は特に胸元の露出が激しく、最近は二人で向き合うこともなかったため、今日はいつもよりも少し緊張してしまうな。
「アディンってば、アリア=フェルステと恋人になったのに、まだ私の体に見惚れたりしてたらアリア=フェルステに怒られちゃうよ?」
「み、見惚れてたわけじゃないです!でも……すみません、気をつけます」
「冗談冗談!むしろ私としては、もしアディンが私の体に気を取られなくなったりしたら、私がサキュバスとしてどこか欠陥があることになっちゃうから私に気を取られてくれた方が良いんだよね〜」
「そ、そうですか……それで、俺に何か用事ですか?」
俺が心を落ち着かせてそう聞くと、エテネーラさんは元気に言った。
「うん!アディンが今日Cランク冒険者になってから初めてのクエストだって聞いたから、そのクエストに行く前に私が元気付けてあげようと思って────なんて、それもあるけど、本当は別にあるの……今日は、あんまり柄じゃないって思うかもしれないけど、アディンに感謝を伝えようと思って」
「……感謝?」
俺がそう聞き返すと、エテネーラさんは真面目な表情で言った。
「そう、感謝……アディンが居なかったから、今頃私はしたくもないのに街を襲ったりしてたと思う、そうしないと生きられないから……でも、アディンのおかげで、私は今こうして人の街で、平和な生活を送れてる……一応今でも魔王軍幹部だけど、今後はその立場を使って上手く人間と魔王軍との架け橋になりたいって考えてるの」
「架け橋……すごく良いと思います!」
「でしょ?それでもし私が本当にそれを実現して、人間と魔王軍の争いを無くすことができたら、その時はご褒美に、アディンから人間の源をもらおうかなって思って」
「人間の源……それがエテネーラさんのためになるなら俺も気持ちとしてはあげたいんですけど、アリアさんからそれだけはダメだって言われてるんです」
「魔力と同じで、減ってもまた作られるものだから平気だよ……それに、もし私がそんな難しいことを成し遂げられたらって話だから」
「……わかりました、一応考えておきます、それでは────」
俺が一礼してからクエストに出ようとしたところで、エテネーラさんは俺のことを抱きしめて、俺の耳元で言った。
「私、本当にアディンには感謝してるから……あの時私のこと守ってくれてありがとね……おかげで私、今までの人生で今が────ううん、これからが幸せだから」
「はい……俺も、エテネーラさんと出会えて、魔族の人にもこんなに優しい人が居るんだってしれて本当に良かったです!これからもよろしくお願いします!」
「うん!」
それだけ言うと、エテネーラさんは俺から少し離れて俺に投げキッスを飛ばスト、手を振ってから俺の元を去って行った。
……俺はそれに対して少し恥ずかしいと感じながらも不思議と元気をもらえたので、その活力を今から挑むクエストにぶつけることにした。
────そして一時間後、クエストを達成した俺はギルドに戻ってクエストを達成したことをミレーナさんに報告すると、アリアさんの待っている宿舎の部屋に帰った。
「今帰りました、アリアさ────」
「アディンくん!おかえ────り?」
アリアさんは俺のことを抱きしめようとしたところで、おかえりという言葉に疑問符をつけた。
「……アリアさん?」
「……あのサキュバスの匂いがするんだけど、もしかして抱きしめられたりした?」
「え?あぁ、確か……はい、しました」
「もう!!あのサキュバスには特に注意してって言ってるのに!!」
アリアさんは大声でそう言うと、アリアさんは俺のことを強く抱きしめてきた。
「アディンくんには私の匂いだけついてれば良いの!だから他の女が触れようとしてきたら全部避けて!」
「わ、わかりました……そういえば、エテネーラさんが俺の人間の源────」
「それも絶対にあげたらダメだから!!」
その後、俺は抱きしめられながら、クエストにかかった時間とほとんど同じ時間アリアさんに説教されてしまったが、その後はアリアさんと一緒に楽しくご飯を食べた。
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