魔導司書は言の葉を紡ぐ――ライオネル王国物語

緋星

序章

童話『あかいかみのまほうつかい』

『あかいかみのまほうつかい』


 むかしむかし、ひとりの女の子がいました。赤いかみの、ひとりぼっちの女の子です。

 女の子は生まれつき〈まほう〉が使えました。けれども、うまくつかうことができません。おしえてくれる人がいないからです。

 女の子の生まれたくにでは、〈まほう〉はえらい人たちしかつかえませんでした。なので、女の子はえらい人たちから、とてもきらわれていました。

 ひとりぼっちの女の子には、いえがありません。ごはんもたべられません。そのうちおなかがすいて、たおれてしまいました。

 そのとき、ひとりの王子さまが女の子を見つけました。王子さまは女の子をかわいそうにおもって、おしろにつれてかえりました。

 王子さまは女の子にいえとごはんをあげました。そしてだいじに、だいじにそだてました。

 王子さまは女の子が〈まほう〉がつかえることをしって、くにの人びとみんなに〈まほう〉をおしえるようにいいました。そして女の子をまもるためのおともに、くろいおおかみをえらびました。

 女の子はみんなが〈まほう〉をつかえるように、かんたんなものをつくっておしえました。えらい人たちは女の子をきらっていじわるをしましたが、いつもくろいおおかみが女の子をまもりました。

 女の子とおおかみは、いろいろなところへたびにいきました。おおくの人とであい、そこで〈まほう〉をおしえました。

 こうして、えらい人たちしかつかえなかった〈まほう〉は、みんながつかえるようになったのです。

 あかいかみの女の子は〈まほう〉をひろめた〈まほうつかい〉として、いまもひろくしんじられているのです。

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