回獣
らむね
探偵
競走馬のように走っている。
恐怖というムチを打たれながら走っている。
僕は走りながらつぶやいた。
「僕は何に追われてるんだっけ」
目を開ける、今日がはじまった。朝、目覚めてから僕が最初にとる行動は決まっている。天気予報を見ることだ、テレビ上に無数の太陽のマークや傘のマークが日本地図上に表示される。ベットにいるフィギュアとともに体を起こし、それを大体把握したら次はニュースが流れるのでそのまま聞き流しながら必要最低限の朝ごはんをつくる。
「――母(26)と父(32)は死亡。息子(5)は行方不明です。過去に虐待の疑いがありましたが、関係性があるかは不明です。」
外へ出る準備は慣れているので聞くことに没入しながらそう遠くない未来で完了した。
心地よい揺れに眠くなる。目の前には人生の歩み方という本を精読するほぼゴール直前で足踏みをしている翁、そしてドアを挟んで右側の一際存在感を放っている特別な色をした席には翁が二人と嫗が三人いる、それを羨ましそうにみる新しい命を授かった女が1人。今日はいつもより混んでいて席を譲るべきなのか、十五分は思慮をめぐらしたが気づいた頃にはその女は行方をくらましていた。
目をつぶっていたが、慣性力を感じとって体を起こす。ドアから降りる。
「ここだ、」朝、ニュースで見たマンションだが見た時よりも人だかりが出来ていた。
カメラを持っている人やマイクを持っている人がいる、思ったより人がいるけど僕の仕事を始めることとする。僕の仕事は聞きこみ調査だ、と言っても僕は警察ではなく探偵である。
とりあえず1人目は優しそうなお散歩中のおばあちゃんにした。
「昨日は怪獣のような雄叫びが夜聞こえてきて、起きちゃったのよ。そしたら怪獣さんがいてね...」
「怪獣?」
「そうそう、近所の子供とよく遊んでる人よ」
怪獣が事件を起こしたのか、よく分からない。
2人目はカンフーのようなポーズをひたすら繰り返していたおじいちゃんに話を聞いた。
「あれは凄い声だった、人の声ではない。」
「なんて叫んでるか分かりましたか?」
「ん...なんといってるか...叫ぶというより鳴き声のような感じだったよ......怪物みたいに」
他にも聞いたが、怪獣さんが事件を起こしたとか、凄い声がしたとか、口を揃えて怪獣の鳴き声と言って見たり。よく分からない。
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