運動しなさい!

 私は小柄な女だが、太った兄がいる。

 体重はざっと3桁は超えているだろう。

 今日の運動しない兄に怒りを覚える。

 なので今回は叱るようにした。

 兄貴の部屋をどんどんと叩き、部屋の中に入る。

 淡々とFPSゲーム系をやっていたのを見て、私の限界がきた。

 

「兄貴! もういい加減にしな! そろそろ痩せないと病気で死んじゃうよ!」

「……俺、運動嫌いなんだよね。小さい頃、運動でいじめられたから」

「それは気の毒だけど、とりあえず、食生活でも変えな?」

「……つい、脂っこいものを欲してしまう。あとは炭酸飲料系も」

 

 私は呆れて言葉も言えない。怒りが加速する。

 

「どりゃぁぁぁぁ! 言い訳ばかりしない! 私が運動することをサポートするから、兄貴はゆっくりと歩けばいいよ」

「本当……?」兄貴は子供のように、とぼけて言う。

 

「そうよ、だから今から運動しましょう!」

「でも運動すると俺が俺じゃない感じがして怖いな」

「大丈夫! 運動すればストレス発散できるよ!」


「わかった、運動してみるよ。食事制限もできるだけする」

 

 すんなり、受け入れた兄貴。私は意外だった。

 

「こんな素直に痩せる努力してくれるとは思わなかった。ありがとう、世界で1番最高の兄貴だな!」

「大丈夫? 俺、ストレス溜まるとイライラしやすいんだ。もし何かあったら……」


 「大丈夫、大丈夫! そのときは止めるからね。さあさあ今から行きましょうー」




 


 


「続いてのニュースです。今日午後4時37分ごろ。華原紗奈かはらさなさん(16歳)が首を絞められ死亡しました」

 

 女性ニュースキャスターは淡々と話す。

 

「被害者の兄、フリーター華原琢磨かはらたくま容疑者(22歳)を現行犯逮捕しました。」

 

 テレビに出ている彼女の声が全国に放送される。


 「動機は『妹に誘われて運動してたら、ストレスが溜まり殺人欲が出てきて抑えられず、殺害した』のことです」

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