膨らんで回る


 俺が公園のベンチでため息をついていると。目の前にピエロの衣装を着た女性が現れた。

 

「そこのお兄さんちょっと私と楽しいことをしよう」

「楽しいこと……どんなことですか?」

「それは膨らんで回らないものですよ」


「……膨らんで回らないもの?風船のことか?」

「半分正解です」


 ピエロの女性は持っていた風船を取り出した。


「それでは膨らみますよ。見ててください」


 風船の先を口に入れ大きく吐く。

 ところが全然膨らまない。

 男は不思議そうに感じていた。


「なんでその風船は膨らまないんだ?穴が空いているんじゃ?」

「そんなことないですよ、着々と膨らんでます」


 男は残念そうな表情で見る。

(せっかく博打物をやめようとしたのに、この有様ありさまだよ)


 彼は大きいため息を吐きながら声を出した。

「それで何が膨らんですか?」


 ピエロの女性は微笑みながらいう。

「はい! あなたの借金が膨らみましたよ」


「回らないって首のことか……」

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