インタビュー

<「ニレンさん、インタビューがあるのですけど――大神殺しはどういった戦場だったのでしょうか?」>


 スクリーンにデカデカと映されたニレンもまた、笑ってはいるが楽しくなさそうだ。


 勲章を授与されるだけのはずなのに、ニレンの通り道は枯れた花が咲いているかのようなメディアのインタビューで大荒れ。あの中に人間様が混じっていたら結晶人の体当たりで死んでいるだろう、まさにレッドカーペットと赤いバラではなく肉片で荒れた道の出来上がり。うむ、素晴らしき人生の花道ではないか。


<「聖戦カオスは全てにおいて不利な戦場でした。それに大神との決闘は初めてだったので、神や悪魔に勝利してきたぼくでもかなりの不安がありました」>


<「侵攻作戦のほぼ全てに加わっているニレンさんでも不安な時があるということですね?」>


<「はい、結晶人は戦場こそが生きる喜びを味わえる舞台になりますが、生き残ってこそ安心できるので、それまでは不安ばかりです」>


<「勝利して生き残った今はどういったお気持ちですか?」>


<「結果勝てたわけですが、戦死者が今までの聖戦の比ではなかったことや同期の主力メンバーを失ってしまいまして、戦に勝っても負けた気持ちにさせられました。次の侵攻作戦までには調子を整えたい考えですけど……とても複雑な気持ちにあります」>


<「こころとカラダのケアはあまりできていないのでしょうか?」>


<「今はほぼすべての任務にぼくの代役がいるので、そういったケアはできています。しかし気持ちの切り替えが上手くいかなくて、恍惚とする時があるんです。なので、命ある今は勝利の美酒に心身ともに浸っています。お恥ずかしい話になりますが、寝る前は考えないようにと、毎夜は依存するかのように美酒を浴びてから寝ているんです」>


 おうおう大英雄ニレンさん、インタヴュアーに嘘はいけないだろ。酒に酔えないくせに酒に頼るなんて言うくらいなら、おれの酒飲みに付き合ってくれよ。


<「帝国が獲得した土地と捕虜となっているエンルル人はどうなる予定ですか?」>


<「それについては――」>


 と、これ以上ニレンの話を聴いていてもどうにもならないので、おれは他の人の邪魔にならないようにコーカサス大通りの雑踏からヒト気のない路地へと移動しておこう。雑踏警備は警備職従事者や強制力を持つ実力組織の連中に任せておくとして、無職になったおれは無職なりに、成長することのない己の心と体と結晶を鍛えに行くとしよう。


 それでは、次の出番まで休憩させてもらおうか。

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