古代ローマもう一人の英雄物語
シャリアちゃんねる
第1話 始まり
桜の花が咲く季節が訪れた現代日本には、新たな季節を感じさせる、
他の行事等も行われている。
社会ではこの季節、色々な事が始まろうとしている。
学校では新学年を迎えてクラス変えで楽しい時を迎える者、以前のクラスを
惜しむ者、そして通常の会社等では配置換えで大変な者等、社会は様々な
人々で溢れていた。
某王手企業に勤める柿薄総司〔かきうす そうじ〕もその一人である。
この春から主任から新係長に昇進した総司は、特に新たな仕事内容になるわけ
では無く、以前から膨大な仕事の量に疲れ果てていた。
ある平日、夜遅くまで仕事をこなした新係長は疲れの為、同僚の飲みの誘いに
軽く付き合い、その後は真っすぐ帰宅した。
程よく酔っていい気持ちになった総司は、すぐ寝巻きに着替えるや早速眠気に襲われる。
総司「うーん気持ちいい、このまま死んでもいいや・・」
総司はそのまま意識を失い、奇妙な夢を見る。
ふと目を覚ますとボロ着で横たわっている自分を見る。
自分が年はのいかない子供に姿を変えていた。
総司「ああ、これ夢だ。夢の中でこれ夢って分かるのは何年ぶりかな」
町ゆく人々の話が聞こえてくるが、何を言っているのかわからない。
一体何語なんだろうと思うが、どの道、とりとめもない言葉の様なもの
だろうと思い、気にせずにいた。
そうこうするうちに、総司はお腹がすいてきたのである。
総司「夢なのに何故腹が減るんだろう。しかし困ったなあ腹が減って苦しいや」
空腹でたまらない総司は、夢とは故変な気を起こしてはだめだと思って困り果てが、
どうせ夢だからと幸い近くにあった市場で食糧をこっそり盗んだ。
総司「夢の中とは言え、とうとう犯罪をしてしまったな」
罪悪感に満たされながら空腹を満たす総司は、衣食足りて礼節を知るとはよく
言ったものだと思ったが、罪だけでなく恥の念でもいっぱいであった。
そして時間が経ち眠くなる。
人影を避けて建物の隙間で睡眠をとった。
総司「また明日激務が待っているとは言え、早くさめないかなあこの夢」
昨日と同じ場所、同じ状況で目が覚める。
また同じかと思いしばらくすると、またお腹が空いてきたのである。
総司「どうしたんだろ、ちょっとこの夢変じゃないか。睡眠とって目が
覚めても同じ所に同じ状況でなんて」
子供の総司には、一度きりと決めていた盗みも、再度行わなくては
ならなくなった。
市場の食糧売り場に行きパンをかすめる。
店主「あっ、このガキ、パンを盗みやがったなこら!」
血相を変えて向かってくる店主の態度に総司は見つかったと思い、一目散に
逃げた。
逃げ切った所で空腹を満たし、真剣に困惑しだす。
しばらくさっきの場所付近には近づけないため、この辺りを観察して
時を過ごした。
そしてまた眠くなり、昨日とは違う場所で一晩睡眠をとる。
目が覚めるが、また寝た時と同じ場所、同じ状況であることに、今度は本気で
悩み出しす。
これは夢にしては異常であると。
じきにまた空腹になるのは分かっていて、何回も同じ場所で盗みを繰り返すことは
危険であり、子供の姿である以上、走力も子供である。
更にまた空腹になった総司は、昨日の市場に戻り別のパン屋で盗みを働く。
また睡眠をとり、ばれていないパン屋でパンを盗む。
同じことをするたびに、何度かばれそのたびに必死で逃げ、総司は捕まっては
いないものの、その市場の常習犯になっていた。
総司は何回も盗みをしなくて済むように、一気に食糧を盗んで蓄えていたが、
それもそこをつき、子供の足と知らない土地ということもあり、別の市場に移る
こともできず、いつもの市場でこっそり食糧を確保しようとするのである。
その先の食糧売り場で、いつも通り現場を押さえられ一目散に逃げたのである。
とうとう町中の食料品市場の店主たちが、総司対策をしていたのである。
店主達「また例のクソガキが表れたぞ!今度という今度は逃がすな!」
追いかけながら包囲しようとする食料品売り場の店員達に包囲されそうに
なりながらも、総司は必死に逃げた。
そしてドスッと一人の青年にぶつかって、こけてしまいその足を止めてしまった。
店主「あ、キケロ先生そのガキを捕まえてください。そいつは盗みの常習犯
なんです」
総司がぶつかったその人こそ古代ローマの弁護士であり哲学者でもある、
マルクス・トゥッリウス・キケロであった。
キケロ「君、店主達の言っていることは本当だろう。現に君は逃走していた。
なぜこんなことをするのかな?親はどうしたのかな?」
総司は逃げようとしたがキケロに捕まえられ、言葉も分からず現代日本語で
必死に事情を説明するのである。
学者であるキケロには、異国の言葉の様な物を話す総司に興味を
持ったのである。
店主「キケロ先生われわれの受けた被害は少なくありません。今すぐそのガギを
ポリスに引き渡しましょう」
キケロ「待ってくれ。この少年の今まで盗んだ代金を私が払う。それで勘弁して
やってくれないか」
店主達は他でもないキケロの頼みとあってはこの様な一件、大事にするはずもなく、
その後、総司はキケロに連れられてキケロ宅へむかった。
これが有名なキケロかと思い、現代日本語で話しまくる総司の言葉を、キケロは一切
理解出来なかったのも当然であったが、ラテン語で話しかけるキケロにも総司は
言葉の理解が出来なかったのも無理はなかったのである。
好奇心旺盛のキケロは帰宅するや、早速総司の言語の研究に入った。
キケロの書籍にはずらりと本が並んである。
これらを読もうとする総司に、キケロは大いに関心を持ったが、総司はラテン語が
まるで分らない。
この時、総司はラテン語を口頭でも文字でも理解しようと決心する。
そしてその勉学に、現代日本語の文字で書いたメモをある時見たキケロは、
間違いなくこの子の話しているのは、他地域の言語であり文字も存在すると確信し、
総司を研究するのである。
数か月後、総司は片言ではあるがラテン語を話せる様になったがキケロのほうは、
現代日本語が全く話せない。
この差を見て総司は思った。
この姿になり脳も柔軟さが、子供の様になっているのではないかと。
と同時に現代日本での各種ノウハウの思考力に、子供並みの頭打ちの限界を
感じたのである。
元の思考力に戻るには年を重ねるしかないと、この時思ったのである。
片言であるが徐々にラテン語が話せる様になった総司にキケロは聞いた。
キケロ「君の名は何というんだ。君はどこの生まれだ。親御さんはどうした?
最初話していたのはどこの地方の言葉か、どこの文字かそして見た目は
ローマ人だが君はどこの出身か」
総司「カ・・カキウス・ソウジ」
キケロ「カキウス・ソウジか。それから?」
しかし総司は本名を名乗って、親はいないとだけ答え後は一切答えなかった。
そしてキケロには自らの出生を全て隠しておこうと思ったのである。
総司の記憶では、キケロが居ると言う事は、ここは帝政ローマにかわる直前の
共和制ローマであると理解し、自らの仕える人は弁護士であり哲学者等である
この人ではないと思ったからである。
総司は、王手企業で営業経験もあり、そのときマーケティングの為にも、
趣味が高じて、孫子の兵法[孫子十三篇]やクラウゼヴィッツの兵法[戦争論]
等を習得していたからである。
何より実戦に自信があった。
そして現代日本では、会社で新係長は無断欠勤したため、上司が一人暮らしの
総司の携帯に電話を何回もかけたが出ない。
三日続けて無断欠勤した総司のマンションに、上司が管理人に連絡し、管理人は
うつ伏せで寝ている総司を見つける。
管理人「柿薄さん、柿薄さん起きて。会社の上司の方から連絡ありましたよ」
管理人はいくら呼んでも目を覚まさない総司に異変を感じ救急車を呼んだ。
アパートにうつ伏せの総司は息をしていなかった。
医者が診断するや既に息を引き取っていたのである。
死因は過労死であった。
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