白薔薇の嫁入り -黒竜侯の娘と翠の貴公子-

みんと

プロローグ 運命

 罵声、怒声、ワイン…自分を囲むのは、いつだって汚い色ばかり。

髪から滴るワインを見つめ、侯爵令嬢チェリフィア・ノアルージュは心の中でため息を吐いた。


 こうして嫌がらせを受けるのは、もう何度目だろう?

白銀に輝く長い髪も、淡いクリーム色の綺麗なドレスも、また汚れてしまった。

だけど、私が黒竜侯こくりゅうこうの娘である以上、これは、抗いようのない運命だから。

きっと、変えることのできない、運命さだめだから……。


 でもいつか、いつか別の場所へ羽ばたいて行けたら、それはどんなに幸せだろう。

こんな泥闇の中に生きているのに、私は今でも光を求め、手を伸ばしてしまうんだ。

儚い夢は、花びらのように散りゆくだけなのに…――。



 ――…そんな彼女の元に、ある日突然風が吹いた。

風は彼女の運命さだめさらい、一人の青年の元へと導いて行く。


これは、「白薔薇」と呼ばれた美しき侯爵令嬢の、運命と恋の物語…――。

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