初めての彼女と寝不足の
「あ、
「お、お父さん氷! 氷なかったっけ!?」
ドラムを運び終え、玲奈さんたちの元に戻る途中で玲奈さんと
「何かあったの!?」
「
「ちょ、何があったんだ!?」
「頼斗君! それが、
「頼斗手伝って! 車の中で寝かせるから!」
「わ、分かった!」
車に走り、扉を開いて椅子を倒し、
「双葉さん、何があったんですか?」
「ううん、それがよく分からなくて……車の中でもちょっと眠たそうには見えたんだけど、降りた途端ふらっとしちゃったみたいで……熱中症の季節でもないんだけどなぁ」
「とにかく氷! お父さん見つかった?」
「お姉ちゃんあったって! ほら、らい兄これ使って!」
用意してあったらしいクーラーボックスから氷をビニール袋に包み、タオルでくるんで手渡した
「
「どうしたんだ? 気持ち悪いのか? 吐き気はあるか? あったら、手を……無いんだな? じゃあ頭痛は? これも無い……腹痛、も無いのか。じゃあ倦怠感は? あるんだな。分かった……熱中症っぽくはないな。一先ず、大丈夫そうだ」
「ほ、ほんと? 良かったぁ……」
「でも本当に大丈夫? 一応、救急車とか呼んだほうがいいんじゃ……」
「そうだな。念には念を入れて救急車を――」
「そこまでしなくて、いいから」
ぎゅっ、と手を握られると同時、すぐそこから声が聞こえた。慌てて見下ろすと、
「おい、無理しなくていいんだぞ?」
「本当に、大丈夫よ。ちょっと寝不足で、立ち眩みしただけだから。……はぁ、ごめん、でもちょっと寝かせて」
「お、おう……じゃあ俺、降りてるな。
「うん、ありがと」
どこか不機嫌そうな、と言ってもそれは睡眠不足から来ていそうな表情で言う
「
「本人は大丈夫って言ってるけど、少し心配だな。午後までは出番がないし、しばらく休んでてもらおうかと思うけど」
「そうするのがいいね。あ、良かったら私
「そういうことなら私も残るよ?」
「ううん、
「そう、だね。そうしようかな。何かあったら、いつでも連絡してね」
「分かった。それじゃあ、楽しんできてね」
玲奈さんは、優しく微笑みながら手を振り、俺たちを見送った。
「玲奈さん一人で大丈夫かな? やっぱり私たちも残ったほうがいいんじゃ……」
「いや、
「でも、
「そうだね。緊張で眠れなかったとか?」
「今更それでねられなくなることも、無いと思うけど、あり得なくはないよな」
多くの人達の前での演奏だって少なくない数熟しているし、昨日だってステージで主役を演じ、クイズ大会にも出場した。楽しみで寝られなかった、と言われる方が納得できそうなものだが、それで眠れなくなるようなことも……いや、あながち否定はできないか。
「林間学校とか修学旅行とか、結構二日目眠そうにしてたな、
「え、
「あー、確かに。昔お泊りとかした時は、
「逆に
体育館に向かいながら、そんな話をする。
「
「ううん、聞いてないかな。車に乗ってる間はずっと眠たそうに瞼閉じたり開いたりしてたし。一応聞いてみたりはしたんだけどね、頷くばっかりで」
「相当眠かったのかな。もしかして徹夜?」
「って、お父さんどこ行くの? え、コンビニで冷たい飲み物買って来る? そうだね、お願い。でも、扉明ける時には気を付けてよ」
昨晩、何かあったのだろうか。
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