第7話 新入生代表挨拶の暗号(2)


 俺も自分の教室に入ろうと、ドアに手を掛けたら、中から俺の名前を呼ぶ声がした。「はい」と返事しながら、ガラリとドアを開けると、大勢が一斉にこっちを見る。


 初日から遅れるなんて、ありえないって思ってるんだろうな。


「神木は、俺です。遅れてすいません」


 教室の中に入ろうとすると、細長い眼鏡をかけた男の先生が、俺の机から配布物をまとめて、へツカツカとこっちへ向ってくる。


 眼光が鋭い。怒ってるのか?

 もしかして、遅刻した奴に居場所はないって話かもしれない。


「よかった。神木、先に体育館へ行っててくれ」

 表情と言葉が一致しない先生だ。

「は? 俺だけって、なんでですか?」

「お前は新入生代表挨拶があるから、舞台袖で待機することになっているんだ」


 新入生代表挨拶?

 聞いてない。一切、聞いてない。


「悪いな。本当は俺が体育館に案内することになっていたんだが、もう時間がない。一人で行けるか? いったん外に出て左だ」

 一人でトイレに行けない子供の扱いだな。

「……はい。何回か来たことあるんで、それは大丈夫です」


 他は全然ダメです。


「じゃあ、頼むぞ」

 

 ピシャリ、と目の前でドアが閉まる。


 頼むぞって……。


 どーすんだよ!!

 原稿とか、何も用意してねえよ!! 

 大体、作文とかそういうのは、真紀の担当だろう!?


 どうしよう。

 俺、バックレて、真紀にやらせようかな。

 でも、あとでぶっ殺されるのは嫌だ。困った。



 『今日、困ったことがあったら開けろ』


 

 そうだ、静月の手紙!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る