隣の結月さんち

成田要

こんな放課後なんて、、、

クラス一番の美少女で優等生の結月さんが風邪で学校を休んだ。

僕としてはこの小学校に転校してきたばかりなので、なんとも思わなかったが、周りの子はそうではないらしい。

「どうする?俺、プリント届けに行きたくねぇや。」

「会いたいけど、私も家には行きたくないなぁ~。」

「あいつの家に行きたいやつなんて、、、。」

みたいなことをみんなで話し合っている。聞きようによっては、いじめられてるとか悪口みたいに聞こえるが、そんなことはない。

クラスでも放課後でも結月さんは皆と仲良く笑って遊んでいるし、信頼もされている。

では、何故皆が結月さんの家に行きたがらないのか?

僕は、窓の外をぼけーっと見ていたら机にスッと結月さんに渡すプリントが置かれた。

「さ、佐々木、お前の家って結月んちの隣だよな!あとは任せた!!」

そう言ってクラスの皆がパーッと帰っていった。

(どうしよ、、、)

結月さんとは話したことがない。単純に気まずいと言うのもあるが、皆のあの嫌がるというか怯える感じが怖かった。

(、、、でもそうか。僕の家の隣なんだ、結月さんって。)

僕は昔から周りの事に興味がなく、ある意味鈍感な奴だった。例えば、席替えをして隣の子に「よろしくね。」と言われても家に帰った時点で誰だったか覚えていないほどだ。、、、そういうと記憶障害みたいに思うかもしれないが、至って健康で普通の男子小学生なのだ。

それから僕は席を立ち、ランドセルを背負い、階段を降りて下駄箱から靴を取った。靴を履き、紐をちょうちょ結びをして、学校を出た。

(にしても女の子か〜。まぁプリントを届けるだけだし、話すわけではないもんなぁ。)

僕の学校は家から近いのですぐついた。そしてプリントを受け取った自分に腹がたった。もちろんプリントを押し付けたクラスメイトにもだ。

周りに鈍感な自分もこのときは呪った。

結月さんの家は、一見、お金持ちの家、って感じなのだが。それだけなら何も問題はない。だが、、、。

「なぁ、清子おおぉ!!これバラさないと入らねぇよ。何で部長はこんなに殺せっつったんだ。」

「うるさいわねあなたァァ!!今、依頼の電話なのよ!!そんなもんあのブツでなんとかしなさァァい!!」

「いいかい?結月。お兄ちゃんのお手本を見てなさい。銃はここを引くと弾が出るんだよ。やってごらん。」

「こうかな?」

と、いう感じだった。

そう。結月さんちは、殺し屋一家だったのだ。

僕は、情けなく脚をガタガタと震えながら混乱していた。

(どうしよ、どうしよ。家に入ったら絶ッッ対に殺される。ポ、ポストに入れて帰ろう。てか何で結月さん風邪なのに冷えピタしながら銃の練習してんだよ!!!)

僕は、ポストにプリントをカタンと入れた。すると頬に何かがかすった。ツーと赤い血が滴る。

「あ、佐々木くんだ!敵かと思って撃っちゃったよ~。」

(神よ、、、。)


これが、二十年後に妻になる結月との出会いだった。

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隣の結月さんち 成田要 @yugitora

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