第26話 終わりと始まり
私の
円柱状の杖先がバターを抉るかのようにぬっと地面に穿つ。途中で固い地盤に当たる感触があるとそれ以上に
それ程までに体を酷使したとしても、明確なまでの差というものが先頭と付いていた。足が健在だった頃の歩速とはいかない。きびきびとした歩調で私のことなんぞ配慮してはくれないラインハルトの姿は遥か彼方で点となって、彼の体のほとんどは白んだ灯りの一部と化していた。
ラインハルトを先頭に、暗がりが足下を呑み込んで判然としない道を私たちは
立てば
「そういえば魔物と遭遇しないっすね」
ダンテの呟きが私の元まで
彼の
レイニーは最後尾で私の後ろに控えている行動自体にさして変わりはないのだが、
それから
やはり私たちの目的地にはクラスメイトがいる。しかしながら、一つの心配がもたげ始めた。
私の所属していた高校は地元では有数の進学校であったために、一クラスにおける生徒数は30と他校と比較してもかなりの数であった。だけれども、
はっきりとしない思考かつ、
「到着したみたいっすよ」
いつも間にか私の隣にいたダンテが私の肩を叩いていた。俯いていた私は地面に映る影が異様な程後方に伸びていることに気が付いた。ランタンから放たれていた淡い光とは
緋色にゆらゆらと揺らめき放つ松明がその建物を囲うようにしてその輪郭を浮き上がらせている。白煙が空中を揺蕩いながら夜空に霞をかける。
「ここは……」
それ以上言葉が出なかった。見覚えはないが私は確かにそこに居た。確かに私はそこに居て、何かが私に大きな影響を与えたはずだ。しかし、どうしてか、その内容を鮮明に思い出すことはできない。まるで黒洞々たる暗闇が視界に覆いかぶさっているようで、その暗闇を拭い払うことはできないのだ。激しく早鐘を打つ気持ちが胸騒ぎを引き起す。
その建物は深緑色の苔むした岩を切りぬいたような見た目である。それ以上は筆舌に尽くし難い、この世と切り離された奇々怪々の恐怖が景色に溶け込んで調和していた。
星が夜空に煌めく。月がその姿を幻想的に映す。
「ようやく皆様にお伝えすることができますね。ここはアパナ聖殿」
そしてアザミ様。そう彼に告げられた時に彼の蒼い瞳が飛び込んだ。それは余りにも一瞬で、永遠のように長い刹那であった。
「貴方には転移者ではなく、別の人物としてこの世界で過ごして欲しいのです」
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