デートにすらならない

春色の雪解け。

第1話 放課後の熱源

 放課後の教室に、茜色のカーテンが翻る。

 春色の花弁がふわりと舞って、眠る彼女の瞼に触れた。

 一瞬。その一瞬に、どうしようもなく胸が疼いて。

 触れたい。

 感情に突き動かされるように、衝動のまま手を伸ばす。

 くぐもった声を漏らして微かに動く彼女に、触れかけて止まる情けない指先。

 彼女は、動かない。

 それでも。

 引力めいたその姿に、どうしようもなく惹かれてしまう。

 あと数センチ。

 胸の内の熱は蟠ったまま、その距離が埋まることはない。

 なのに。

 好きだ。どうしようもないくらい。

 風に乗せたはずの一言に彼女は微笑んで、その華奢な指先で俺の唇に蓋をした。

 放課後の教室に、この感情を潜めたままで。

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