絶滅の旅
古野ジョン
プリンセス・ゼロ
プロローグ
昨日と変わらず、太陽の光が強く降り注いでいる。
腕時計を見ると、今の気温は45℃だと表示されていた。
これが今のこの国――いや、かつて日本と呼ばれていたこの島の日常だ。
文明と呼べるようなものはこの島から失われた。
雑草か虫を、水たまりで汲んだ水でよく煮て食べる。
道端に上着を敷いて寝て、起きたら仕事をする。終われば寝る。
毎日がその繰り返しだ。
俺の名はタナカタツヤ。25歳。
日差しから身を守るため、黒いコートと長ズボンを履いている。
こんな気候にしては変な恰好だが、便利なことの方が多い。
人と会ったときは元公務員だと名乗っている。
嘘というわけでもないし、相手に好印象を持ってもらえる。
なるべく相手に警戒心を持たせないことが、俺の仕事において重要なのだ。
今の俺は、日本中――日本という国はもはや存在しないが、便宜上そう呼ぶ――を歩き回って仕事をしている。
さながら大昔の旅役者のようだが、俺の仕事はそのような浪漫のあるものではないのが残念だ。
さて、俺の旅には同行者がいる。
ゼロという女性型ロボットだ。
初めて会ったときにゼロだと名乗ったのでそう呼んでいる。
ロボットというものの、外見的にも機能的にも人間と区別がつかないと言っていい。
だがメイド服を着ているのはなぜなんだろう。
ゼロは鼻筋の通った綺麗な顔立ちをしていて、いわゆる美人という奴だ。
年代的には、10代後半くらいの見た目をしている。
ロボットは美「人」ではないだろうとも思う。
だが美人と呼ぶとゼロが喜ぶので、そういうふうにしておく。
これから皆に紹介するのは、ゼロと旅をした最後の半年間だ。
皆にとって、何かの足しになれば幸いである。
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