校内放送
ニッケルとリチウム
校内放送
実家の近くに小学校があるんですけど、部屋の窓を開けておくと校内放送の内容が大体聴こえるんです。
放送係の生徒がやってるんですけど内容は大体、「おはようございます。今日は〇月〇日〇曜日です。今日も元気に…」「お昼休みになりました。皆さん外に出て友達と…」みたいな感じで。
自分もその小学校出身だったから聴く度に「何年経っても内容変わらないなあ」位に思いながらどことなく懐かしさを感じてました。
3年程前の夏。
その日は特に予定もなく、2階の自室で暑さに茹だっていたら
ピンポンパンポーン
って放送が始まる前のやつが聴こえまして。
ただその音が、やけに音割れしてたんですよ。
放送の内容も
「〇〇 〇〇(女性名)さん、今すぐ繝シ繝ォまで来てください。〇〇 〇〇さん。今すぐ繝シ繝ォまで来てください。」
といった感じで、音割れやらノイズやらで殆ど聴き取れないんです。
もっと気になったのが、喋ってる声は明らかに成人してる男性のものなんですけどやけに舌っ足らずというか、大人がわざと子供のマネをして喋ってるみたいなはっきり言ってしまえばやや不愉快な喋り方でした。
変な教員がいるんだなと思ったんですがそこでふと自室のカレンダーが目に入りました。
8月16日。
小学校は夏休みなんですよ。
生徒が夏休みだからといっても教員は仕事があるでしょうし、何かの用事で学校に来る子もいるでしょう。
でもわざわざ校内放送で呼び出しますかね?
どこか違和感が拭えないその状況に言い様のないザワザワ感を覚えていると再び
ピンポンパンポーン
という割れた音の後に、相変わらず下手糞な子供のマネのような喋り方で、しかしノイズ混じりの中でも今度ははっきりとその内容が聴こえました
「〇〇さーん、みんなまってますよー。はやくきてくださーい。」
思わず1階にかけ降り母や祖母に「今の何!?」と訪ねましたが
二人共「何が?」といったような反応で。
それから9月になるまで一度も校内放送が聴こえることはありませんでした。
あれが何だったのかは未だにわからないままです。
その数日後、件の放送で呼ばれていた名前と同じ名前の子が行方不明になったことをひばり放送で知って以来、
放送の内容はあまり聴かないようにしています。
校内放送 ニッケルとリチウム @nickelium
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます