転生先で魔法使いに拾われた私は、王宮でメイド兼スパイになる

春白 ルナ

第1話

 ある日目覚めると、そこは雪の上だった。


「…は?」


 ここはどこなの。


 目覚めたばかりで全く使い物にならない頭をフル回転してみても答えは一向に出てこない。

 

 もう夢ということにして考えるのを放棄しようかと考えていたとき、強い風が吹き私を覆っていた霧が晴れた。


「な、んなの、ここは」


 辺りは薄暗く猛吹雪の中、私は雪山の頂上付近に座り込んでいた。


「寒い、」


 自分の置かれている状況を理解した途端に凍え死ぬような寒さが私を襲った。


 これは夢ではない。現実に起きていることなのだと、そう実感せずにはいられなかった。


 どうしてこんなことになっているのか想像もつかない。


 だんだんと手足の感覚がなくなってきた。


 私はもう死んでしまうのかもしれない。


「死にたく、ない」


 思い残したことがあるわけではない。ただ、とてつもなく怖いのだ。


「助け、て、、誰かっ、」


 こんな声が誰かに届くわけもなく、私は意識を手放していった。




 意識を手放した後、気づくと何もない真っ暗な場所にいた。


 ここが死後の世界と言われるものなのかなんなのか私にはわからないけれど、きっと私は死んでしまったのだろう。


 なんとも言えない虚無感に襲われていたとき、遠くから微かに人の声が聞こえてきた。


「えっ、今のって」


 その声の主を探そうと辺りを見渡すと、僅かだけど光が差し込んでいる場所があった。


 私は少しの希望を持ちながらその場所に向かって走り出した。


 近づけば近づくほど辺りは明るくなり、次第に目を開けられないほど明るくなっていた。


 瞼の向こうに感じる光が落ち着いてきたのを感じ目を開けると、そこはまさに天国のような場所だった。


 下を見ると地面は雲、上を見ると青い空。


 周りには何もなく、遠くに神殿のようなものが見える。


 そんな場所でポツンと、私は西洋のお城にあるような豪華なベットの上で只々唖然としていた。


「おや、目を覚ましたようだね」


 すると突然、誰かの声が聞こえてきたのだ。


 

 

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