もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

第5話 予想通り怒られました

友人たちと再会を果たした後は、先生の話を聞き、そのまま解散となった。

「ユリア、せっかくだから食事でもしていかない？もちろん無理にとは言わないわ」

「ありがとう、でも今日はもう帰るわ」

本当は皆と過ごしたい。でも私はお金を持っていないし、何よりも寄り道をしたら叔父様たちに怒られるだろう。あっ、でも今朝叔母様のご機嫌がすこぶる悪かったから、何をしても怒られるのだろうが…

「そう、分かったわ。それじゃあ、気を付けて帰ってね」

「ありがとう、皆もね」

そのまま門へと向かう。私は既にあまり体力が残っていない。門まで歩くだけで、息が切れてしまうのだ。

「はぁ～、はぁ～。本当に体力がない体ね…」

ふと前を見ると、こちらを見ているブラック様と目があった。

「ブラック様、またお会いしましたね。今お帰りですか？」

嬉しくて彼の元に近づいて行った。

「べ…別に俺は君を見ていた訳ではない。それよりも、かなり疲れている様だが、大丈夫かい？」

「ええ、問題ありませんわ。私の事を心配してくださり、ありがとうございます。それでは失礼いたします」

彼に頭を下げ、そのまま馬車に乗り込んだ。今日は２回もブラック様に会えるだなんて、幸せね。彼はあの時と変わらず、とても優しかった。友人たちも私の事を覚えていてくれたし、私の学院生活も、楽しくなりそうだ。

温かい気持ちのまま屋敷に戻る。そしてそのまま自分の部屋に戻ると、ベッドに倒れ込んだ。私って本当に体力がないわね。とにかく着替えないと、制服が皺になってしまうわ。大切な私の制服。

ゆっくり起き上がり、いつものボロボロのワンピースに着替えた。このワンピースは、使用人に頼んで頂いたものだ。私は基本的に、洋服などは買い与えてもらえない。それでもここに置いてもらえるだけ、有難いと思っている。

着替えをすますと、今朝の残りのパンとスープを食べる。さあ、少し休んだら洗濯物を取り込まないと。それから…

そんな事を考えていると、使用人がやって来て本家に来るようにと指示が入る。きっと今日の事を怒られるのだろう。

そう思い、本家へと向かう。するとやはり、怖い顔をした叔父様と叔母様、カルディアが待っていた。

「叔父様、叔母様、カルディア、ごきげんよう」

いつもの様に笑顔で挨拶をする。

「何がごきげんようだ！相変わらず気持ち悪い笑みをうかべやがって！カルディアに聞いたぞ。お前、公爵令息のブラック殿に絡んでいたそうじゃないか！貴様の様な人間がブラック殿に絡むだなんて！万が一公爵家からクレームが入ったら、どうするつもりだ！」

「本当に図々しい女ね。だから私は貴族学院に行かせる事には反対だったのよ！病気でベッドから動けないという事にしておけばよかったのに」

「そんな事を言っても、巷では我が家がユリアを閉じ込めているという噂が流れていたのだぞ。さすがに学院まで行かせないと、我が家の評判に関わる。本当に兄上は厄介な娘を残して逝ったものだ。あの時お前も死んでいればよかったのに！」

「本当よね！いい？これ以上我が家に迷惑を掛ける様なことはしないで。わかったわね」

「はい…承知いたしました。それでは失礼いたします」

よかったわ、今日は殴られなかった。ラッキーね。急ぎ足で部屋から出ようとした時だった。

「本当にどんくさい女ね。さっさと部屋から出ていきなさい」

「キャァ」

後ろから思いっきりカルディアに蹴り飛ばされ、バランスを崩して転んでしまったのだ。手をついたため、ひねってしまった様だ。

「カルディア、気持ちは分かるが、しばらくはこの女を貴族学院に通わせないといけない。殴ったり蹴ったりは控えてくれ」

「お父様、いつまでこの女を学院に通わせるおつもりですか？私はこの女の顔を見るだけで、虫唾が走りますの」

「そうだな、貴族界での噂が消えたら、病気が悪化したとでも言って学院を辞めさせればいい。幸い今にも死にそうな顔をしているし、すぐに噂もおさまるだろう。とにかく数ヶ月の辛抱だ」

やっぱり私を数ヶ月学院に行かせたら、辞めさせるつもりだったのね。私の命が尽きるのが先か、学院を辞めさせられるのが先か。とにかく残り少ない時間で、沢山思い出を作らないと！

おっとこんなところでゆっくりしていると、また怒鳴らわれるわ。急いで立ち上がり、部屋から出ていく。

部屋に戻ると、タオルで捻ってしまった腕を冷やす。見たところ大したことはないようだけれど、ただでさえボロボロの体なのに。とにかく転ばない様に気を付けないと。

明日からいよいよ学院が本格的に始まる。ブラック様はもちろん、友人達とも一緒に居られる。なんだか楽しみになって来た。早く明日にならないかな…