最強のゲーマーが自分の体をコントローラーで操作できたら無敵説

嬉野K

【話しかける】 ←↙↓↘→←↘←→◯

第1話 コマンド

「はい。これがキミ自身のコマンドね」


 そう言って渡された紙には、次のようなことが書いてあった。



☆ ☆



☆基本操作



話しかける       ←↙↓↘→←↘←→◯

パンチ         □

キック         △

つかみ         ◯

防御          L1

回避          ✕

うなずく        R2

首を横に振る      L2 

移動          左スティックor十字キー

視点移動        右スティック

 


☆必殺技



ブラックダイナマイト  ↓↘↘→◯

ウルトラチョップキック ↓↓□△  

すごい投げ技      左スティック一回転◯



☆超必殺技



慚愧黒竜猛襲秋霖波   ←↙↓↘→←↘←→□

龍王鬼神乱舞拳2     →□←△→□↓◯□



☆ ☆



「なにこれ? というか、ここどこ?」


 なんだこの真っ白の部屋は……真っ白で小さな部屋の中にイスと机だけおいてある。潔癖な取調室かよ……


 目の前にいる美しい女性は頬杖をついて、


「ここは死後の世界さ。要するにキミは死んで……次の世界に転生するの」

「えぇ……それは困りますよ」

「そうなの?」彼女は意外そうに、「キミは人生やり直したいとか、異世界に行きたいとか……そんな願望が強い人だと思ってたよ」

「異世界によってはゲームができないじゃないですか」


 僕はゲームをやるために生きている。


 いくら異世界転生先で最強になれたとしても、ゲームがないなら嫌だ。


「そんなキミに朗報だ」ゲームがある異世界なのだろうか。「はい、これ」

「……?」手渡されたのは……「……コントローラー?」


 青色の……サードパーティ製のコントローラーって感じの軽いコントローラーだった。


 適当にボタンを押してみる。ちょっと硬めの感触で、あまり好みじゃない。


「このコントローラーがどうしたんですか?」

「それでキミを動かすんだよ」

「……へ……?」


 僕を動かす……コントローラーで?


「そう……これを見な」女性が指をパチンと鳴らすと、空中にディスプレイが現れた。「画面に映ってる男が見えるかい?」

「見えます」


 屈強な男が画面には映っていた。顔面も怖いし……ヤクザかなんかか?


 その人は道のど真ん中に突っ立っていた。


 3Dアドベンチャーゲーム……? そんな感じの画面だ。 


「この人が……どうかしましたか?」

「それがキミなの」なに言ってんだこの人。「キミの経歴は調べたよ。オンラインゲームでは都市伝説的な存在になってる男だよね」

「……都市伝説……?」

「知らないの?」知りません。「まぁ要するに……キミがオンラインゲームで使ってたハンドルネーム『ミラージュ897』が有名になったってこと」


 ミラージュというハンドルネームがすでに使われていたので897をつけることになったわけだ。


 というか……


「……なんで僕のハンドルネームを知ってるんですか……」

「だって私、天使だもん」だもん、と言われても……「ともあれ複数の格闘ゲームで最強の名を手に入れたミラージュ897……との噂だね」

「噂じゃないですよ」断言できる。「ゲームの世界なら僕は最強です。パズルゲーム以外なら」


 パズルゲームは苦手だ。なにをやってもパニックになってしまう。


「安心してくれ。この世界はアクションゲームだよ」


 この世界……画面上のゲームのことか?


「このゲームをプレイすればいいんですか?」

「だからそれはゲームじゃなくて……キミが転生した世界なの」

「転生……」

「そう。要するに……画面上の世界にキミは転生したの。それでキミがゲームなら最強という噂を聞きつけて……コントローラーでその体を操作できるようにしてあげたんだよ」


 ……


 自分の体をゲームキャラクター感覚で操作できるということか……


 それなら、本当に僕は最強かもしれない。

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