第17話 既知からの幽世での対話

あの夢を見てから数日…

眠る必要はないとはいえ、習慣的に眠る癖をつけていた私であったが…本格的に寝れなくなっていた。

眠れば、あの夢が幾つかのパターンが変えながら、同じ事を繰り返して見るのだ…


しかし、皆に心配をかける訳にもいかないので、私は平然を装いながら生活をしていた。


「…?セド、顔色が悪いわ」

「大丈夫です。エメルダ様」

「いえ、大丈夫じゃないわ。直に休みなさい」

「いえいえ、この位のこと…」


と、続きを言おうとした時、私の意識は途絶えてしまった。





次に気が付いた時は、従者わたしの部屋のベッド上だった…


「はっ!?ここは…」

「気が付いたー?セレニアちゃん」

「し、システィアさ…」

「ティアって言いなさい。全くー、体内の魔力が乱れて思いっきり不良を起していたわー。だから、今日は安静ねー」


なんてことだ…

どうやら、睡眠時における魔力の流れが途切れて活動停止してしまったのか…

それに気付いた私は酷く落ち込んでしまった…


しかし、そんな私をシスティア様は優しく抱きしめてくれた。


「本当ー、セレニアちゃんは真面目すぎるんだからぁー…何か悩んでいる時は、誰にも話さないところとか、私知っているんだからね」

「…面目ありません」

「うん。素直な子は宜し。お父…公爵様とお母様、そしてエメルダからも、ゆっくり休みなさいと言われてるから休みなさい。勿論、無理して動こうとしない様に私の監視付きでね」


参った。

あの三人となるなら、諦めざるを得ない。

仕方なく、私は言う事を聞くことにし、ベッドで安静する事にした。

と、そんな風に身体を横にしたら…ティアもベッドの上に乗り、私の横に添い寝してきた。


「ねぇ…セレニアちゃん。悩み事があるなら、私に言っても良いよ」

「ティア…」

「私は貴方のおかげで、こっちに戻って来れたのだから…貴方がそんな調子じゃ駄目」


…私の実姉と比べたら、本当に敵わないお人だ。

観念した私は、ティアに夢で見た光景を全て伝えた。

それも、幾つかの種類を含めて全部を…


「…なるほどねー。それはうなされるねぇー…」

「お恥ずかしい限りで…しかも、妙に現実的だったのです。血の臭いとか、燃えて焦げる臭いとか、あと…自分が傷付けられた痛みとか全て…」

「もしかしたら、既知感デジャブかも知れないわね…私も、昨日からそんな夢を見る様になったし…」

「ティアもですか?」

「うん。私の場合は…同じリッチと女性と競り合っていたわ。そして、エメルダと教皇様がぶつかった時で…とそんな所で、セレニアちゃんと同じ感じで目が覚めるの」

「一度調べる必要がありますね」

「うん。それと…」


ティアはもどかしくしながら、私の傍まで近寄って、至近距離まで顔を近づけてきた。


「今日から、一緒に寝たいな…」

「ご自分の部屋が有りますのに…」

「それに、数日中に私の部屋を片付けたいって、公爵様が言っていたわ。いい加減、心のケジメをつけたいって」


そうか…公爵様、”システィア”様を心の思い出として整理して片付けたいのか。

なら、仕方ないかな。

私は、ティアに了承を送った後、数日ぶりに深い眠りへとついた…







その日の夢は、この数日とは違う夢であった…


”セレニアちゃん…セレニアちゃん”

”…システィア様?ここは…幽世では”


どうやら、今日は夢ではなく…本格的に幽世の世界に意識が行ってしまったようだ。

…なんか、精神的に落ち込みそう。


”セレニアちゃん。今、すっごく落ち込んでいるでしょ?”

”はい…”

”私もなのよ。しかも、今日は戻り方も分からないし…私達を飛ばした人もいないわ”

”でしょうね。赤き地平より参りし者も居られないし…”


前には聞こえてきた、あの謎の声はしないままであった。

そんな風に考えていたら、一つの仄かに光る玉が私達を着いて来る様に指示をしてきた。

…道案内のつもりか?


”どう思う?セレニアちゃん”

”行きましょう。どの道、現状が分かる状態ではないので”


私はそう言った後、システィア様の手を硬く握り、誘導する光る玉を元に一緒に歩いていった。





大体歩いたと思えるぐらい、私達が進んだあたりで光る玉は宙で散り、闇の中に解けていった…


”つ、疲れたー…私、あんまり歩かないのにー”

”今度、体力つけましょうね”


未だに息を切らすシスティア様を余所に、私は目の前の光景を見た…


あたり一面、鈴蘭の花畑の様に地面が白く光る玉で覆われており、その光る花の海の中心にて…円形テーブルに向かって椅子に座る女性と、その女性の後ろに立つ屈強な男がいた…


無論、それが誰なのかは私とシスティア様は分かった。


”ここでは始めまして…というべきですかな?”

”教皇エカテリーナ様…”


テーブルの中心席に座る人物こそ、現正教のトップである教皇にして…

100年前に生きていたとされる旧セントレア国第一王女エカテリーナ本人であった。

勿論、その後ろには例の黒騎士ニグレドであるゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンである…







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