『叫ぶ、うどん』 中編

やましん(テンパー)

『叫ぶ、うどん』 中編


 一心不乱軒。


 それが、その、うどんやさんの名前です。


 店主さんは、敢えて、軒主とよばれるんだそうです。


 といっても、店員は奥様だけで、忙しい時には、電話をすると、近所の人がアルバイトに入るのだとか。


 ご主人のお名前は、太院たいんさんだとのことで、名刺を頂きました。


 地元の有力な家系だとか。


 なんだか、無理に作ったようなお名前ですが、逆に、お店の名前は、そこから、作ったんだということでした。


 一心不乱軒主太院イッシンフランケンシュタイン


 となります。



 まあ、つまり、ちょっと変わった方なのでしょう。


 しかし、おうどん自体は、先に出ていったカップルさんは、なにしろ、多少の誇張があるとしても、なかなかの、美味だったのです。


 と、いいますか、他では味わったことがない種類のものです。


 なんで、叫ぶのか、は、企業秘密とか。


 また、普通の麺がよい方には、それもできるが……


 『ここまで来る価値がないでしょう。はははははははははあ。』


 だ、そうです。


 しかし?


 それで、納得がゆくのでしょうか?


 『叫ぶ、めん、または、うどん。』


 ぼくは、調べました。


 おいしくて叫ぶ。


 という趣旨の話しは、わりに有ります。


 しかし、麺自体が叫んだ、という記事は、ちょっとありませんような。


 ふうん。


 それは、かえって話題になりそうなものを。


 むしろ、不思議だったのです。



 で、食べに行った、その晩、きゅーさんがタイミング良く、尋ねてきたのです。


 『あらま、きゅーさん、どしたの?』


 すると、きゅーさんが、答えました。


 『あのね、午前2時になったらば、わかるのね。』


 『はあ………な?  ま、どうぞ。』


 きゅーさんは、たまに、遊びに来るから、来ること自体は、さして不思議ではありません。


 でも、ぼくは、俄然興味が湧き、また、ちょっと、怖くなったのです。


 『今日、れいの、叫ぶうどん、食べに行きましたよ。』


 『あ、そ。』


 まあ、そっけない。


 しかし、これが、きゅーさんですから。


 『おいしかったのですが。あの?』


 『なにか?』


 『いや、つまり、なにか、問題がありますか?』


 きゅーさんは、しらっと、言います。


 『たべて、良くないものを、案内しないね。』


 『あや、いや、そういう訳ではなくて、だって、きゅーさん、さっき、午前2時になったらば、わかるとか、いうから。』


 『あ。それね。実は、あのうどん自体には、つまり、食品としての問題はないね。しかし、あれをたべた人には、その晩、深夜2時になると、なにか、つまり、幽霊か、宇宙人か、異世界人か、そうした、不可思議なものが、訪問してくるのね。で、宣伝しないように、口止めする。その、正体を調べるように、ボスから頼まれた。あの、店の主人は、人がよすぎてね。この話しは、知らないよ。でも、リターン客がいなくて、困ってはいるみたい。ぜったいに、流行るはずなのに、と、ね。』


 ボス、というのは、きゅーさんが勤める、巨大モールの上司であります。


 『あの、うどん店からは、モールに出店したいという希望があるのね。お金はかなり、たくさん、持ってるのよ。その点は、間違いなし。しかし、その陰の噂が、邪魔してるわけね。』


 『あの、そういうのは、先に言ってください。』


 『先に言ったら、あなた、行かないかも。』


 『あらま。』


 ぼくは、呆気にとられました。


 実験台にされたわけ。


 まあ、しかし、そこが、きゅーさんと、仲良しでいる愉しさなのですから。


       🕰️

 

 

 午前2時ちょっと過ぎた。


 草木も眠る丑三つ時だあ。


 あたりには、霧が立ち込め、やや遠くのお寺の鐘が、いんに、こもって、ぼ〰️〰️〰️〰️〰️〰️ん。



 かん。かん。

 


 玄関の呼び鈴が、小さく鳴りました。


 電池が、失くなってきております。


 『だれか、来た。こんな時間に?』


 『あの。もし。もし。』


 『もし、もし、言ってるよ。』


 『出てくらさい。』


 『あの、ぼくが?』


 『あなたの、おうちですから。』


 『まあ。そうだね。っ、では。』


 ぼくは、ちいさな玄関に立ちまして、言いました。


 『ど、ど、どな、た?』


 『あの、もし。旅のものです。迷いました。あの、もし。もし。』


 あきらかに、普通ではありません。


 こんな、町のなかで、迷うほうが、変です。


 交番もあるし。


 『あの、交番に、どぞ。交差点のすぐ先です。』


 『あの、交番は、恐いので。あの、もし。』



 『あ、け、て、く、だ、さ、い。』



 きゅーさんの、お口が、そう、言っております。


 仕方ないか。


 ぼくは、そっと、ドアを開けました。


 すると、なにやら、どやどや、っと、押し入ってきたのです。


 『わあ!』


 そ、それは、あきらかに、この世のものとは思えない、かなり、かわったすがたでした。


 アメリカに出たという、フラットウッズ・モンスターに、かなり、似ています。



 『こやい〰️〰️〰️〰️。』


 ぼくは、震え上がりました。


 しかし、きゅーさんが、背後から、そやつを、押さえつけたのです。


 きゅーさんは、万能型ロボットです。


 いざとなれば、戦闘モードにもなります。


 強いのです。


 しゅ〰️〰️〰️〰️〰️〰️❗


 そやつは、湯気をはきました。


 ちょっと、異様な香りです。


 『これ、宇宙調理人造人間ね。』


 きゅーさんが、そやつを押さえつけながら、そのように言いました。


       🍴


 


 


 


 

 

 


 

 

 


 

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『叫ぶ、うどん』 中編 やましん(テンパー) @yamashin-2

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