第6話 なぜ心配してくれるの?
//SE:頭をなで続ける
//SE:衣擦れ(主人公 照れてどうすればいいかわからず)
//ボイス位置:正面
//演技:主人公の頭を撫でつつ、喋りつづける
【大家さん】
「頭を撫でられたぐらいで、もぞもぞ動かない。
これは……あなたが早く眠りに就く工夫だから」
【大家さん】
「あら? 今度は素っとん狂な顔じゃない。
そんなに人間扱いされるのに驚いたの?」
【大家さん】
「まあ、多少顔つきがマシになったしね」
【大家さん】
「さて、なにを喋りたいの……と聞こうと思うけど。
あなたが知りたいことぐらいおおよその予想はつくのよね」
//ボイス位置:正面
//演技:顔に息がかかる距離で優しくささやき
【大家さん】
「どうして、こんなにも世話を焼いてくれるか……でしょ?」
【大家さん】
「まあ誰だっていきなり親切にされたら戸惑うものよね。
ただ、期待する答えも裏があるわけでもないの」
【大家さん】
「ただただ私が、あなたを『家族』だと
思ったから、そうしているだけ」
【大家さん】
「くふふ、いきなりなにを言ってるの? って表情ね。
知ってる。わざとわからないように言ったのだもの」
【大家さん】
「だって、この話には補足があるからね
そうね。きっかけは私が、小学校三・四年生ぐらいの頃よ」
【大家さん】
「当時、私の両親は共働きでね。
祖母が大家をしていたシェアハウスで面倒を見てもらった」
//演技:懐かしむ
【大家さん】
「シェアハウスと言うぐらいだから、いろいろな住人がいたわ。
苦学生に、凄腕ハッカー、はたまた老舗企業のご隠居さん等々」
【大家さん】
「でもそのシェアハウスでは、
みんな一人の『家族』として住んでいた」
【大家さん】
「血のつながりはなくとも、自分のやれることはやる。
具合が悪そうなら、みんなで声をかけあっていた」
【大家さん】
「私もその輪の中に入って、とても楽しい経験をさせてもらったわ」
【大家さん】
「そんな体験を経て、大人になったらそんな居場所をつくりたいと思った。
祖母のシェアハウスと同じ住人同士が家族と思えるような家をね……」
【大家さん】
「ただ、今はそう言った家の形態は難しい。
やるにしても、こうしてアパート経営で実績を積からね」
【大家さん】
「それでもやれることはやって、朝はなるべく早く外に出て
挨拶や声をかけやすいような雰囲気を出したりね」
【大家さん】
「だって、数ある家からここを選んでくれたんだもの
ならこの家で存分にリラックスして欲しいし、
困ったら手助けするって、大家になる時に決めたの」
【大家さん】
「その甲斐あって、徐々に店子同士でも挨拶したり
助け合ってる様子を見るようになってうれしかったわ」
【大家さん】
「そして、そんな住人たちからタレコミがあった。
あなたが最近、やばいんじゃないか……ってね」
【大家さん】
「まあ、ここ最近家賃も滞納するし、
挨拶しても無視されるからね、うすうす気づいてたけど」
//SE:主人公の頬を両手でむにゅと圧し潰す
【大家さん】
「果たして会いに行けば、面倒をみなきゃまずいと思った。
だって、あと一歩でワイドショーデビューのありさまだもの」
【大家さん】
「いい? 別にひとりで全部抱え込む必要はないし、
ここの住人は意外とあなたのことを見てくれてるのよ」
【大家さん】
「誰でもいい。きついならきつい、辛いなら辛いと言いなさい。
べつに弱音を吐くのは弱いことじゃない」
【大家さん】
「本当に強い人は、弱点をさらけ出せる人のことをいうのよ。
だからこれからは、しっかり声を上げなさい」
【大家さん】
「まあ、口では言ってもやるのは難しいわよね。
だから、まずはしばらく私に感情を吐き出す練習をなさい」
【大家さん】
「それと務めてる職場のせいで、相当ストレスを抱えているでしょ?
なにせ帰宅時は深夜で朝も早く出る、お手本のようなブラックだものね」
【大家さん】
「そういう職場は、明日にでもすぐにやめなさい。
代わりに私が新たな職場も用意してあげるわ」
【大家さん】
「自慢じゃないけど、ここには今、国を代表する経営者や
やり手の役員が住んでいたから、それなりに紹介できるわ」
【大家さん】
「じゃあ、家賃は元気になるまで、ツケ。
それまでは私が出世払いとして払ってあげる」
【大家さん】
「その代わり、私に弱味を吐く練習をする。
加えて、私の『しつけ』にも付き合ってもらうわ」
【大家さん】
「今日は叶わなかったお箸の作法や、
あなたを心配した他住人への挨拶とか、もろもろね」
【大家さん】
「それをしっかりこなして、元気になったら払ってもらう。
だから諦めずに――」
//ボイス位置:正面⇒右
//演技:耳元で可愛らしくささやき
【大家さん】
「一緒に頑張りましょ」
//ボイス位置:右⇒正面
【大家さん】
「さあ、そうと決まればここで話は終わり。
明日からいろいろ忙しくなるからしっかり眠るわよ」
【大家さん】
「大丈夫。倒れそうになっても支えてあげるわ」
【大家さん】
「なんて言ったって私は――」
//ボイス位置:正面⇒左
//演技:耳元でささやきつつ、耳にふーする
【大家さん】
「あなたの大家さんだからね……ふぅ~」
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