ドS(しつけ上手)な大家さんに、人生まで世話された

紳源

第1話 ドS(しつけ大好き)大家さん

//環境音:閑静な住宅地

//SE:主人公 借りているマンションの外廊下を歩行音

//SE:主人公 自室ドアの前に立ち止まる

//SE:主人公 ポケットから鍵を取り出し、鍵穴に鍵を差し込む


//ボイス位置:左   

//演技:背丈が低いので主人公を仰ぎつつ、そっと声をかける

【大家さん】

「こんばんは」


//SE:主人公 いきなり声をかけられ尻餅をつく

//ボイス位置:左⇒正面

【大家さん】

「あら? 心温まる挨拶への返答が尻餅とは、

 ずいぶん『粋』な挨拶ね」

 

//SE:主人公との距離をつめる

//演技:あまり嫌味っぽくならないように

【大家さん】

「そうよね。あいさつはしっかり目線を合わせてするもの。

 小学五年生平均の背丈の私に合わせてくれたのでしょ?」


//SE:主人公の頬を両手で包み込む

//ボイス位置:正面 

【大家さん】

「なーにー? 『粋』には『粋』で返すものでしょ?

 それに挨拶はきちんと顔を突き合わせないと返さないとね」


【大家さん】

「だ・か・ら」


//演技:顔を寄せて主人公に息がかかる距離で喋る

【大家さん】

「こんばんは♪」


//演技:意地悪そうに尋ねる

【大家さん】

「さーて、挨拶も済ませたし、私が誰だがわかる? 

 絶対わからないわけないわよね?」


【大家さん】

「三か月家賃滞納しても見逃してくれている!

 今一番頭の上がらない人!! そう――」


//ボイス位置:左

//演技:主人公の耳元でささやきつつ、息を吹きかける

【大家さん】

「この家のお・お・や・さ・ん♪

 ロリータ服が似合う大家さんよ、ふぅぅ~♪」


//ボイス位置:左⇒正面

//演技:言葉はきつめですが、どこか楽しそうに言う

【大家さん】

「あ~くさいくさい。息を吹きかけられたくらいで動揺して、

 内臓から腐った息、これ以上吐かないでもらえる?」


【大家さん】

「目元のクマも歌舞伎役者顔負けの立派過ぎてきしょいし、

 『不健康』とはまさにこのことね」


//SE:主人公の頬をグリグリと親指で揉んだりしてもてあそぶ

【大家さん】

「ねえ? 不服? そりゃあ、不服よね?

 ここまでボロクソ言われたところで、

 べつに好きでそうなったわけじゃないもんね」


【大家さん】

「ましてや、大家さんと言え、どうして他人に

 そこまで言われなきゃならないのか、と思うわよね」 


【大家さん】

「私もきちんとしていればなにも言わないわ。けどね――」


//SE:主人公の頬を思いっきり両手で圧迫し潰す

【大家さん】

「こうして声をかけられるってことは

 それほど努力はしたように思えないのよ」


【大家さん】

「残酷な真実だけどね。

 世の中、どんな逆境にさらされても、

 平然と生きていける人もいるの」


【大家さん】

「その人たちみたくなれとは言わないわ。

 ただ、私からしたら、

 やりようがいくらでもある甘さが見えるの」


【大家さん】

「なんていうの? 工夫が足りないくせに、

 自分は悪くないと言わんばかりの被害者面? 

 あるいは悲劇のシンデレラ? みたいな」


【大家さん】

「すべて手を尽くしてダメで絶望するのならいい。

 でも、そういう甘さが見て取れるのなら――」


//SE:主人公の頬をさらに両手で圧し潰す

//演技:サディスティックに笑う

【大家さん】

「骨の髄まで、徹底して『しつけ』てあげたくなる、くふふ♪」


【大家さん】

「ああ、『しつけ』といっても別に殴るとかじゃないわよ」

 

【大家さん】

「ここでいう『しつけ』は――」


//ボイス位置:正面⇒左

//演技:優しくささやき

【大家さん】

「人として生まれて幸せだと思えるようなお節介よ♪」


【大家さん】

「宗教みたい? さあ、それは感じ方次第ね」


【大家さん】

「それでもやり直したいのならチャンスをあげるわ。

 ……そうね。今できるのはこの口角をにっと上げて――」


//SE:主人公の頬を指で引っ張り上げて

//演技:同じように可愛らしく笑顔で言う

【大家さん】

「はい、ニッコリスマイル♪」


【大家さん】

「辛気臭い顔より、無理矢理でもニコニコ笑う。

 すると、不思議と楽しい気持ちが湧いてくるでしょ」


【大家さん】

「人間は行動を起こして、あとで感情が生まれる生き物なの。

 いつまでも暗い表情なら、心は沈み、体もずっと重いまま」


【大家さん】

「これが私の言う『しつけ』。今は考え方にアプローチしたしつけね。

 物の見方や、やり方を少し変えるだけで人生は良くも悪くもなる」


【大家さん】

「もちろん、これだけで人生が完全に良くなる保証はない。

 でも、少しでも変えたいと思うなら、私なりのやり方で助けてあげる」


//ボイス位置:正面 

//演技:愛らしく言う

【大家さん】

「今よりも楽しく過ごせるよう『しつけ』てあげるわ♪」


【大家さん】

「さあ、このまま地べたに這いつくばったままの人生を送りたい?」


【大家さん】

「それとも立ち上がり、今を変えたい?

 変えたいのなら、私の手を――」


//演技:うれしそうに言う

【大家さん】

「――よろしい♪ なら徹底して、

 その人生を『しつけ』てあげるわ、ふふ♪」

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