無名配信者である俺の異名は【氷の王子】〜有名ダンジョン配信者を助けたのだが、それ全部仕組まれてたってマジですか！？ 仕方ない、こうなったら世界中にこの異名を轟かせてやる！〜

第24話

「……なんで、同情はいらない……」

「違うよ、同情じゃない」

　そう、私が遥ちゃんを助ける理由なんて決まっている。もちろん、彼女を助けたい。それは大前提。

　けどさ――

「――私の将来の家族だもん、助けないなんていう選択肢はないよね」

「……私の、将来の、家族……。将来、の」

「そうだよ、私は遥ちゃんを助ける、そのために力を貸すの。だからさ、1つだけ、1つだけいい？」

　今から言うのは、ちょっとだけわがままで。それでも、私がどうしても達成したいこと。

「はい、なんですか？」

「廉也君と私をくっつける手助け、してくれない？」

「………」

　あちゃー。だめだったか。こんな私利私欲にまみれたこと言ったら。

「いい、ですよ。シスコンですけど、私ががんばって離してみせますから」

「ありがとね！　……ねぇ、遥ちゃん。これでもまだ置いてってほしいと思ってる？」

　もし仮に置いてってほしいって言われても置いていく気はないけど。

　一応、意思の確認。もうたぶん、遥ちゃんは大丈夫だから。自分から死にに行くようなことは言わない、……はず。

「いいえ、全く。私は雫さんとお兄ちゃんが結婚するまで死ねませんね！」

「いや、私達が結婚しても死んじゃだめだからね？」

「……わかってますよ！」

　あっこいつわかってないね！？

「よし、じゃあ寝よっか」

「わかりました、……あ、お兄ちゃんの秘密話、しますか？」

「なにそれめちゃめちゃ気になるんだけど！！」

「じゃあ、乙女の秘密ってことで――」

　＿＿＿＿＿＿＿＿

「母さん、話があるんだ」

　雫さんと遥が寝に行って。ようやく母さんと二人で話すことができる。

　……あ、シスコンってわけじゃないぞ？　ただ、色々話さないと。バズったこととか。

「なに？……まぁだいたい分かるけどね？」

「……そうか。まぁ、俺。バズりました」

「……そう」

　なんでこんなに母さんは嬉しそうじゃないんだ？

　息子が、有名になったのに。これで、これでもっと遥の治療費が稼げるかもしれないのに。

「……ねぇ、廉也？　1つ聞いてもいいかしら？」

「うん、いいけど」

「まさか、まさかとは思うけど――遥のことを見捨てたりはしないよね？」

　なんだ、そんなことか。そのことを心配して顔があんまり喜んでなかったのか？　けど、それならば俺の答えは決まっている。

「もちろん。俺は、バズってよりお金をかせぐ。そして、遥の治療費が少しでも増やせるように」

「そう、ならよかった」

　話したいことが終わったと思ったのか、母さんは家事を始めた。

　けど、俺はまだ聞きたいことがある。

　今日の配信、アーカイブは残しておくべきだって教えてもらったんだよな。

　なのに母さんはアーカイブを消すべきだって言ってた。知ってるだろ？　普通は。母さんなら、アーカイブがあったほうがいいってことくらい。

「なぁ、母さん」

「うん？　なに？」

　また家事をしていた手を止め、俺の方を向く。

「なんで、なんで配信のアーカイブ、消しといたほうがいいって言ってたんだ？　母さんなら分かるよな？　アーカイブがあったほうがいいってことくらい」

「……まぁ、母さんが知らないこともあるでしょ？」

「それはそうだけど……」

「それに、廉也にはダンジョン探索の方に力を入れてほしかったからね。配信は別に、なくても大丈夫だったでしょ？」

「……そうだね」

　なるほど、わかったことがある。母さんは、絶対何かを隠してる。

　知らない？　そんなわけがないだろう。配信以外でスマホを使えなかった俺じゃああるまいし。

　……父さんの血が入ってるからか？

　いや、……そうか。

　まぁいい。もっと家に入れる金が増えたら……！　そうすれば、きっと母さんも認めてくれるさ……！

　また１つ、頑張る目的が増えた……。

　と思っていたのに。翌朝。

「こんにちは。ダンジョン庁の者です。少しお話、よろしいでしょうか？」

　あれあれ、何が起こるのでしょうか。