070
周りの人々は男の持つピストルに気付いて悲鳴を上げる。
「逃げよう」
アオネは青年の手を掴んで走りだそうとした。その瞬間、青年は体をくの字に折って崩れ落ちた。
「お前!何してやがる!」
屋台をやっていたであろうおじさんが数人走り出てきて男に飛びついた。
「あんたもだ。あんたも殺してやる!」
男は暴れながらアオネの方に銃口を定めた。アオネはとっさに飛びのくが、足に衝撃があった。浴衣に赤い染みが広がっていく。青年は倒れたまま動かない。押さえた胸からは赤い染みが広がり、ひび割れたコンクリートの中に染み渡っていく。
花火が鳴った。はっとしてそちらの方を見ると、視界に電話ボックスが飛び込んできた。電話だ。電話を掛けなければ。パニックになりかける頭の中でその意識だけがはっきりとあった。
アオネは足を引きずりながら電話ボックスに入った。
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