063
アオネは腕をまくり、上段右端に狙いをつけた。よく狙って引き金を引く。
ポン、という小気味よい音がしてコルクが発射された。一発でコルクは旅行券と書いてある紙の貼りつけられた煙草の箱を倒した。
「おお、姉ちゃん上手いね。ほい、景品の旅行券」
おじさんはアオネに一枚の切符を差し出してきた。見れば、今日の日付の、隣町までの切符だった。知らない駅名だ。
「これ、今日限りじゃないですか」
アオネが言うと、おじさんはいたずらっぽく笑った。
「そうだよ。俺が今朝間違えて買った切符だな。ま、射的にはアタリもハズレもある!残念だったな。まだ弾は残ってるじゃねえか。他のも狙ってみな」
アオネはとりあえず切符をカバンにしまった。
『切符』を取得しました。Fの欄に『切符』と記入してください。
「この
アオネはこの町で暮らしていたので、周辺の駅の名前くらいは憶えているつもりでいた。かなり遠いのだろうか。
「ウミナダ?あれ、俺そんな駅の切符買ったっけか?」
アオネが聞くと、おじさんはきょとんとした顔をした。アオネが切符を見せると、おじさんは怪訝そうに眉を顰める。
「俺も聞いたことないな。ていうか、俺は
「おお、お前んちの息子さん夫婦、いよいよかあ!めでたいな。こんなとこでテキ屋なんかやってねえで様子見に行きゃいいのに」
隣で聞いていたおじさんが言った。手にはビールの缶を持っていて、赤ら顔をして、かなり出来上がっている様子だ。
「まだ生まれてもねえのにこっちが、ぎゃあぎゃあ騒ぐもんでもねえよ」
「またまた、照れやがって。素直に孫が楽しみだと認めろよ。孫はいいもんだぜ~」
おじさんたちは孫のトークで盛り上がってしまった。アオネは今度はアヒルの玩具に狙いをつけた。
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