第四章 目黒プロモーション編

」から、数年後……。

 ついに、俺は、渋谷のスクランブル交差点をジャックした。

 東京という街は、どこに行っても人だらけだ。ここに住んでいると、この場所だけが日本だと錯覚してしまう。ため息をつきながら、通行人と共に大型ビジョンをみていた。数分後、「」撮影した映像が流れ始めた。すると、人々は、足を止め、ある者は、涙を流し、ある者は、希望を抱いた表情で、恋人の手を繋いでいた。若い女の子二人組は、スマホで動画を撮り、SNSに拡散していた。

 

「映像には、世界を変える力がある」この業界にいて、なんの迷いもなく、ただ信じ続けていた。命を削りながら、ただ夢を叶えるためにガムシャラに走り続けてきた。そして、世界が変わる瞬間を目撃した。

 周りを観察してみる。街ゆく人々は、無愛想だ。

 本を読む、音楽をきく、スマホをみる、ゲームをする、映像をみる……。

 みんな、何かに依存して、現実逃避をしていた。

 人は、夢が叶うと、燃え尽きてしまうんだ——。

 

」を思い出したくない。独りで戦い続けなければならなかった。

 ずっと、苦しみ続けてきた。涙は枯れ果て、心が荒んでいく……。

「みやくん、どうしたの?」恋人の声を聞いて、我に返る。

「いや、なんでもない。ごめん……」

 恋人と体を重ね、快楽に溺れ、現実逃避をしていた。

 結局、脆くて弱い人間だから、恋人に依存してしまうんだ……。

 

 ふとした時に、目黒プロモーションでの、出来事を思いだす。みんな、元気でやっているのだろうか? まだ、夢を信じ続けているのだろうか?

 目黒プロモーションでの、日々は、青春だった。楽しくて、苦しくて、思い通りにはいかなくて。まさしく、人生そのものだった。

 ベッドから起き上がり、冷蔵庫から飲み物を取り出す。

 喉を潤し、ベットに戻ると恋人と一緒に、深い眠りに落ちた——。

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