第19話 本当のことを知るのは今ではない。

さて、何から話そうか。

あー、ひとつだけ言い忘れていた。

ルーナじゃない、せらだ。世良。

今日は基本的に読書デイにした。

あらゆる文献を読んだ。

それから、自分を大切にするための本もルーナのために読んだ。

言葉は武器であり、使い方を間違えると狂気になると私は思う。

だから、あまりSNSはお勧めできない。

自分について発信しても良いことは数えてもそんなにないからだ。

デメリットの方が多いだろう。

私たちは自己発信でデメリットの海の中で生きているのだから。

その中でメリットを探すなんてそんなものないだろう。

砂漠の中で消えた携帯をむやみに見当も付かずに探すようなものだろう。


人は信用しても良い、

だが、信憑性のない治し方を信用するのはあまり良くない。

それはただの傷に塩を塗るようなものだからだ。

だから、ルーナからは目が離せない。

何度もそれでよくない方向に進んだのだから、私たちが危機管理していかなければならない。

私たちは藁にもすがる思いなどしてはいない。

知りたいだけだ。

だけど、ルーナは知ることにすごく恐怖感がある。

なぜなら、恥ずかしいからだろう。

話すこと知ることは誰かに迷惑をかけてしまう。

そんな偏った考え方がルーナの中で交錯しているのだろう。

それを、もとの状態に戻すことが私たちの仕事のひとつでもある。

だから、まずは主治医に聞くことから始まる。

それが、ルーナの会話のきっかけを掴む一歩だろう。

変な質問を毎回するのには理由がある。

この前聞いた『信号がチカチカしていたら渡るか渡らない?』という質問はルーナ=咲希(さき)の考え方からきている。ルーナは気づいていないが聞きたいのは、興味より知りたいから来ている。

咲希もまたルーナが自分であることを知らない。

お互いが自分ということを知らない。

でも、それでいい。

今はそれでいい。

まだ、知るべき時ではないからだ。

知る時が来る。

それは、ちゃんとルーナが私たちと同じくらい病気について分かるようになってからだろう。

そんなわけで、この辺で今日の報告会は終わりにしようと思う。


世良(せら)より。

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