大文字伝子が行く161

4つのマフィア攻防戦（前編）

　＝＝＝＝＝＝＝＝　この物語はあくまでもフィクションです　＝＝＝＝＝＝＝＝＝

　==============　主な登場人物　================

　大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

　大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

　一ノ瀬（橘）なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

　久保田（渡辺）あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

　愛宕（白藤）みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

　愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

　斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

　夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

　増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

　金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

　馬場力（ちから）3等空佐・・・空自からのEITO出向。

　馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

　大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

　田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

　浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

　新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

　結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

　安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

　日向さやか（ひなたさやか）一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。

　飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

　稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

　愛川静音（しずね）・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

　工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

　江南（えなみ）美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

　伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

　葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

　越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

　小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

　下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

　高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

　筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

　青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

　渡伸也一曹・・・陸自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当の事務官。

　草薙あきら・・・警視庁からのEITO出向。特別事務官。

　河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。

　天童晃（ひかる）・・・EITO東京本部剣道顧問。EITO準隊員待遇。闘いに参加することも。

　本郷隼人二尉・・・EITOシステム部。弥生の弟。EITO秘密基地勤務。

　大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。時々、伝子から「クソババア」と言われる。

　藤井康子・・・伝子の隣人。モールで料理教室をしている。EITO準隊員待遇。

　物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。蘇我と結婚した逢坂栞も翻訳部同学年だった。

　財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

　仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

　鳥居真一郎・・・国賓館SP隊長。

　橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。

　中津敬一警部・・・警視庁特命刑事。

　久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。

　久保田警部補・・・あつこの夫。以前、愛宕の相棒だった。

　利根川徹・・・元テレビ局コマンテーター。今は、MCをしている、EITOの協力者。

　市橋早苗総理・・・我が国初の女性総理。伝子は個人的にSPにつくこともある。

　南部（江角）総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

　足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　石動悦子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　宇野真知子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

　河合真美・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　北美智子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　久留米ぎん　・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

　小峠稽古　・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７の総長。EITOエンジェルス班長。

　愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

　芦屋一美警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

　芦屋二美（ふたみ）二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。

　芦屋三美（みつみ）・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。

　大波一郎・・・異種違憲党。政治に大波を起すと言っていたが、大したことが無かった為「さざ波さん」と揶揄された。第一線からは退いたが、離党も議員辞職もしていない。

　山西あつこ・・・元参議院議長。

　本庄虎之助・・・本庄病院院長。

　本庄映子・・・本庄院長の娘。独立して、クリニックを開業している。

　中山ひかる・・・以前、愛宕のお隣さんだった。謎解きが得意な大学生。伝子達の後輩。

　青木新一・・・Linenを使いこなす大学生。友人の致傷事件の関係者。後に伝子達の協力者になる。

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　==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

　==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

　=EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズ後方支援部隊である。=

　==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

　午後1時。EITO東京本部。会議室。

　天童が『矢文』を持って来た。渡が、急いでワープロに書き、ディスプレイに映し出した。

　なぎさが読み上げた。

「やあ、EITOの諸君。この季節には、『暑中お見舞い申し上げます。』と言うべきかな。諸君に『耳寄りな情報』を提供するよ。ダークレインボーとは無関係なマフィアが動き出した。先日の大阪の事件も、無関係とは言えない。こちらが掴んでいる情報では、4つのマフィアがやって来ている。場合によっては、諸君とまた、呉越同舟をするかも知れない。大文字君は､賢いから勘違いはしないと思う。飽くまでも一時的手段だ。さて、夏休みの宿題が遅くなったね。今回は『嗚咽と馬券』だ。まあ、エーアイ君には10分もあれば、お釣りが来るかな？では、また後日連絡する。」

「オクトパスは、私を伝書鳩にしたいのかな？」と天童は笑った。

「きっと、Tick Tackとは使い分けしているのでしょう。一時的な味方はいいが、4つも新しい敵かあ。」と、伝子はため息をついた。

「河野君、大阪支部から、新しい事件の資料、送って貰ってくれ。」と、理事官は指示した。「了解しました。」

　河野は､司令室に向かった。

「夏休みの宿題は、持ち帰って、じっくりやります。」と、伝子は言った。

　午後3時。伝子のマンション。

　中山ひかるが来ていた。「お帰り。」「ひかる君が来てるよ。」

「見れば分かるよ。夏休みだからな。で、学とひかる君に、夏休みの宿題だ。ところで、クラブ、どうだった？」

　と、伝子はひかるに紙片を渡しながら言った。

「やっぱり翻訳部は解散していた。何十年も連続させるのは難しい、って顧問の先生が言ってました。」

「顧問の先生？」「大文字さん達が現役だった頃、助手だった、今で言う助教だった、水谷先生が顧問になってくれました。翻訳愛好会の。」と、ひかるはすらすらと言った。

「愛好会？非公認から再出発か。」と、伝子は感慨深げに言った。

「去年、学祭に行った時は、あったのにな。」

　伝子達の大学は、部活を3種類に分けている。愛好会は非公認。同好会からは、少なからず大学から奨励金が出る。倶楽部に昇格すれば、他校とのイベントにも補助金が出る。

　愛好会は、一からやり直し。だが、ひかるが伝子達の直接の後輩になってくれたことは嬉しかった。

「ひかる君、今夜泊まってく？あ、家があるか。」「ははは。この宿題、もう解けたよ。」

「ええっ！」って2人が驚いていると、高遠さん、いや、高遠先輩。PC貸して。」と言うので、高遠は用意した。

　数分間、何か検索していたが、すぐに見付けたようだ。

「これだよ。」2人が覗き込むと、画面には、『おばけ煙突』が映っていた。

「嗚咽と馬券・・・おばけ煙突、か。流石だなあ。僕なら半日以上かかるよ。」と、高遠は言い、EITO用のPCを起動した。

「理事官。取り敢えず、謎のキーワードは分かりました。日時や事件の可能性は、今の所分かりませんが。」と、伝子は、ひかるが解いたキーワードを報告した。

「もう半世紀以上前だが、名物だったことは聞いている。菱形の配置だから、角度によって見え方が違う。今は、モニュメントだけになってしまったが。」と、理事官は言った。

　横から、河野事務官が顔を出し、理事官に言った。

「天童さんから連絡がありました。また矢文です。読み上げます。『コミケ臨時。明日午後3時。』」

「短いな。草薙。何かイベントか。」

「その通りです。コミックマーケット。通称コミケです。コミック等の同人誌即売会が毎年2回、東京ビッグサイト、つまり、東京国際展示場で行われ、今年夏は8月12日、13日が予定されています。ところが、明日8月5日にプレイベントが行われます。漫画好きで知られる麻生島元総理、現副総理がスペシャルゲストです。利根川さんがMCです。時間は本番と違い、午後3時から3時間程度です。」

　草薙の返答に、「では、理事官。イベントは極秘に中止して頂き、EITOが迎え撃ちましょう。恐らく来場者を人質にして、何かやらかす筈です。来場者がいないと不自然ですから、サクラを用意しましょう。」

「うむ。まだ時間があるな。手配しよう。君は一佐と「打ち合わせをしておいてくれ。」

「了解しました。」

　PCをシャットダウンすると、「何者かは知らないが、オクトパスのお陰で不意打ち出来るね。」

「ワクワクしてきたな。私たちも準備しよう。」「私たち？」「なぎさに連絡している間、寝床の準備をしろ。」「ええ？」「文句あるのか？婿養子。」「了解しました。こういう時に限って、お義母さん、来ないんだから。」

　翌日。午後2時。東京ビッグサイト。特設ステージ。

　テーブルを挟んで、利根川と麻生島副総理が打ち合わせをしている。伝子は秘書のような顔で立っている。

　会場側には、来場者が、あちこちうろついている。実は、禁止を嫌がる者が多く、危険でも来場したいという希望者に来場させている。

　午後2時半。突然、武装集団が現れ、利根川と麻生島の顔に拳銃を突きつけた。

　そして、会場には機関銃を持った男達が大勢現れた。

「ちょっと、早いんじゃないのかな？利根川さん。」と、麻生島は言った。

「ええ。そうですね。」利根川と麻生島はダイナマイトベストを着せられた。

「何をごちゃごちゃ言っている。立て！」と集団のリーダーらしき男が部下に命じて、ダイナマイトベストを胸に括り付けた。

「お前達の時計は、時差で狂っているようだな。」と、伝子の声がスピーカーから流れた。

「来場者は、係員の誘導に従い、待避してください。」という久保田警部補の声が響いた。

　慌てて、来場者達は避難し始めた。押しとどめようとする機関銃を持った男達を、エマージェンシーガールズが体でバリケードを造って、妨害した。

「お前ら、状況が分かってんのか。」というリーダーを伝子は平手打ちをし、肩を脱臼させた。麻生島と利根川に拳銃を向けていた男達の手首を叩き、拳銃を落した。

　楽屋方向から来た、鳥居達SP隊が、利根川を連れ出した。

　入れ替わりに、EITOガーディアンズの格好の井関が、ダイナマイトベストを解体にかかった。

　女性警察官姿の、みちるが、同じく女性警察官姿の下條と小坂を従えて、ステージ上の男達を逮捕連行した。

　会場側では、機関銃を持った男達がエマージェンシーガールズを狙っていた。

　その時、ホバーバイク隊がやって来た。ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、運搬に戦闘に使用している。

　高木と馬場はメダルガトリング砲で、機関銃男達を蹴散らせた。

　弓矢隊の田坂と安藤の矢が飛んできた。矢は機関銃のトリガーを壊した。

　あかりが、工藤、江南と共にシュータを投げ始めた。

　シュータとは、うろこ形の手裏剣で、先に痺れ薬が塗ってある。

　その間隙を縫って、青山は、EITOランスを振り回して、敵を攪乱させた。

　あつこ、金森、なぎさがブーメランを投げ始めた。

　ステージ上で、ダイナマイトベストの解体を終えた井関は、利根川、麻生島、伝子と一緒に楽屋口に逃げた。

　その時、黒装束の忍者達が乱入してきた。

「みんな、いいわね。行くわよ。」となぎさが言った。

　バトルスティックに持ち替えた、エマージェンシーガールズと黒上蔟の忍者達は、武装集団を倒して行った。

　60人いた、武装集団の男達は、空を見上げて寝ていた。黒装束の忍者達がやって来て、30分だった。

　いつの間にか、エマージェンシーガールズ姿に着替えてきた伝子は黒装束のリーダーに言った。「遅いぞ。」「時間通りに来たぞ。こいつらが早すぎたんじゃないのか。」

「そうか、すまん。また世話になったな。」「礼は要らん。命令だからな。お前達だけでも倒せる相手だったが、呉越同舟第3弾だからな。じゃ、俺達は帰る。後始末は好きにしてくれ。」

　なぎさは、黒装束の忍者達が去ると、長波ホイッスルを吹いた。

　愛宕達警官隊がやってきて、のびている連中を逮捕連行した。

「意外と律儀ですな、オクトパスは。」と橋爪警部補が言うと、「ゲームの邪魔をされたくないんでしょうね、無粋な奴らに。」と、伝子は応えた。

　筒井がホバーバイクでやって来た。

「大変だ。お台場の『アイドルの祭典』に武装集団が現れ、時限爆弾を5カ所に設置。ご丁寧に、その爆弾の周りには、機関銃を持った連中が囲んでいる。出演者や観客は避難活動中だ。人質は観客でもアイドルでもない。爆弾の周りにいる連中、高校生らしい。学校の制服を着ている。」

「みんな、聞いたか。すぐに、お台場に移動だ。ホバーバイク隊は、先行してくれ。」

　なぎさ達は、一旦オスプレイに戻り、伝子は筒井のホバーバイクの後ろに跨がった。

　午後4時。お台場。祭典ステージ。

　伝子達が駆けつけると、既に闘っている者達がいた。EITOエンジェルスだ。そして、退散した筈の黒装束の忍者達だ。忍者達は、さっきより多い。

　大阪支部のホバーバイク隊、弥生、二美、真知子が水流ガンでグミ水を機関銃に放射している。

　東京本部のホバーバイク隊、馬場、高木、青山、筒井も水流ガンでグミ水を機関銃に放射した。

　突然、MAITOのオスプレイが現れた。消火弾を落すのかと思いきや、ホバーバイクが降りて来て、5カ所の時限爆弾にフリーズ弾をバズーカ砲で撃った。

　時限爆弾の近くの高校生達は、風船がしぼむように、その場に頽れた。

　500人の武装集団に対して、50人の黒装束の忍者達とエマージェンシーガールズ、EITOエンジェルス、EITOガーディアンズが闘い。1時間後、終った。

　黒装束忍者のリーダーが、伝子の所にやって来た。

「矢文が来なかったのかな？」「本人の留守中なら間に合わないさ。」

「そうか。EITO本部にいるんだった。」「まあ、連発は俺達も想定外だった。あの連中は仲間か？コスプレが違うようだが。」「ああ。大阪支部だ。4つのマフィアって言われたから、応援を依頼していたんだ。」「そうか。ごくろうさん。」

　リーダーは、部下を連れて、トレーラーに乗り込み、去って行った。

　午後6時半。EITO本部。司令室。

「間に合って良かったよ。天童さんから、連絡があったよ。矢文はちゃんと届いていた。事件解決までは動かない、と言ってくれた。」出迎えた理事官は、伝子に言った。

「伝子ねえちゃん。今夜は、訓練場借りて、雑魚寝するわ。明日明後日も変えられへんな。」

「大阪は、どうするんだ？」「兄ちゃんが、何とかするやろ。」

「私も家に帰らないことにするよ。3番間、4番目がいつ来るか分からないからな。」

　完―