文子さん

瀬戸はや

第1話 夢中

入社してすぐの自己紹介で文子さんは自分のこと 根暗な引きこもりの文子ですと 自己紹介していた。誰が見てもあんなに綺麗で可愛い子がどうして根暗で引きこもりになるんだろうと思っていた。僕はあやこさんと一番よく障害のある子供たちの迎えに行っていた。あやこさんは話しずきで、またその話がとても楽しくて 僕は文子さんと一緒に子供たちを迎えに行くのが楽しくてしかたがなかった。学校が終わる頃の子供達の迎えの時間が僕の一番の楽しみになった。

あやこさんは中学受験の時 4月の女子校生を受験してそこで中学 高校 そして大学生活を送った。生粋の女子校育ちだ。なので あやこさんは男の子との関わりが 小学生以来 全くなかった。そういった ゆがんだ 学校制度は人の人生も 歪めてしまうのかもしれない。あんなに誰が見ても綺麗でかわいらしい綾子さんが自分で自分のことを根暗の引きこもりは親子ですなんて言うわけがない。普通なら絶対に考えられない。あやこさんと初めて会った時 僕は 乃木坂46にでもいそうなことだなと思った。きれいで可愛らしい文子さんはそれぐらいのアイドル感があった。どこをとっても美しく綺麗で可愛らしく手も足も体も ほっそりとしていた。少々 痩せすぎているという人もいたが僕にはちょうどよかった あれぐらいがちょうどいい 少し華奢なぐらいが僕は好きだった。まあ お父さんが言うには娘のあや子はそんなに可愛らしいもんじゃないよ ということだったが 少々 気が強くて思ったよりきつい性格なのかもしれない。当然 身内のお父さんには素の自分を見せていただろうし、正直な姿というのは決して 快いものばかりではないだろう。にしてもだ 外見しかわからない僕には よこさんは十分 素敵な人だった。あの少しきつめな性格のあやこさんと仕事を通して ゆっくり 少しずつ仲良くなっていきたかったなのにどうしていきなり 栃木県に住むようになってしまったんだ。3年前の3月の20日あれ以来文子さんとは会っていない。一度だけ 栃木県に行ってしまった その年の夏に お盆休みで帰ってきたあやこさんに会った。あの時は大した話 全くできなかった。文子さんが元気で頑張っているんだなということはわかった それだけだった。それ以来一度も文子さんには会えていない。あの頃は本当に楽しかった仕事に行くたびに今日は あやこさんと迎えに行けるんだろうかとか文子さん今日来てるんだろうかとか、休み だろうかとか、毎日毎日 文子さんのことで頭がいっぱいだった。毎日楽しくて仕方がなかった 。はっきり言って僕は あやこさんに夢中だった。

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