第6話斉藤亜美
世界を揺るがす…その恐ろしいウイルスの名は『オーガプレデタウィルス感染症』
かかってしまったら最後、鬼に身体を喰われるほどの強烈な痛みを感じ、肉は食われたかのように消えていき、そしてその生命までをも食い尽くすウィルス。
致死率100パーセント。
世界にこのウィルスがある事から広まってしまった。
科学者達は原因追求へと勤しむも原因は分かったものの感染力も著しく強い為…決定打は出ない。
今や既に世界中に蔓延ってしまい。なんとこの時、世界の三分の一の人間がこのウィルスにより生命を絶たれたのである。
最初の発症からなんと三年という恐ろしい速さだ。
だが…そんな世界の中で残った生きている人間もいる。
これはそれから数十年後の話。
この女子は日本の女性。
とある学校へ通う彼女だが。
◇
◇
◇
「あ!亜美?おはよう!」
斉藤亜美。
私の名前。
私が産まれる少し前…世界に恐ろしい奇病が発生し、そして。
既に世界の三分の一の人が消えてしまったらしい。
この日本でも大分、人は居なくなって今に至る。
それでも皆生きていかないと。
だから表だって研究はされてるのだけれどこの噂のウィルス感染症に対抗すべき完全な薬はまだ開発されてなかったんだ。
皆。触れないよう…このウィルスに関わらないように生きている。
大分昔に流行ったと言われてる『○ロ○ウィルス』という病気も酷かったらしいけど今回のウィルスは凶悪過ぎたんだ。
それでも皆生きなきゃいけない。
だからこの恐怖のウィルス感染症と戦う者たちもいる。
私のママもその一人…なの。
◇
◇
◇
「ふぅ……亜美?今日は学校どうだったの?」
私が家に帰るとママがいて久しぶりにご飯を作ってくれていたみたい。
「うん?どうって?別にいつもと変わらないよ?」
「そぉ?それならいいけど、何かおかしい人いたらすぐ研究所に連絡するのよ?」
「あ!うん!分かってる!」
私のママは研究者である為、研究者としてこの病気と戦っているの。
だけど、この病気の対応策が中々難しいのだ。
その為に、ママは凄く忙しいし研究の為に何か変わった病気の状況の事件の場合呼び出されもするのだ。
この日も。
プルル………。
私とママがそんな話をしていると例の様にママのスマホが鳴る。
「はい……ええ…そう……分かったわ!待ってて!これから行くわ!」
ガチャ。
ママは電話を切るといそいそと出かける準備を始める。
「ママ仕事?なの?」
「そうよ!緊急って言ってたからいつ帰れるかちょっと分からないのよね。」
「そっかぁ…あ!ママ!」
「えっ!?なぁに!?」
ママは準備をしながら私に答えている。
「あ…なんでもない……。」
私はこの時。
明日のママの誕生日のおめでとうが早出しで言えなかったの。
それはママが帰ってきてくれるかと思ったから。
するとママは私に声をかけてきた。
「ああ…ずっと仕事で忙しかったけど……明日は亜美の誕生日ね!おめでとう亜美!」
「ママ!!」
私はママにしがみついた。
「ママも誕生日おめでとう!」
「ありがとう!亜美もね!」
気がつくと。
私の目から涙が溢れだし止まらなかった。
最高のママ。
本当にありがとう。
そう。ママと私は偶然にも誕生日が一緒なのだ。
◇
◇
◇
そしてママは家を出るところだった。
幸せをくれたママを気持ちよく送り出さなきゃ。
するとママは出る矢先。
ふと立ち止まる。
「ああ…亜美……これ持っていてくれないかしら?」
「これは!?なに?」
私が聞くとママの顔は真剣な表情に変わる。
「いい?亜美…これはママに何かあった時の為の亜美のお守りとでも思っていて。」
「えっ!?」
「ずっとママが研究してきたウィルス。『オーガプレデタウィルス』の事は知ってるわよね?」
「うん…。」
「大分昔にどこからともなく現れたウィルス。それによって今この世界は人口も三分の一に減ってしまった。」
「聞いてる。歴史の教科書にも載ってる。」
「そうね…今この世界で生きてるのは私達が開発したお薬でなんとか対抗できた人間と。このウィルスに対抗性のあるウィルスのある環境下に生まれてきた亜美の様な特殊な子達だけなの。」
「うん。」
「それでも『オーガプレデタウィルス』も負けずに進化をしてきているわ…亜美達世代をも脅かすウィルスもきっと出てきてもおかしくはないわ…私達はそのウィルスにも負けない様な抗体の研究をしているのよ。」
「うん。」
「そして私は…あ!時間ね。」
そこまで話したママのスマホのタイマーが鳴ったんだ。
「ママ!気をつけて!」
「ありがとう亜美!行ってくるわね!」
そう。
この時、話した会話が私とママの最後の会話になったんだ。
ママは車に乗りこみ家を出ていったの。
また数日後には帰ってくる。
私も…この時はそう思っていたの。
◇
◇
◇
お読みくださりありがとうございました!
後一話で完結です。
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